7月7日-----七夕様の夜に晴れて良かったと思う。 私は大学が終わった後、隼人さんより一足早く、桜塚希望園に向かった。 子供たちと七夕のお祝いをするためだ。 元バイト先でほおずきを調達した後、私は桜塚希望園に入る。 「こんにちは!」 「いらっしゃい! 未来ちゃん!」 にこにこと迎えてくれる園長先生は、私が子供の頃からちっとも変わっていない。 優しくて、素敵で、本当に私の幼い頃には愛でいっぱいにしてくれた。 今は、ささやかな恩返しのつもりで、隼人さんとふたりで、ちょくちょくここを訪れている。 久しぶりに訪れた時、先生は私たちを見て、目を細めた。 『隼人君と未来ちゃんは、こうなると思っていましたよ』-----と。 私たちは恥ずかしかったけれども、同時に嬉しかった。 子供たちのプレイルームに行くと、暑い中、みんなは必死に短冊に願い事を書いている。 私はそれを覗き込んだ。 「みんな、一生懸命書くのよ? お星様はきっと夢を叶えてくれるから」 私が言うと、みんなは「ホント!」と良い、更に短冊を書く手に力が入っている。 本当に可愛いと思う----- 私もかつてはそうだった。 短冊に二つの願い事を毎年書いたものだ。----”はやとお兄ちゃんのお嫁さんになりたい””お父さんとお母さんが出来ますように”-----どちらも、私の場合は叶った。素晴らしい立花の両親だったうえに、とても素敵で優しかったお兄ちゃんまで付いてきた。 8年後には失ってしまったけれど、今度は、隼人さんと再会し、婚約をした---- 本当に七夕様は叶う。 心を込めてお願いをすれば、必ず叶えて下さる。 少なくとも私はそう思っている。 子供たちの真剣な様子を診ながら、私は横で、七夕用の折り紙細工など作るのを手伝っていた。 「ねえ、お姉ちゃんもお願い事を書かないの?」 小さな子が私に声をかけてきてくれる。 きらきらとした純粋な眼差しで短冊を二枚差し出してくれた物だから、私は笑顔でそれを受け取る。 「有り難う!」 久しぶりに私も短冊を書いてみることにした。 願い事は直ぐにでも思いつく。 ”隼人さんの可愛い子供が欲しい””通訳になりたい” この二つ。 私は神妙な顔をしてそれを書き上げると、紙縒を括り付けた。 子供たちとわいわい飾りを作った後、みんなで願い事を笹に括り付けて、庭に飾る。 笹を見る顔は、誰もが本当に良い顔をしていた。 夕食までの間、私は子供たちにほおずきを与えて、みんなでほおずきの芯を抜く。 庭に並んで、揃ってほおずきを鳴らすと、本当に夏の到来を感じずにはいられなかった。 幾分か湿った風が武庫川から吹いてくる。 それでも気持ちが良いと思えるのが不思議だった。 子供たちの宿題タイムの間、勉強を見てあげたり、夕食の手伝いなどで奔走する。 丁度夕食の時間の頃に、隼人さんが大きなスイカをいくつも持って希望園にやってきてくれた。 「こんにちは!」 「あ、隼人さんいらっしゃい!」 私がその姿を見るなりかけだしていくと、希望園の他のスタッフの皆さんは笑い出す。 「あまくていいわねえ」なんて言われて、私は相当恥ずかしかった。 「子供たちにたっぷりとおやつをと思ってね!」 「有り難う! 隼人さん!」 早速、隼人さんとふたりでスイカを氷水で冷やしに行く、子供たちが夕食後に食べるデザートにする。 「きっと喜ぶわ! みんな!」 「そうだね」 私たちは、子供たちの幸せそうな顔を思い浮かべて、お互いに顔を見合わせて微笑んだ。 みんなでがやがやと夕食を食べた後、私たちは庭に出てささやかな「七夕会」をする。 隼人さんが用意してくれた花火をみんなでやったり、巣かを食べたり、星空を見たり…。 特に隼人さんが話してくれる「織り姫と彦星」の話は、みんな熱心に聴いてくれた。 甘い声で語られる物語は、子供の頃も大好きだったけれど、今も凄く好きだ。 子供の頃何度か聴いた物語に耳を傾けながら、私は星空を見上げ、ロマンティックな気分に浸っていた。 「ねえお姉ちゃん、七夕様っていいねえ」 「そうね。素敵なお祭りだわ…」 横にいた女の子に私は微笑みながら、つくづくそう思っていた------ 「それじゃあ失礼します」 「ええ、また来てね。今日はどうも有り難う」 8時過ぎまで希望園にいた後、私たちは帰路につく。 武庫川の川縁まで出ると、どちらからともなく手を繋ぎあう。 「今日は楽しかったわ…。こんな素敵な七夕様、久しぶり」 「そうだね、楽しかった」 隼人さんも眸に笑みを滲ませて満足そうに呟いてくれる。嬉しかった。 私は空を見上げて、一生懸命天の川を探す。 桜塚は関西の中心地からだと程良い距離のところにあるから、綺麗な星空は余り期待することが出来ない。 けれど今日はロマンティックで思わず星を探してしまう。 武庫川の風も気持ちよくて、それを浴びながら夜空を見つめるのも楽しくてしょうがない。 隼人さんと手を繋いで、星を見る------これだけでも幸せでしょうがない。 「…未来、君の願いごとを見たよ」 「え!?」 恥ずかしすぎて、私は真っ赤になりながら隼人さんを見つめる。 あの願い事は別に隠すことではないけれども少しだけ恥ずかしい。 「今から、君の願い事を叶えに行こうか」 「…あ…」 願い事を叶える-----甘い響きに私はドキドキとせずにはいられない。 「君の願いを叶えるのは、僕の協力が絶対不可欠だろう?」 隼人さんの眩しいぐらいの甘い微笑みに、私は目眩を覚えるぐらい恍惚とする。 眼差しだけで、この男性は私をくらくらにする。 私は顔が熱くなるのを感じながら、隼人さんを見上げた。 「-----協力して下さい…」 「喜んで」 甘すぎる隼人さんの声と視線に、私はもう立っていられなくて、精悍な胸に躰をもたせかける。 「今夜は君の大好きな七夕だろう? ちゃんとホテルに部屋を取ってあるから、行こうか?」 「うん」 私は隼人さんに甘えながら、ロマンティックな外観で知られてる老舗のホテルに向かった。 ふたりとも桜塚市内に住んでいるし、お互いの部屋を行き来していて愛を交わしているけれども、ホテルで一緒に過ごす甘い夜はやはり特別な意味を持っていた。 チェックインをし、部屋の扉前まで来ると、隼人さんは僅かに笑う。 「今夜は熱帯夜だって。溶けちゃうかもしれないね」 私も頷くと、隼人さんを上目遣いで見る。 「-----どうせ溶けるのなら、隼人さんの腕の中で溶けたい…」 我ながら大胆だとは思ったが、まさにそんな気分だった。 隼人さんはいつにも増して艶が滲んだ眼差しを私に向けてくると、息が出来ないぐらい抱きしめてくる。 幸せすぎて目眩がする。 私はぎゅっと隼人さんの背中に縋り付く。 「-----何度も今夜はとろけさせてあげるよ…。とろけさせて、君の願いを叶えてあげるよ…」 「うん、おねがい…。とろとろになるまでして?」 「いいよ」 薬と微笑むと、隼人さんは私を抱き上げて部屋の中に入る。 甘くて、熱い七夕の夜が始まる------ |
| コメント 七夕物です。 えっちの手前で止めるのもなんだと思うんで、遅刻ですが、続きを書きます。 |