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吉羅の部屋に連れられて入る。 それがどういうことを意味するか、解らない子供ではもうない。 香穂子は覚悟を決めて、中に入った。 覚悟とはいっても、それはとてもロマンティックなものなのだが。 香穂子がドキドキしていると、吉羅はいきなり力強く抱き締めてきた。 息が出来ないぐらいに苦しくなる。 吉羅に深い角度で、甘くて密度の濃いキスをさろて、どうしようもないぐらいにうっとりとした。 熱い。 どうしようもないほどに熱い。 焼け付く程に熱い感覚は、夏の温度よりも暑かった。 キスを受けた後、香穂子は頬をしっかりと包まれて、吉羅に見つめられる。 その瞳はー今までのものと比べ物にならないぐらいに燃え盛っている。 香穂子はうっとりと見つめることしか出来なかった。 「…君が好きだ。初めて逢った時から…。君以外の女性に目が行かなくなった…」 告白することなんてなかっただろう吉羅が、熱く囁いてくる。 こんなにも熱の籠った告白は他にはないだろうと、香穂子は思った。 「吉羅さん…」 香穂子もまた吉羅の名前を呼んで、恋情で潤んだ瞳を向ける。 そこからはもう言葉なんていらなかった。 吉羅は、香穂子を抱き上げると、そのままベッドへと連れていった。 吉羅に肌を晒すことはかなり恥ずかしかったが、それ以上に愛による情熱が激しかった。 香穂子は自分のこころが命ずるままに、吉羅に開放的になっていった。 お互いに熱を帯びた肌を重ね合い、想いを交換し合う。 吉羅にぜんしをを晒すのは恥ずかしかったが、「綺麗だ」と称賛してくれたことによって、それもなんとか振り切ることが出来た。 吉羅とふたりでしっかりと抱き合う。 全身にキスをされて、愛撫を受けて、世界で一番幸せな女なのではないかと、心から思った。 乳房を揉み込まれ、全身にキスを受けて、熱い秘密の場所にまでキスと愛撫を受ける。 本当に全身をくまなく吉羅に愛された。 どうして良いのか解らないところもあったが、それでも香穂子は自分で出来る限りの愛情を吉羅に示した。 「吉羅さん…、愛しています…」 「…私も…君に出会った時からずっと愛していたよ…」 吉羅の愛の籠った掠れ声に、香穂子は幸せを感じる。 言葉では表現出来ない程の愛情を更に感じた。 吉羅とひとつになった瞬間は、痛みの余りに泣いてしまったが、それでも何とか耐えられた。 それは吉羅を愛しているからだ。 誰よりも大切に思っているからだ。 香穂子はそれは強く思った。 吉羅もなるべくは香穂子に負担がかからないようにと、気遣ってくれた。 それでも痛みは相当だった。 何とか耐え忍んで、吉羅とひとつになる喜びを感じた。 幸せでしょうがなかった。 吉羅と熱を交換し、愛情を確かめ合う。 吉羅が愛のダンスを踊り始めると、香穂子は全身が痺れるような歓喜に包まれた。 知らなかったはずなのに、いつしかぎこちなくダンスを始める。 吉羅とふたりで愛のダンスをするというのは、なんて素晴らしいのだろうか。 瞼の裏には歓喜の太陽が輝く。 本当に美しい太陽だ。 香穂子は全身が舞い上がり、どうしようもない快楽に追い詰められる。 そのまま、心地好い快楽に震えて、香穂子は意識を手放すしかなかった。 意識を手放した後、躰が気怠い快楽から少しだけ戻ってくる。 吉羅に抱き締められて、香穂子は幸せな時間を紡ぐ。 「…君は最高に素晴らしい…。私に愛されるためにその躰が造られたのかと思う程に素晴らしいよ…」 吉羅は、香穂子のボディラインを撫でながら、本当に幸せそうに呟いた。 「君を抱いたら愛しさに歯止めが利かなくなるのは解ってはいたが…、それ以上だよ…。一生、私の腕の中で閉じ込めたくなった」 吉羅の甘い言葉に、香穂子は涙が出そうになった。 本当に嬉しい言葉をくれる。 「…君は…私を初めて本気にした女性だよ…」 「…嬉しいです。私が初めて心から好きになったのは、吉羅さんですから…」 香穂子はようやく自分から吉羅をギュッと抱き締める。 自分から愛する男性を抱き締めるのは、なんて嬉しいのだろうか。 「吉羅さん、…本当に大好きです…」 「…ああ…。有り難う。私を心から愛しているよ…」 吉羅もまたしっかりと抱き締めてくれる。 こうして抱き締めあうのはなんて幸せなのだろうか。 「香穂子、君は学生結婚をどのように思うのかね?」 「…え…? あ、あの、素敵だって思いますけれど…」 ほんの少しだけドキドキする。 香穂子は頬を赤らめながら、そっと吉羅を見た。 「…私が今すぐにでも君を妻にしたいと言ったら、どうする…?」 「…あ、あの、それはとても嬉しいですが…。何だかきちんと出来ないような気がして…」 「君が学生としてヴァイオリニストとして頑張れるように手を貸すつもりだよ。それだったら如何かな? 勿論、今すぐではなく、ほんの少しだけ先の話になるのだがね」 吉羅はきちんと考えてくれている。 吉羅のそばにいたら、恐らくは総てを手に入れられる。 こんなに奇蹟のような幸せがあるなんて、思ってもみないことだった。 「吉羅さん、魔法みたいに幸せなことですね。それが実現したら、私は本当に嬉しくてたまらないと思います…」 「では、実現させようか…。来年には…」 吉羅は甘い声で囁くと、香穂子を抱き起こした。 「…香穂子…、結婚を前提として、お付き合い頂けるかな? 来年の今時分には君を妻にしたいと思う」 吉羅のプロポーズに泣きそうになりながら、香穂子は笑顔を見せる。 「はい、喜んで」 香穂子が笑顔で答えると、吉羅が優しく抱き寄せて「有り難う」と言ってくれた。 それが嬉しくて、香穂子は吉羅をじっと見つめる。 不意に組み敷かれて、香穂子は鼓動を跳ねあげさせながらうろたえる。 「き、吉羅さん!?」 「婚約記念だ…。君をもっと愛したい…」 「はい…嬉しいです…」 香穂子はそのまま躰を吉羅に委ねる。 そのまま甘くて激しい時間を過ごした。 翌日から、香穂子の小さなヴァイオリンコンサートが始まった。 吉羅が見守ってくれる。 愛している男性にこうして見守って貰えるのは、なんと心地好いのだろうか。 のびのびとした幸せな気分を味わうことが出来る。 香穂子はそれが嬉しくて、更に温かなヴァイオリンを奏でることが出来た。 愛とはなんて素晴らしい力なのだろうかと、香穂子は思わずにはいられない。 本当にたくさんの力が湧いて来るのが解った。 香穂子がヴァイオリンを奏で終わると、誰もが笑顔で拍手をしてくれた。 それが嬉しいです。 気品溢れる初老の夫婦が香穂子のところにやってきて、手を握り締めてきた。 「良い演奏を、有り難うございました。こんなにも温かな演奏を聴くのは、本当に久し振りです。有り難うございます。あなたのヴァイオリンをまた聴きたくなりました」 夫婦の妻は、本当に嬉しそうに言ってくれる。 香穂子は嬉しくてしょうがなくて、思わず笑顔になった。 「こちらこそ有り難うございます」 香穂子が笑顔で言うと、今度は夫が笑顔になった。 「暁彦君、良いヴァイオリニストを見つけたね」 「はい。私の未来の妻でもあります」 「それは良かった。良い女性を選ばれましたね」 男性は笑顔になると、妻とふたりでゆっくりとホールから上機嫌で出ていった。 「あの方々はかなりの名士でね、かなり耳が肥えていて、あの方々が気に入ったヴァイオリニストは大成する伝説があるんだ。君のことを気に入ったようだ。あの方々に気に入られたということは、君は確実に素晴らしいヴァイオリニストになれるようだ」 「有り難うございます。嬉しく思います」 香穂子はにっこりと笑う。 「だけど私は…最高に耳の超えたパートナーがいますから、大丈夫です。一生、成長出来ますよ」 「それは良かった」 吉羅はにっこりと笑うと、唇を重ねてくる。 真夏のマイ・フェア・レディが成長するのはこれから。 女の子は愛するひとに見守られて、成長する。 |