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最高に嬉しいのに、香穂子は緊張してしまう。 妙にカチカチになってしまう。 ドキドキし過ぎて、息が出来なくなってしまうのではないかと、香穂子は思った。 車に乗り込むと、香穂子は更に身体を固くしてしまう。 その姿を見て、吉羅が柔らかく笑った。 「……緊張しているのかね?」 「……それは、そうですが……。だけど、嫌ではないんですけれど……」 「車を出そうか」 「はい」 吉羅は静かに車を出してくれる。 香穂子は緊張が高まるのを感じながら、深呼吸を深くした。 車窓からは素晴らしい夜景が見える。 ロマンティックなのに、何故だかそれ以上にロマンティックなひとが、横にいる。 香穂子は、吉羅ばかりを見つめてしまう。 昔から、吉羅が運転をする姿を見るのが、大好きだった。 香穂子はじっと見つめてしまう。 「夜景は見ないのかね?」 吉羅が余裕を持ったような笑みを浮かべながら、香穂子を一瞬だけ見つめてくれた。 「吉羅さんの運転をする姿を見つめるのが、私は大好きなんですよ」 香穂子が微笑むと、吉羅も同じように微笑んでくれた。 「今夜は私の家に向かうからそのつもりで」 「……はい」 吉羅の家。 香穂子は、更に緊張せずにはいられない。 車が静かに、六本木へと向かう。 車が、吉羅の城である、摩天楼な建物へと入っていく。 もう戻れない。 車が駐車場に停まる。 吉羅は先に車を降りると、なかなか降りることが出来ない香穂子をエスコートして、ドアを開けてくれた。 「どうぞ、お嬢さん」 「有り難うございます」 お嬢さん。 吉羅と初めて出逢った時に、呼ばれた懐かしい呼び名だ。 吉羅に手をしっかり握られると、香穂子を部屋まで連れていってくれた。 ロマンティックなクリスマスイブ。 こんな素晴らしい日に、吉羅と結ばれるなんて、なんて幸せなのだろうか。 部屋に入ると、香穂子は入り口からなかなか先に進めなかった。 「少し落ち着こうか、香穂子。ソファに座りなさい」 「……はい。吉羅さん」 香穂子はソファに腰かけると、落ち着かないまま、吉羅の姿を追った。 「どうぞ。ミネラルウォーターだよ」 「有り難うございます」 吉羅からミネラルウォーターを受けとると、それに口をつける。 吉羅がゆったりと横に腰を掛けてくる。 意識せずにはいられない。 「……君はかなり緊張しているね」 「はい。大好きなひとと、いざ、となると、緊張するというか」 「……私も緊張しているよ」 吉羅にいきなり抱き寄せられたかと思うと、そのまま甘いキスを受ける。 今までよりもより深いキスに、香穂子は胸が苦しくなるぐらいに高まるのを感じる。 舌を絡ませ、お互いの唇を何度も 吸いあう。 吉羅は、香穂子を上手くリードしてくれる。 ソファに腰かけているのに、身体のバランスが上手く取れない。 香穂子は、身体を支えるために、吉羅の首に腕をしっかりと回した。 吉羅は香穂子の頭ごと抱き締めて、更なる深いキスをしてきた。 夢中にならずにはいられない。 何度も、何度も、深いキスを交わし、お互いの想いが深いことを、確かめあった。 唇をお互いに離した後、見つめあう。 何も言葉はいらない。 吉羅は香穂子を抱き上げると、そのままベッドルームへと向かった。 ベッドに寝かされて、吉羅にリードされながら、香穂子は少女から女へと変化する。 何もかも初めてで、緊張してしまっていたが、甘い行為と情熱的な優しさで、吉羅が緊張を少しずつ解いていってくれる。 あくまで優しくしてくれる。 ロマンティックなまでの気遣いと優しさに、香穂子は吉羅に愛されているのだと、感じた。 吉羅が相手だから、怖くても幸せな気持ちでいられる。 香穂子はそう感じずにはいられなかった。 吉羅とひとつになった瞬間、痛みに涙が流れた。 嬉しさと、今まで経験したことがない痛みがあったからだ。 吉羅のものになれた。 愛するひととようやく、男女として対等にいられるようになった。 吉羅の手によって、香穂子は女性としての大輪の花を咲かせることが出来た。 愛し合った後、吉羅としっかりと抱き合いながら、眠りに落ちた。 充たされた充足感は、言葉に表すことが出来ないぐらいに幸せで、香穂子は、世界で一番幸せな女性だと、胸を張って言えるような気がすると思った。 世界で一番ロマンティックで素敵なクリスマスイブを過ごせたと、思わずにはいられなかった。 翌朝、香穂子はゆっくりと目覚めた。 いつもよりも幸せな温もりを感じる朝だ。 同時に少しだけ身体が気だるい。 だが、それは決して不快なものではなかった。 ゆっくりと目を開けると、いきなり柔らかな表情を浮かべている吉羅と目があってしまった。 「……あ。吉羅さん……」 吉羅の顔を見るなり、香穂子は昨日の甘くて激しい夜を思い出して、顔を隠したくなった。 きっと寝起きの顔だから、浮腫んでいるのに違いない。 恥ずかしくて顔を隠そうとして、吉羅のキスに阻止されてしまう。 「……おはよう、香穂子。メリークリスマス」 吉羅は、今までで一番甘くて素敵な笑顔を香穂子だけにくれる。 身体が蕩けてしまうぐらいに、幸せだ。 「……おはようございます、吉羅さん……。メリークリスマス」 香穂子は挨拶をした後、クリスマスプレゼントを渡していないことに、気が付いた。 「あ!クリスマスプレゼントをお渡ししないと。日持ちするケーキも焼いてきたんです!」 香穂子が起き上がろうとすると、吉羅が阻止するように抱き締めてきた。 「それは後で良いよ。もう、私はクリスマスプレゼントを貰っているよ。最高の君というクリスマスプレゼントをね。あとひとつ欲しいものがあるが、構わないかね?」 「どうぞ」 吉羅の言葉を嬉しく思いながら、香穂子は笑顔で答える。 「……暁彦と呼んでくれないかな。吉羅さんは、他人行儀だろう? こういう関係なのだからね?」 吉羅は艶やかに微笑むと香穂子に迫る。 「……メリークリスマス、あ、暁彦さん……」 恥ずかしかったが、香穂子は何とか呟いた。 すると、吉羅は満足とばかりに微笑み、香穂子にキスをする。 「……有り難う……」 吉羅は香穂子を抱き締めると、再び愛し始める。 素晴らしきクリスマスがこれから始まる。 |