前編
ゆきの大好きなひとは、余り甘いものが好きではない。 食べるといえば、たまに和菓子を食べるぐらいで、それも抹茶にあうものに限られている。上品な生菓子程度しか食べないのだ。 だからゆきは、余りカフェだとかに誘えない。 抹茶の他に、紅茶も好きなようだから、紅茶がイロイロと楽しめるところならば、付き合って貰うよくれるかもしれない。 ゆきも気をつかわなくて済むと思っている。 デートで行くのは、いつも小松が知っている大人の落ち着いたデートしばかりだ。 だからこそ、たまにはゆきも大人な場所だけではなくて、ゆきの年齢に相応しい場所に、行ってみたいと、つい思ってしまう。 ゆきは思いきって、小松にデートを提案してみることにした。 そうすれば、ゆきが思っているデートが出来るかもしれない。 やはり、年相応の、ロマンティックなデートがしたかった。 ゆきは思いきってリクエストすることにした。 自分がしたいデートを。 「帯刀さん、今度のデートは、私に任せて貰えませんか?」 ゆきは笑顔で、真っ直ぐ視線を小松に向けて提案する。 「構わないよ。君がどのような場所が好きなのか、知ることが出来るからね」 「はい、有り難うございます」 小松からの約束も取り付けて、ゆきはご満悦な気分になる。 小松も楽しめて、自分も楽しめる。 そんな欲張りなデートを作ることが出来たらと、ゆきは思わずにはいられなかった。 小松とのデートを成功させたい。 ゆきはそれだけを強く持って デートのプラニングをする。 好きな人と一緒に初めてのデートをする、男子高校生のような気分で、情報誌を読み漁る。 デートの日にちは決まっているから、早くプラニングしなければならない。 薔薇が美しいオープンカフェに行くことは決まってはいるが、それ以外は何も考えられない。 情報誌は、イマドキ過ぎて、ゆきと小松のデートには合わない気がする。 小松とテーマパークや遊園地なんて有り得ない。 会わなすぎる。 落ち着いてはいるが、どこか華やかで、ロマンティックなデートがしたいだけなのだ。 ただそれだけなのだ。 イマドキの場所に小松と一緒に行きたいわけではないのだ。 そのあたりを踏まえながら、ゆきはデートコースを考えるが、なかなか考え付かない。 小松に本当に楽しんで貰いたい。 それだけなのだ。 ゆきは、自分が楽しみたいからと、もう少し華やいだイマドキのデートをしたいと、最初は思っていたのに、結局は、小松が楽しめるデートばかりを考えてしまう。 小松は気持ちを落ち着かせてくれながらも、とても華やいだ場所をいつも選んでくれる。 ゆきはそれが嬉しい。 小松はいつもこのような苦労をして、ゆきとのデートを考えてくれているのだろう。そう思うと、本当にいつも然り気無く気遣ってくれているのだろう。 それが今更ながら分かり、ゆきは感謝せずにはいられなかった。 本当に嬉しい。 だから、自分が出来る範囲内で、小松を楽しませることが出来ればと思う。 小松はどのようなところで幸せだと思ってくれているのだろうか。 そればかりを考え、小松の柔らかな笑みを思い浮かべた。 笑ってくれたことを想像するだけで、ゆきは嬉しかった。 色々と計画をしていると、結局は、小松とデートするコースと、そんなにも変わらないことに、ゆきは気づいた。 小松がプラニングしてくれたデートに、充分満足している自分に気づいていた。 小松と、花が美しい植物園に行き、その後は、一緒に、町の景色を堪能するように歩いて、薔薇が美しいオープンカフェで、アフタヌーンティーを楽しむ。 夕暮れの景色を堪能して、おしまい。 小松だから、あいだにファストフードなんてはさめるはずもないし、その気もない。 ゆきはここまでデートをプラニングして、本当にデートコースを考えるのは難しいのを知った。 小松の偉大さを強く感じる結果になった。 だけど、ゆきが一生懸命考えたデートだから、小松も楽しんで貰えればと思った。 デートの当日、ゆきはその雰囲気に相応しい、シンプルで可愛いワンピースを着て、出掛けることにした。 いつもよりは少しだけ早く約束の場所に向かう。 すると、既に小松が待ってくれていた。 「帯刀さん!」 「今日は、君がどのようなデートをしてくれるのか、楽しみにしているよ」 艶やかに笑われて、ゆきはプレッシャーを感じる。だが、今回は、頑張ったのだから、小松も楽しんでくれるはずだ。 「じゃあ、行きましょう」 ゆきはドキドキしながら頬を紅に染め上げると、小松を真っ直ぐ見上げながら、手をしっかりと繋いだ。 自分から繋ぐのはやはり勇気がいる。 ゆきが手を繋ぐと、小松は本当に嬉しそうにしてくれた。それが嬉しかった。 ゆきは、手を繋いで、先ずは植物園に向かった。 植物園では、のんびりと美しい花を見つめては、幸せな気持ちになる。 こうして小松と一緒にいる。 それだけで、ゆきは幸せだ。 しかもこんなにもしっかりと手を繋いでいるのだから。 綺麗な植物を見ているだけで、笑顔がこぼれ落ちた。 手を繋いでいるだけで、こうして小松と一緒にいるだけで、ゆきは幸せだった。 植物園で、人目のないところで、小松に背後から抱き締められたり。 それだけで、本当に楽しかったし、嬉しかった。 お気に入りのカフェに向かい、贅沢にアフタヌーンティーセットを頼んだ。 サンドウィッチなどもついているから、小松も充分に楽しんでくれている。 「君のデートのプランはなかなかかな? 私も楽しませて貰っているからね」 小松の言葉に、ゆきは本当に嬉しくて満面の笑顔になった。 「だったら、次は私がたっぷりと君を楽しませなければならないね」 「はい。楽しみにしています」 「夕方以降は何か決まっている?」 「いいえ、まだです」 「だったら私に任せて」 「はい」 小松に手を握り締められて、ゆきはときめきを跳ね上がらせた。 小松とときめき溢れたデートを楽しむことが出来る。ゆきのテンションはいやがおうでも高まっていった。 小松のデートプラン。 どんなにロマンティックなのだろうか。 ふたりで考えたプランを合わせることが出来るなんて、本当に嬉しい。 ゆきはそればかりを考えて、笑みを溢さずにはいられなかった。
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