*レディになるまでに〜愛の告白〜*

5


 吉羅に大人の女性にして貰った。
 その事実が嬉しくてしょうがない。
 香穂子がうっとりと幸せな気分で微笑むと、吉羅は更にしっかりと抱き締めてくれた。
「幸せです…。とても…」
「私もかなり幸せだよ」
 吉羅は甘い声で呟くと、香穂子の額に軽く唇を寄せてくれた。
「…もう君を離さないからそのつもりで…。君が愛しくて愛しくてしょうがなくなってしまったからね…」
 吉羅は香穂子のボディラインを緩やかに撫でながら、本当に幸せそうに呟いてくれる。
 それがとても嬉しくて幸せだ。
「…香穂子、君が欲しい…。君を求め足りないよ…」
「…暁彦さん…。沢山愛して、私を女にして下さい…」
 香穂子はうっとりとした気分になりながら、吉羅の背中に手を回した。
 かなり大胆だとは思っていたが、香穂子もまた吉羅が欲しかったから、もっと引き寄せたかった。
「…暁彦さん…、本当にこころから愛しています…」
「私もだよ…。君を本当にこころから愛しているよ…」
 吉羅は再び香穂子を組み敷くと、情熱的に愛していく。
 それがとても幸せでしょうがなかった。

 朝まで激しく愛し合ったせいで、香穂子はゆらゆらと夢の世界に漂っていた。
 目をゆっくりと開けると、吉羅が香穂子の顔を優しくなぞってきてくれた。
「起きたかね…?」
「…はい。今、何時でしょうか?」
「朝の8時だよ…。シャワーを浴びた後で朝食を取ろうか…?」
「はい。チェックアウトの時間もありますから、急がないとダメですね…」
「レイトチェックアウトだから大丈夫だ。それと、チェックアウトした後に、うちに来ないか?」
「はい」
 香穂子がはにかんで答えると、吉羅はそっと髪を撫でてくれた。

 もうすこしだけベッドにいたかったが、時間もあるのでしょうがない。
 香穂子はシャワーを浴びて、素早く身仕度を整えた。
 吉羅とそのまま手を繋いで、朝食場所へと向かう。
 そこで出たのは、朝にはとても優しい和風の朝御飯だった。
 吉羅とふたりで向かい合わせになって笑みを零しながら食事をする。
 何度も一緒に食事をした仲ではあるが、改めて朝食を一緒に食べるというのはかなり恥ずかしかった。
 香穂子がはにかみながら食事をしていると、吉羅はフッと微笑む。
「何だかふたりで朝御飯を食べていると恥ずかしいですね」
 香穂子が上目遣いで見ると、吉羅は軽く頷いた。
「だが、これからは慣れて貰わなければならないよ。君とこうして食事をすることも増えてくるからね」
「はい…」
 吉羅と朝を向かえるのがこれからは増えることだろう。
 それは幸せでしょうがないことに間違ない。
「食事を食べ終わったらうちへ行こう」
「はい」
 香穂子が笑顔で頷くと、吉羅は笑顔をくれる。
 ふたりでこれからはとっておきの幸せを掴めるような気にするなった。

 食事が終わり、吉羅の自宅がある六本木へと向かう。
「桐也と、柚木くんには感謝をしなければならないね。こうして君と更に絆を深めることが出来たのだからね…」
 吉羅は柔らかい声で言いながら、香穂子の手を優しく撫でてくれる。
 それが嬉しくてしょうがなかった。
「…物凄く幸せです。暁彦さんとひとつになれて本当に幸せです…」
「香穂子…」
 香穂子は幸せで前向きな気分になりながら、眩しいほどの微笑みを向けた。

 吉羅の家がある六本木に到着し、ふたりでそこに向かう。
 手を繋いだ感覚も、吉羅のものになる前とは違うような気がする。
 より絆が強固になったようなそんな感覚がある。
 家に入ると、吉羅は香穂子をギュッと抱き締めてきた。
「香穂子、言ったとは思うが、私はもう君を離す気はない。色々と大変なこともあるが、ふたりで乗り越えて行こう」
 吉羅は真摯な愛を瞳に浮かべると、香穂子を真直ぐ見つめる。
「…暁彦さん、あなたを好きになった時から、その覚悟は出来ていましたから、大丈夫です。あなたとならどんなことでも乗り越えていけますから」
 香穂子はキッパリと言い切ると、何処か凜としたまなざしを吉羅に向ける。
 吉羅と一緒だからより強くなれる。
 吉羅と心を重ねれば、何処までも走ることが出来るような気がした。
「頼もしいパートナーだよ、君は」
 吉羅は落ち着いた深みのある笑みを浮かべながら、香穂子の髪をそっと撫でてくれた。
 それが嬉しい。
「これからも暁彦さんにずっとベストパートナーだと言って貰えるようになりますね」
「私こそ、君に相応しい男にならなければならないと思っているよ。お互いに高めあっていこう」
「はい」
 香穂子が明快に返事をすると吉羅は微笑んで唇を重ねてくれる。
 そのキスはうっとりとしてしまうほどに素敵で心地が好い。
 唇を重ねた後、吉羅は香穂子を軽々と抱き上げる。
「…あ、暁彦さんっ!?」
「昼間から嫌だなんて…野暮なことは言わないでくれ…。私はいつでも君が欲しいんだよ…」
 吉羅の艶が滲んだ声とまなざしに、香穂子は降参するしかない。
 吉羅が紡ぐ愛の旋律に溺れたのは、言うまでもなかった。

 結局は夕方までたゆたゆとした愛の時間を過ごし、食事をしてから家に帰ることになった。
 味の好さでは評判のイタリアンレストランで、香穂子はピザやパスタ、サラダを堪能する。
 ふたりで穏やかに会話をしていると、衛藤が外国人の友人数人とレストランに入ってきた。
 直ぐに香穂子たちの存在に気付いたようで、こちらに向かって歩いてくる。
「…いつもタイミングが良いのか悪いのか解らないようなところで現れるね…」
 吉羅は苦笑いを浮かべながら、年の離れた従弟を注視していた。
「こんばんは暁彦さん…、それと日野…」
 衛藤はふたりを交互に見た後に、香穂子を見る。
「何だか変わった感じがするけれど、気のせいかな?」
「私? 全く変わってなんかないよ」
 香穂子は、衛藤が言った意味が分からなくて、小首を傾げた。
 昨日と全く同じなのに、何処か変わったことがあるのだろうか。
 吉羅と結ばれたことなど、見ただけでは解らない筈だから。
「そう言われても、なんか変わっている…。ちょっと大人びたというか…」
「私が…?」
 そう思って貰えれば、こんなにも嬉しいことはない。
 吉羅に釣り合う大人の女性になるのが、ずっと目標であったから。
「…どうしてかな…」
 衛藤はそこまで言うとハッとする。
 視線が香穂子の白い首筋に注がれた。
「…そうか、そういうこと…」
 衛藤は自分で納得しながらも、何処か切なそうにしていた。
 一瞬、吉羅をとてもキツいまなざしで睨み付ける。
 だが吉羅はあくまでクールだ。
「桐也、行きたまえ。お前の友人が待っている」
「…解ってるよ…暁彦さん…」
 衛藤は拗ねるように言った後、友人の元へと行ってしまった。
「…暁彦さん、衛藤くんは良かったんですか?」
「桐也にとっては良くないことを見せつけられてかなりショックだっただろうね。まあ、あれぐらいでちょうど良い。これ以上、君にちょっかいをかけられても困るからね」
 吉羅はキッパリ言うと、香穂子をイタズラっぽく見つめる。
「桐也は、君が完全に私のものになったことを気付いたようだ」
「…えっ!?」
 吉羅の言葉が恥ずかしくてしょうがなくて、目の前の恋人を見る。
「…あ、あの…」
「今夜の君は大人びて本当に綺麗だからね…。このような君を見せられたら誰だって気付くよ」
 吉羅の言葉に恥ずかしくなりながらも、同時に香穂子は嬉しくなる。
 これからも少しずつ大人の階段を登っていく。
 そのエスコートは大好きなひとがずっとしてくれるのだろうと感じていた。



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