*夏の夜の出来事*

6


 吉羅の前で、こんなにも恥ずかしい格好をしなければならないなんて、思ってもみなかった。
 逆に言えば、吉羅の前だからこそ出来るのかもしれない。
 吉羅は脚を広げた香穂子の中心に顔を埋めて来た。
「…嫌…っ!」
 恥ずかしくて極まりのない行為に、香穂子は暴れたくなった。
 だが、両足をしっかりと押さえられていて、そうすることが出来ない。
 本当に泣きたい。
 ならばせめて見ないで欲しい。
「…暁彦さん…、見ないで…」
「こんなに綺麗だから見ないのは勿体ないよ…」
 吉羅はセクシィ極まりない声で囁いた後、舌先を香穂子の熱い場所に埋め込んできた。
「…ああっ…!」
 舌先で、愛の証でもある熱い蜜をなぶられる。
 敏感な中心を刺激されて、このまま墜落してしまいそうだ。
「…暁彦さん…っ!」
 吉羅は、香穂子のそこに夢中になっているかのように、舌先で中心を刺激し、指先をゆっくりと胎内へと侵入させてきた。
「…やめ…っ」
 ピリッとした痛みが下半身から響いて、香穂子は思わず脚を閉じようとした。
 だが勿論、吉羅が阻止をしてくる。
 吉羅は、指先で香穂子の胎内をくすぐった後、奥深い場所を探り始める。
 すると刺激に反応して、躰のなかで最も熱い場所が、激しく疼き始めた。
「…やっ…、ああ…!」
 無意識に華奢な腰が淫らにも動いてしまう。
 腰が痺れてしまうほどに快楽を感じてしまい、自分ではどうすることも出来なくなる。
 吉羅の刺激は更に激しくなり、もう抵抗出来ないほどに感じてしまっていた。
 何も考えられなくて、ただ吉羅がくれる甘美な刺激だけを感じる。
 こんなにも愛しいと思った感覚はなかった。
 視界が揺れて、もう何が起こっているのか、訳が分からなくなる。
 香穂子が全身を震わせると、吉羅はそのまま強く腰を抱き締めてくる。
「…あっ…!」
 意識の奥で太陽が光り輝いたような気がした。
 その瞬間、躰が小刻みに震えて、化学変化が起こってしまい、記憶が分からなくなった。

 ぼんやりとしままま目を開けると、吉羅が瞼にキスをくれた。
 うっとりとしてしまうほどに甘いキスだ。
「…君の総てを貰うから…。今夜から君は私だけのものだ…。構わないね?」
 吉羅だけのものになりたい。
 それは香穂子の長い願いでもあった。
 ゆっくりと頷くと、吉羅は、熱い楔を香穂子の入り口に押し当ててきた。
「…あ…」
 押し当てられるだけで物凄い圧迫だ。
 香穂子はその圧迫に酔い痴れながら、吉羅を抱き締める。
 吉羅がゆっくりと胎内に入り込んできた。
「…っ…!」
 押し広げられる痛みは相当のものではあったが、それでも耐えることが出来た。
 やはり愛するひとと結ばれる喜びは、何よりもの幸せを生んで、痛みなど吹き飛ばしてしまう。
「…香穂子…、綺麗だね…君は…」
「…んっ…あっ…」
 痛みの余りに瞳に涙を滲ませて耐える香穂子をあやすように、吉羅は顔や首筋、デコルテに甘くて優しいキスをくれる。
 とっておきのキスと吉羅への想いが、香穂子を痛みから開放してくれた。
「…香穂子、愛している…」
 吉羅から聴く初めての愛の言葉に香穂子は嬉しさの余りに涙を零す。
「…痛くて、辛いのか?」
 吉羅が心配そうに見つめてくるものだから、香穂子は首を横に振る。
「…いいえ…。嬉しいんです…。とっても…」
 香穂子が笑うと、吉羅は骨が軋んでしまうのではないかと思う程に抱き締めてくる。
 こんなに熱情と愛情を感じたことは、未だかつてなかった。
「…私…暁彦さんが…ずっと好きでした…。愛しています…」
「香穂子…っ!」
 吉羅は激情をぶつけるように、香穂子の胎内に一気に入り込んでくる。
 息が出来ないほどの圧迫に、おかしくなりそうだ。
「痛いのに気持ちが良いだなんて、なんておかしな感覚なのだろうか。
 吉羅は息を止めると、次の瞬間大きく吐き出す。
 リードしてくれている吉羅ですらも、コントロール出来ないのだ。
「…香穂子…っ!」
 吉羅はゆっくりゆっくりと香穂子の胎内を動き始めた。
「…んっ…あっ…」
 今まで一番艶のある声が、部屋のなかに響き渡る。自分の声だなんて信じられないぐらいだ。
「香穂子…っ!」
 息を乱しながら何度も名前を呼んでくれるのが嬉しい。
 吉羅が動く度に、余りにもの気持ち良さに、くらくらしてしまうほどだ。
 痛いのに、どうしてこんなにも気持ちが良くて幸せなのか、香穂子には解らない。
 ただ解ることは、吉羅の愛情をしっかりと受け入れていることが嬉しいのだ。
 吉羅の動きは徐々に加速してゆき、同時に香穂子の快楽も膨らんでくる。
「…あ、ん…!」
 吉羅の楔が熱を帯びて激しさを増してくる。
 それがとても嬉しい。
 楔で奥深くまで愛しげに突き上げられて、香穂子はどうしようもないほどに溺れていく。
 こんなにも気持ちが良いことなんて、他にないのではないかと思った。
 吉羅の突き上げが激しくなるにつれて、視界が揺れる。
 香穂子はどうして良いか解らないほどの快楽に、目が開けられなくなる。
 理性なんてもう何処かに行ってしまった。
 今あるのは、愛するひとへの欲望だけだ。
 吉羅の楔が、香穂子が最も感じる場所に突き刺さった。
「…あっ…!」
 そこを何度も突き上げられて、香穂子はもう堪らなくてしょうがなくなる。
 何もいらない。吉羅暁彦以外は。
 そう思った瞬間、凄まじい力で突き上げられた。
「…あっ…、ああっ…!」
 香穂子は華奢な躰をのけ反らせながら、そのまま高みへと上り詰めていく。
 後はもう意識を手放すしかない。

 吉羅に柔らかく抱き締められて、香穂子は幸せの余りにまなじりから涙を零した。
「…暁彦さん…大好きです…」
「…私も君を愛しているよ…」
 吉羅に抱き締められて甘い言葉を囁かれているだけで、幸せで堪らなくなる。
 うっとりとしていると、吉羅は香穂子の背中を撫でてくれた。
「香穂子、私はもう君を離さないからそのつもりで…」
「はい…。私こそ離れたくないですから…」
「ああ」
 吉羅は嬉しそうに言うと、香穂子の唇に触れるだけの甘いキスをくれた。
「香穂子、お互いにすれ違いが多い私たちだから、それを解消するためにも一緒に住まないかね?」
「…一緒に…ですか?」
「ああ。一緒に住もう。私はどうも嫉妬深いタイプらしくて、君をそばに置いておかないと気に入らないようだからね…」
 吉羅の提案が嬉しくて、香穂子はそっと頷いた。
「…私もそうしたいです…」
「…そうしたいね」
 吉羅は香穂子をもう一度抱き締めた後、シーツに包んで抱き上げてきた。
「夜景を見たいと君が言っていたのに、中途半端になってしまっただろう? だから一緒に見よう」
「有り難うございます」
 吉羅は広くて大きな窓まで歩いていき、夜景が美しいみなとみらいの景色を見せてくれた。
「…綺麗です…。暁彦さんと一緒に見る横浜の町は…」
 香穂子はうっとりと呟いた後、吉羅を見つめる。
「だけど…、外から見えませんか?」
「見えない。ここの窓はマジックミラーだ。中からは外の様子は解るが、外からは解らないんだよ」
「…良かった…」
 香穂子がホッとすると、吉羅は額にキスをくれた。
「さてとベッドに戻ろうか。可愛い君をもう少し堪能したいからね…」
「…もう…」
 香穂子がはにかみながら甘く反論すると、吉羅は微笑む。
 そのままベッドへと連れて行かれると、再び真夏の熱い夜を過ごし始めた。



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