*溢れる想い*


 小松にプロポーズをされて、ゆきは驚かずにはいられなかった。

 それはもちろん、嬉しい驚きではあるが。

 まさか、こんなにも早くプロポーズをして貰えるなんて、ゆきは思ってもみなかった。

 本当に嬉しい。

 嬉しすぎてドキドキしてしまい、どう反応して良いかが解らないぐらいだ。

 だが、小松と一緒にいたいのは確かだ。

 これ以上熱い想いがないのではないかと思うぐらいに。

「……私を帯刀さんのお嫁さんにしてください……」

 ゆきは言葉を一所懸命かき集めて、なんとか呟いた。

 だが、自分でも、もっと気のきいた言葉に出来なかったのかと、つい反省してしまう。

「……有り難う、ゆき……」

 小松は静かに呟くと、ゆきを、柔らかく強く抱き締めてくれる。

 とても頼りになるしっかりとしたボディラインに、ゆきは総てを預ける。

 小松に抱き締められるだけで、最高に幸せで、そして満たされる。

 何処か安堵すら感じる。

 今までずっと甘えていたのだろうと、改めて感じずにはいられない。

 ゆきは幸せな気持ちになりながら、ギュッと小松を抱き締めた。

 甘えるように抱き締めたからか、小松がクスリと笑う。

「どうしたの?」

「こうしていると、とても安心します。帯刀さんをいっぱいにしているんです。帯刀さんが最近足りなかったから、こうしていっぱいにしておかないと、私はまた動けなくなってしまいますから……」

 ゆきが、満たされた幸せな気分で呟くと、小松は背中を優しく撫で付けてくれる。

「これからは、そんなにも気にしなくても大丈夫だよ。結婚してしまえば、毎日、一緒にいられるのだからね……」

 小松は柔らかい声で呟くと、ゆきの背中を何度も撫で付けてくれた。

 いつも小松には抱き締めて、支えて貰っているばかりだ。

 自分もちゃんと支えられているのだろうか。

 ゆきはそこが不安になってしまう。

「……いつも私が帯刀さんにいっぱい支えられているような気がします……。私だけが支えられていて良いのかなって、つい思ってしまいます」

 やはり、これからは同じ人生を歩いて行くのだから、支えられているだけではいけない。

 ゆきが小松を積極的に支えていかなければならない。

 だが、それがなかなか難しい。

「……帯刀さん、私、今まで帯刀さんを全く支えられていないなあって……。結婚する以上は、帯刀さんを支えていきたいって思っています……。だけど、どうしたら帯刀さんをささえられるんだろうかって思ってしまいます……。帯刀さんのこと支えたいのに解らないだなんて、奥さん失格かな……」

 すると小松は更にゆきを強く抱き締めてくれる。

「……そんな下らないことを心配しないの。君は今でも私をしっかりと満たしてくれているし、支えてくれているよ。だから、心配しなくても大丈夫だから……」

 小松はゆきを抱き締めながら、額に甘いキスをしてくれる。

「私は君に沢山癒されているよ。君がいるからこそ、こうして仕事を頑張ることが出来る。だから、ゆき、君はそのままでいてくれたら、良いから……」

 小松はそのまま唇をゆっくりと近づけてくる。

 そのまま甘くて情熱的に、唇を重ねてくれた。

 こうしてキスをしてくれるだけで、ゆきは言葉では表すことが出来ないぐらいに満たされる。

「……ゆき、ご両親には早急にご挨拶はする。私は君を今すぐにでも妻にするよ。結婚式は挙げるけれど、そこまでは待てないからね。一緒に住むほうが先になってしまうけれど、それで、良いね。新婚旅行のほうが、式よりも早くなるかもしれないけれどね……」

 小松は、ゆきに自分の額を着けながら、じっと見つめながら甘く囁く。

「私は今すぐにでも君と一緒に暮らしたいとは思っているけれども、君も君のご両親も、もう少しだけ一緒にいたいと思っているだろうからね……。そこはそれなりに譲歩はするけれど、余り譲歩は出来ないかもしれないね」

 小松はゆきにキッパリと言い切る。

 それだけ一緒にいたいと思ってくれている。

 ゆきはそれが嬉しかった。

「両親は、もう帯刀さんにあげたから良いとか言っていますよ」

「そう、だったら話は早いかもしれないね」

 小松はフッと艶やかな笑みを浮かべると、ゆきの手をしっかりと握り締めた。

 こうしていると、本当に必要とされていると感じられて、ゆきは満たされた気持ちになる。

「……ゆき、うちに行こうか?この週末は、君を離さないと決めているから」

「こんなカジュアルな格好で構わないですか?」

 ゆきは今更ながら、自分の格好を気にしてしまう。

 恥ずかしくてしょうがない。

「私は気にしないよ。それに君は本当に鈍いね。全く気づかないだなんて……。ま、その方が私には都合が良いけれどね」

「……え?」

 ゆきは、小松が何を言っているのか解らなくて、思わず目を見開いて、その表情を読み取ろうとした。

「いいの。君はそのままで。私はその格好、嫌いじゃないからね」

「はい」

 小松が嫌いじゃないと言ってくれるのは嬉しかったが、ほんの少しだけ釈然としなかった。

「ゆき、行こうか。今日は君をお持ち帰りするよ。良いよね」

「はい……」

 ずっと小松と一緒にいられるのが、嬉しくてしょうがない。

 ゆきはほんのりとした恥ずかしさを感じながらも、小松の手をギュッと握り締めた。

 そのままゆっくりと駐車場まで歩いていく。

 これからは、逢えないことに対して不安にならなくて良い。

 それが、ゆきには何よりも嬉しい。

 駐車場まで行くと、小松はゆきをエスコートしてくれる。

 それだけで嬉しい。

 人生もずっとこうやってエスコートをしてくれるのに違いない。

 そう思うと、幸せが込み上げてくる。

「……ゆき、私から離れないように。これからもずっと……。解った」

「はい。絶対に離れませんから」

「良い返事だよ。君は本当に期待通りの子だ……」

 小松はフッと艶やかな笑みを浮かべると、ゆきの頬に唇を掠める。

 嬉しくて恥ずかしくて、ゆきはつい真っ赤になってしまう。

 小松だからこそときめくことが出来るのだ。

 これからは不安にならなくても構わない。

 小松のそばにいることを、とても素晴らしい形で認められたのだから。

 愛する人の横で寄り添えば良い。

 堂々と幸せに。

 ゆきはにっこりと微笑みながら、小松を見上げる。

 すると小松もまた笑顔で返してくれる。

 求めていた幸せがここにある。

 ゆきは、小松のそばにいられる幸せを強く感じていた。


 





マエ モドル ツギ