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吉羅のキスは麻薬だと香穂子は思う。 キスをされる度に、もっと欲しくなってしまう。 唇を重ね合い、互いの熱を共有し合う。その心地好い幸せに、このまま躰が墜落してしまいそうになった。 何度も唇を啄み合い、舌を絡ませ合う。 最初は吉羅のリードに任せていた香穂子も、徐々にペースを掴めるようになっていった。 何度も唇を吸い合っているのに、もっと欲しいと思ってしまう。 まだまだだと思ったところで、吉羅の唇が離された。 香穂子の唇から、思わず不満の溜め息が漏れる。 「…もっと君を味わいたいんだ…」 吉羅は囁きながら、香穂子の首筋に唇を着けてくる。 袷に手を差し入れられて、思わず吐息を零した。 唇が首筋を吸い上げている間、吉羅は滑らかな肌に手を這わせてくる。 「…んっ…」 吉羅に触れられるだけなのに、濃厚なスキンミルクを塗るよりも、肌が滑らかになるのを感じる。 不思議な魔法だ。 吉羅は、香穂子の浴衣を焦らすように脱がしながら、唇を滑らかな肌に落としてきた。 本当に慈しんでくれているかのような愛が溢れたキスだ。 とりとめのない華奢な躰。 どこに魅力があるのか、香穂子には分からない。 それどころか吉羅が気に入ってくれるのかと、不安になってしまう。 吉羅クラスの男になれば、極上な女は何人も知っていることだろう。 そんな素晴らしい女性と比べられるかと思うと、泣きたくなる。 吉羅は香穂子の胸を扇情的に愛撫を始めた。 唇で両手で、余すことなく愛してくれる。 「…あっ…!」 不安なんて感じられないほどに丹念に愛されて、香穂子は快楽に溺れていく。 肌が艶やかな熱を持って吉羅に絡み付いていく。 そのしっとりとした媚体に、香穂子は自分でも驚いていた。 吉羅は香穂子の躰から総てを脱がしてしまうと、不意に躰を熱っぽく見つめてくる。 その視線が余りにも艶やかで、香穂子は恥ずかしさの余りに顔を隠してしまった。 「…吉羅さん…、余り見ないで下さい…。恥ずかしいから…」 「恥ずかしがる必要なんかない。君はとても綺麗だ…」 吉羅は低い声で呟くと、視線だけで香穂子を慈しむ。 躰の奥深い場所が熱くなり、思わず肌を震わせた。 「本当に綺麗だね…。誰にも見せたくはないし、誰にも君に触れさせない…。この肌に触れて良いのは、私だけだ。この肌を見つめて良いのは私だけだ…。君はそれを充分に理解するんだ…」 「…吉羅さん…」 吉羅以外に見つめて欲しい相手なんて他にいない。 香穂子は肌を震わせながら、吉羅を見上げた。 「…吉羅さん以外に…そんな人はいません…」 「ずっとそうであることを祈っているよ…」 吉羅は甘い声で囁くと、香穂子の平らな腹部にキスをしながら、熱く暴走寸前の場所に唇を運んでいった。 「…やっ…!」 信じられない程に恥ずかしい場所に、吉羅の唇が押しつけられる。 吉羅は指先で熱い部分を開くと、そこに舌を這わせていった。 熱いものが流れて、頭がおかしくなってしまうのではないかと思う。 吉羅はまるで蜜を吸い上げる小鳥のように、香穂子の熱い場所を貪欲に舌先で愛撫をした。 「…あっ! やっ!」 香穂子は華奢な腰を揺らしながら、吉羅の舌や指先に翻弄されていく。 熱くてたまらない。 恥ずかしいのに、止めて欲しくない感情が湧き上がってきて、泣きそうになった。 「…香穂子、綺麗だ…」 「あっ、ああっ…!」 全身に痺れたような感覚が走り抜けて、香穂子は躰を激しく揺らす。 一瞬、頭のなかが無になったような気がした。 「…香穂子…」 吉羅に抱き締められながら、香穂子は呼吸を整える。 「…本当に綺麗だね…」 吉羅は低い声で囁きながら、香穂子の躰を撫でてくれた。 「…愛しているよ…」 低い声で甘くゆったりと囁かれると、嬉しさの余りに涙がこぼれ落ちてくる。 「…幸せです…。私も吉羅さんを愛しています…」 吉羅の逞しい胸に顔を埋めながら、香穂子がはにかんで呟く。 吉羅はもう一度抱き締めてくれると、香穂子の脚の間に躰を入れてきた。 香穂子は一瞬怖くて、吉羅に不安げな顔を向ける。 「…怖くないから、私のリードに任せていれば良いから…」 「…はい…。有り難うございます…」 香穂子が安心して笑顔で頷くと、吉羅は入口に楔を押し当ててきた。 「…吉羅さ…ん…っ!」 裂ける程の痛みに、香穂子は思わず悲鳴を上げる。 吉羅のがっしりとした背中に、思わず爪を立てた。 「…香穂子…、大丈夫だから力を抜くんだ…」 吉羅にあやすように優しく囁かれると、緊張が少しばかり抜けていく。 「大丈夫だ…」 「…はいっ…」 香穂子が少しだけ力を抜くと、吉羅は先に進んでくる。 涙が滲んでしまうほどに痛みを感じたが、それでも止めて貰いたくはなかった。 吉羅は香穂子にキスをしながら、痛みを和らげてくれる。 胎内で今にも熱く暴れ出してしまいそうになる吉羅の欲望を感じ取り、息をするのも苦しくなる。 「…吉羅さん…っ!」 吉羅がはちきれそうな楔を香穂子の最奥に押しつける。 その瞬間に、頭先を貫く痛みが駆け抜けた。 痛いのに、どうしてこんなに幸せなのかと思う。 同時に外で風が吹き渡り、桜の花びらがざわついている幻想的な音が聞こえる。 それはまるで香穂子が吉羅のものになったことを、祝福しているかのようだった。 香穂子が涙を一筋零すと、吉羅は微笑みをくれた。 「大丈夫です…。凄く嬉しいから…」 「香穂子」 吉羅は香穂子の額にキスをした後で、ゆっくりと動き始めた。 その甘い官能的な動きに、香穂子は息を乱しながら応えていく。 無意識に腰を揺らしながら、吉羅を煽っていった。 「…香穂子…っ!」 「…んっ…ああっ…!」 痛みが和らいだかと思うと、柔らかな快楽が滲んできた。 目を閉じると、その気持ち良さに、総ての細胞が震えてしまう。 「香穂子…」 吉羅は苦しげに名前を呼んでくれると、香穂子を突き上げてくる。 奥深くを力強く攻め立てられて、快楽の余りに目眩を感じた。 吉羅の熱がもっと欲しい。 お互いにとけてしまうまで熱を高めたい。 香穂子は吉羅を一気に抱き締めると、ギュッと無意識に締め付ける。 吉羅の動きが早急になり、一気に快楽が弾けて満たされた。 「…あっ…!」 声にならない嬌声がこぼれ落ちて、香穂子はこのまま溶けてしまう。 意識も快楽も総てが溶け出して、真っ白になった。 吉羅に優しく抱き締められて、香穂子は幸せな気分で目を開ける。 「香穂子…」 大好きなひとにこうしてゆったりと抱き締められるというのは、なんて幸せなことなのだろうかと、香穂子は思う。 こうしてただ抱き合っているだけでも満たされるのを感じた。 「…幸せです。とっても」 「私も幸せだよ…」 吉羅は甘く囁くと、香穂子を更に抱き締めてくれた。 「有り難う…。香穂子、私は君を離さないからそのつもりでいたまえ。一生の契約になると思うよ」 「有り難うございます…。その契約を破棄するつもりはないですから」 香穂子はにっこりと笑うと、吉羅を抱き締めた。 「…では契約記念だ。異存はあるまい?」 吉羅は喉の奥で笑いながら、香穂子を再び組み敷いてくる。 「き、吉羅さんっ!?」 香穂子が慌てるのも聞かずに、吉羅は愛し始める。その甘くて濃厚な愛の行為に、溺れていった。 翌日、ふたりは午前中を京都見物にあてる。恋人になってふたりで最初にデートをする場所だ。 京都の桜を見つめながら香穂子は思う。 毎年同じように花を咲かせる花は、永遠の命を持っているように思える。 自分達の愛もこの桜のようになれば良いと思わずにはいられなかった。 |