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高杉が与えてくれる痛みは、ゆきにとっては嬉しい痛みだった。 こんなにも幸せな痛みはない。 鋭い痛みに泣きそうになるが、それでも幸せだからこそ耐えられると思った。 ゆきは高杉に必死になってすがりつく。 こうして高杉の鍛えられた逞しい肩にすがれば、何とか痛みに堪えられた。 高杉が胎内で動くたびに、ゆきは痛みに顔をしかめてしまう。 苦しくて痛い。 ゆきはそれでも堪えられると思った。 大好きなひとが刻み付けてくれる幸せな痛みだと感じたから。 「……ゆき、愛しているっ……」 高杉は苦しげに甘い言葉を囁いてくれる。 高杉がこうして愛の言葉を囁いてくれるのは、何よりも嬉しい。 高杉の愛情が、ゆきの痛みを和らげてくれた。 「……痛むか?」 「大丈夫です……」 痛いけれども、本当に大丈夫だから。 苦しくもなんともないから。 ゆきは高杉にすがり付きながら、微笑んだ。 「……大丈夫です……。高杉さんだから……」 ゆきが微笑むと、高杉は思いきり抱き締めてきた。 同時に高杉が更に深いところへと浸入する。 ゆきは痛みの余りに、涙を眦から流したが、それは幸せ色をしていた。 高杉がゆっくりと動き始める。 その動きの狂おしい程の甘さに、ゆきは胸がいっぱいになる。 こんなにも幸せな気持ちはほかにない。 愛するひとと結ばれているのだと、ゆきは強く感じずにはいられない。 高杉の動きが少しずつ早くなってくる。 早い動きに、ゆきはついて行くのに必死になる。だが、ついてゆくにつれて、幸せでしかたがなくなる。 甘くて気持ちが良い。 こんなにも甘美な感動が待ち受けているなんて、ゆきは思いもしなかった。 高杉につられるように、ゆきは腰をゆっくりと動かしてゆく。 気持ちが良くて、頭の奥が痺れる。 目を開けていられないぐらいに、激しく感じた。 何も考えられない。 何もいらない。 高杉以外に、意味のある存在があるというのだろうか。 ゆきは高杉にすがり付きながら、ぼんやりと考えた。 激しく何度も奥を突き上げられる。 お腹の奥がキュッと締まって、高杉を捕らえた。 高杉以外には誰もいらない。 そんなことすら思ってしまう。 ゆきは躰を震わせながら、快楽の園へと上り詰めてゆく。 高杉もまた、躰を大きく震わせる。 お互いに躰を弛緩させながら、ふたりは楽園へと向かった。 意識がぼんやりと戻っても、ゆきは息を激しく乱していた。 「……ゆき、平気か……?」 高杉が低い声で心配そうに囁いてくる。 ゆきは汗が滲んだ高杉の顔を愛しく触れる。 「大丈夫です……」 ゆきが微笑むと、高杉は強く抱き締めてくれた。 「無理は余りするなよ……」 「大丈夫ですよ。今は幸せな気持ちしかないですよ。本当に……」 「……ゆき……」 高杉はゆきの唇に甘くキスをしてくる。 甘いキス。 幸せの象徴だと、ゆきは思わずにはいられなかった。 高杉の腕のなかで、ゆきは甘える。 こうしていると、別れる日が来ることなんてないのではないかと、思わずにはいられない。 高杉とは離れ離れになりたくない。 だが、それぞれ、ちがう時空に生まれついてしまった。 こうして人生が混じりあうことが、ありえない二人だったのだ。 なのに、こうして出会ってしまった。 互いに同じ時空に存在出来ない筈なのに、存在してしまっている。 同じ時間にいるだけでも感謝しなければならないというのに、更なるものを求めてしまっている。 ずっと一緒にいたい。 ずっとふたりで時間を共有したいと思う。 どれぐらいの時間がふたりに許されているかは、解らない。 だが、出来る限り一緒にいたかった。 ゆきは、高杉の腕のなかにいられるこのひとときを大切にしながら、更に逞しい胸に頬を寄せて甘える。 すると高杉は、ゆきの髪を愛しげにゆっくりと撫で付けてくれた。 こうされていると本当に幸せで、自分達が永遠に一緒にいられるのではないかと、つい思ってしまう。 それが難しいことぐらいは、ゆきには充分過ぎるくらいに分かっていた。 だからこそ、何も言えなかった。 高杉もきっとそうなのだろう。 切ない愛情が痛いぐらいに感じられた。 元々寡黙なひとではあるが、更に寡黙になったような気がした。 きっと言えないのだろう。 だが、それはゆきも同じことだった。 何も言えない。 だが、この静かで温かな愛情を今だけでもしっかりと感じていたかった。 自分達だけが共有できる、尊いものなのだから。 「……ゆき……」 愛しているという言葉の代わりに、高杉はとても透明で美しいキスをくれる。 こんなに甘いキスは他にはない。 ゆきにとっては、泣きそうなぐらいに美しいキスだった。 出来ることなら一緒にいたい。 だがそれは、運命という名前の、どうにもならないものしか解らない。 今までは、自分の力でここまでやってきた。 ゆきは自分の力で頑張るということを、この時空で学んだ。 だから自分達の手ではどうにもならないということが、もどかしくてしょうがない。 だが、逆を言えば、自分たちの手ではどうしようもないところまでは、頑張ったということなのだ。 これにはゆきは誇りに思った。 こんなに誇らしいことなど、他にあるのだろうか。 頑張れるところまで、頑張ったのだから、後は任せてしまおう。 そんな気持ちが、ゆきを支配して行く。 だから今はリラックスして、総てを高杉に預けて、その愛に殉じようと思った。 高杉はゆきを抱き締めながら思う。 ゆきを本当の意味で幸せにすることは、自分に出来るのか……? 答えは否だと解ってはいるのに、それを認めることが、高杉には出来ない。 自分達の手をこえたどこかで、ゆきと生涯を通じて一緒にいられる何かが見つかるのではないかと、思わずにはいられない。 見つけられるものであるなら、見つけたい。 今までも、ゆきと一緒にいれば、想像以上に良い奇跡がもたらされてきたのだから。 だからここは信じるしかない。 天海との決戦が終われば、最高に素晴らしいと思える答えが見つかることを。 ゆきを抱き締めていると、同じように思っていることを、感じられた。 ゆきもまた、素晴らしき愛の奇跡が起こるのを信じて、それを待っているのだと。 ふたりの想いが重なっていれば、きっと大丈夫だ。 奇跡は起こる。 たまから今は、お互いに温かで情熱的な素晴らしき愛に身を委ねたら良い。 心を重ねて、たゆたゆと愛に漂う。 高杉はありったけの愛を込めると、ゆきにキスをする。 ふたりは同時に目を閉じると、幸せな微睡みに総てを任せる。 本当にこの瞬間の幸せが永遠になるように祈りながら。 |