お正月は稼ぎ時だと言い張るレオナードを説得して、エンジュは初詣に出かけた。 なぜか、アンジェリークも行くと言い、そのうえお目付役のようにアリオスが着いてくる。 このふたりは、付き合っているのかいないのか、微妙なところではあるけれども、お似合いには違いないとエンジュは思っている。 「おおみそかに大雪が降ったせいか、やっぱり寒いねえ〜」 アンジェリークはのんびりと言いながら、鈍色に輝く陽の光に息を吹きかけ、辺りを白くしていた。 「おら。寒かったら、こっち」 アリオスは相変わらずぶっきらぼうに言いながら、アンジェリークに手を差し伸べる。 寒さなのか、照れなのかは解らないが、アンジェリークは頬をほのかにリンゴ色に染め上げて、アリオスの手を取った。少し前のアンジェリークならば、素直に手を取ることはしなかっただろうが、最近はアリオスに良く馴れてきているせいか、このように手をちゃんと取る。 「温かい〜」 「だろ?」 アリオスにしっかりと手を包み込まれて、アンジェリークは心地よさそうな白い息を吐く。 極上の昼寝場所でおなかいっぱいになって眠る子猫のように幸せそうなアンジェリークに、エンジュは羨ましく感じた。 「おい」 「え?」 顔を上げると、そこにはレオナードのぶっきらぼうな笑顔。照れているのにどこかいかつくて、でも可愛い。 「俺様がお前の手を暖めてやろうっていうの」 目の辺りがほんのり赤くなっていて、エンジュはフッと優しく笑った。 「じゃあ、お願いします」 「おう」 大きなレオナードの手がエンジュの小さな手を護るように包み込んでくれる。胸の奥からふわふわと温かなものが浮かび上がってきて、とても幸せな気分になる。 先ほどのアンジェリークと同じように、エンジュもにんまりと微笑むことが出来た。 「あ〜! あんなところにわたあめ!」 参道に差し掛かり、テキヤの屋台が立ち並ぶところまでやってくると、アンジェリークは大声を上げて飛び上がった。 神様より食い気-----これぞアンジェリーク・コレットである。 「クッ、わたあめ食いたいのかよ?」 「わたあめだけじゃなくって、リンゴあめとか〜」 「りんごあめなら、お前のほっぺたにくっついてるだろうが」 「え!? どこどこ!?」 きょろきょろとアンジェリークが左右を向いて探していると、アリオスは頬をむにっとつねる。その姿は、正直言って恥ずかしいぐらいに甘かった。 「----ここだろ?」 「もうっ! アリオスのバカっ!」 参道が混み合っているというのに、ふたりの桃色のじゃれあいは止むどころか、どんどん酷くなっている。 それをレオナードと二人、微笑みながら眺めた。 「アリオス、ぽん栗食べたい。あの7人用2000円の」 「後でな」 「なんだァ、豆狸は共食いかよォ」 ぽん栗に瞳をきらきらと輝かせて、アンジェリークは1歩たりとも動こうとしない。レオナードもアリオスもこれには苦笑していた。 「共食いじゃあないもん! ぷんすか〜」 ぷんぷんと頭から湯気が出そうなぐらいにアンジェリークは起こりながら、ぽん栗の屋台から離れようとはしなかった。 「ったくしょうがねえな」 結局はアリオスが折れてしまい、一番大きなぽん栗の袋を購入する。 その間もアンジェリークとはと言えば。 「レオナードさ〜ん、エンジュ、ぽん栗試食できるって〜!」 4人分のぽん栗を貰い、ほくほくとアンジェリークは食べている。 「美味いなァ、これ! エンジュ、お前も食えや」 「有り難うございます〜」 エンジュもぽん栗を貰い口に含むと、本当に幸せの味がする。 きっとレオナードが傍にいるから。 だからどんなものでも美味しいと感じるのだ。 「エンジュももっほたへるぅ!」 ほっぺにたくさんの栗を含んで、アンジェリークは幸せそうに笑う。 「アンジェが好きなだけ食べていいよ〜」 「おっ! 優しいな、エンジュちゃんはァ! 後でとっときの甘酒を淹れてやるからなァ」 「あ! 私も!」 口に入れるものなら何でも試さずにいられないアンジェリークに、アリオスは苦笑している。だがそれを可愛いと思っているのは、眼差しの優しさをみれば判った。 「しょうがねェなァ、豆狸はおまけな」 「おまけでも飲ませてもらえたら嬉〜きゃあっ!」 足元が危ういアンジェリークは、またまたお約束にもこけそうになる。そこをまたアリオスが王子様宜しく腕で捕らえた。 「ったく。おまえはしっかり俺が掴まえていねえと、歩くことすら出来ねえんだろうな」 「うん。しっかり掴まえていてください」 「ああ」 ふたりがあまりにも熱い雰囲気をかもし出すものだから、レオナードもエンジュもすっかり当てられてしまう。ふたりはそっと目配せした後、手で顔を仰いだ。 ごっそりと人ごみの中を歩いて、ようやく神社の中へ入った。 ここからまた、お参りするまでに随分と待たされる。 「イモ洗いだなァ、こりゃあ。だから俺様は嫌だったんだよ」 すぐいらいらするレオナードに、エンジュはくすくすと笑う。この辺りもらしすぎて、幸せな笑みを浮かべられる。 ふと、お尻辺りがもぞもぞと撫でられたような気がして、エンジュは背後をうかがった。 確かに鼻息の荒そうな気持ち悪い男がいる。 エンジュの怒りは頂点に達し、後ろの男のお尻を触ろうとした腕をねじ上げた。 「う、あ、あ、ああ〜!」 「そんなことをお正月早々にするからよっ!」 エンジュは男の腕をねじ上げたついでに、一気に体を投げ飛ばした。 「流石エンジュちゃあん、オトコマエだなァ!」 レオナードは感心する余りに手を叩いて笑っている。それよりもこっちは助けて欲しいのだけれど。 これにはアンジェリークも手を叩き、やんやと喝采を送っていた。 エンジュの痴漢騒ぎもまったくらしいお正月。 ようやく順番が来て、四人そろって、神様にお願いをする。 きっと今年もよい年に----- 大丈夫。そうなるに決まっている。 大好きな相手と、幸せなお正月を迎えることが出来たのだから。 一番欲張りに祈っていたのは、やっぱりアンジェリーク。一生懸命、アリオスと手を繋ぎながら祈っていた。 「おい、何をそんなに熱心に祈ってたんだよ?」 「秘密! 奮発して100円も出したんだから、いっぱい頑張って祈ったの」 「100円で奮発かよ」 アリオスは苦笑しながら、アンジェリークの手をぎゅっと握り締めた。 アリオスとアンジェリーク、レオナードとエンジュは、それぞれおそろいのお守りを買い、境内をでた。 「美味い甘酒つくってやるからなァ。インスタントじゃねえから楽しみになァ」 「わ〜い〜」 二組のカップルは温かにも手を繋いだまま、境内を出た。 「天使の庭園」に変えると、早速レオナードが腕によりをかけて甘酒を造ってくれた。 「おらとっときの甘酒だぜ〜」 「わ〜い」 四人でとっておきの甘酒を並んで飲む。 「美味しい〜」 「そいつはよかったなァ」 レオナードもアンジェリークの絶叫にはご機嫌なようだ。 「おい、アンジェ、今年も宜しくな」 「うん! こちらこそよろしく」 レオナードタチがわざとタイミングよく視線を外してくれたので、アリオスはアンジェリークにそのままそっとキスをする。 そして、レオナードも視線を外すふりをして、エンジュの唇を甘く奪った。 今年も「天使の庭園」は絶好調に甘いカフェバーになりそうだ----- |
| コメント アリコレ、レオエンを絡めながらのお話。 天使の庭園のお正月です。 明けましておめでとうございます。 今年も宜しくお願いします。 |