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うとうとと、まどろんでいると、小松に肌を触れられるように感じた。 柔らかく優しく触れられて、肌が沸騰してくる。触れられれば、触れられるほどに、敏感になってくる。 ゆきは鼓動が甘い暴走を始めるのを感じながら、ゆっくりと目を開けた。 「……帯刀さん……」 「ゆき、君を私色に染めるのに、物足りないからね……。もっと、もっと、私色に染めたいからね」 小松は掠れた艶のある声で囁きながら、ゆきのウェストからヒップにかけてのラインを、ゆっくりと撫でていく。 それだけで呻き声にも似た甘い声が響き渡る。 「……君の身体は、もっと私色に染まりたいと叫んでいるようだね」 小松はくすくすと笑いながら、甘く囁いてくる。本当に楽しそうだ。 もう、充分過ぎるぐらいに小松の色に染められていると思っているのに、まだまだ足りない。 「……ね、私色に染められたい……?」 小松は耳朶を甘咬みしながら、ゆきに囁いてきた。 囁きだけで、背中がゾクリとするぐらいに感じてしまう。 ゆきは真っ赤になりながら、潤んだ瞳を小松に向けた。 「……イジワル……」 「……意地悪ではないでしょ?」 小松にくすくすと笑われて、ゆきは返す言葉がなかった。 「……ゆき。君を私色にもっと染め上げるよ」 まるで調教されるようにキスをされて、ゆきは降参する。 小松を抱き締めると、ゆきはそのまま艶のある小松色の絵の具に、どっぷりと染まっていった。 何度も愛されて、ゆきは疲れを手にして、心地好い眠りに落ちた。 細胞レベルで、いや、エネルギーのレベルまで、総て小松色に染め上げられている。 そんな幸せを感じながら、ゆきは眠りに落ちる。 いつか、小松を自分の色に染め上げられれば良いのにと、思いながら。 ゆきが眠った後で、小松はその華奢で柔らかな身体を、優しく抱き締める。 「……無理をさせてしまったかな?ごめん……。だけどね、無理をさせたくなってしまうぐらいに、君は魅力的で、私色に全力で染めたくなるんだよ……」 小松はゆきの瞼にそっと口付ける。 「……君は、私色に染まっていると思っているだろうけれど、本当は、私が君色に染め上げられているんだよ……。君色に染まっているからこそ、君を私色に染めたくて仕方がなくなるんだよ?それを忘れないで……」 小松は、ゆきへの愛しさが溢れてしまいどうしようもなくなると感じながら、ゆっくりとその温もりを感じた。 「……ゆき、愛しているよ……」 小松は、眠るゆきの唇に柔らかくキスをすると、目を閉じる。 最高に素晴らしい夢が見られると感じながら。 身体が痛むのに幸せな痛みで、何だかほわほわとした気持ちになる。 もう何度も経験した幸せな感覚。 そう、小松と過ごした夜に、いつも感じる感覚だ。 とても良い気持ちだ。 ゆっくりと目を開けると、白いカッターシャツが眩しい小松の姿が、視界に入ってきた。 現実が戻ってくる。 昨夜の、甘くて淫らで幸せな時間が甦ってきて、ゆきは赤面する思いだった。 泣きたくなるぐらいに恥ずかしくなる。 慌てて上掛けを引き上げようとして、小松に笑われてしまった。 「……ゆき、大丈夫だよ。時間はまだあるし、それに隠すなんて今さらでしょ?」 確かに小松の言う通りではあるのだが、恥ずかしいのは確かだ。 本当に恥ずかし過ぎてどうして良いのかが分からなかった。 「……ほら、シャワーを浴びて。朝食を持ってきて貰うからね。君がドレスに着替える前の服を持ってきて貰ったから、それに着替えると良いよ」 「……はい」 昨日のドレスを着るのは流石に恥ずかしいし、合わない。それ以前に、あのドレスは使い物にはならないが。 ゆきは小松からガウンと洋服を受け取る。 恥ずかしくて、小松をまともに見ることが出来なかった。 ゆきは小松に背中を向ける。 「……あ、あの、帯刀さんっ、今からガウンを着るので、あちらを向いて頂けると嬉しいです」 やはり、身体で愛し合う関係だとはいえ、恥ずかしくてしょうがない。 「今さらでしょ?」 「……今さらじゃないです……」 「だって、私は君の身体を隅々まで知っているけれどね」 からかうように言われて、ゆきは更に恥ずかしくなってしまった。 「お願いします」 ゆきが懇願するように言うと、小松は眉を上げて、わざと溜め息を吐く。 「……しょうがないね。ほら、後ろを向くよ」 「……有り難うございます。帯刀さん……」 ゆきは念のため小松に背中を見せて、ガウンを素早く羽織る。恥ずかし過ぎてどうにかなりそうだ。 白い肌には、小松がたっぷりと刻んだ所有の痕があり、愛するひとの色に染め上げられているのが解った。 幸せだけれども、それが一番恥ずかしかった。 ガウンを着て振り返ると、既に小松がこちらを見ていた。 「……ズルい……」 「君は私のものだからね。その綺麗な背中を見たいと思うのは、当然のことでしょ?」 小松が余りにしらっと言うのが恥ずかしくて、たまらなかった。 ゆきは慎重にベッドから下りて、着替えを持ってバスルームに向かう。 脚の間がほんのりと痺れて、少しだけ違和感がある。 愛された証。 嬉しくて、恥ずかしい瞬間だった。 シャワーを浴びて、服に着替えてバスルームを出ると、美味しそうな朝食が運ばれていた。 「ちょうど良い頃合いだね。朝食を食べようか」 「はい」 ふたりで朝食を食べる。 朝食を一緒に食べる行為はいつまで経っても馴れない。 どこかセクシャルな感じがするからだろう。 「ゆき、今日は休みだからゆっくりで大丈夫だよ」 「はい、有り難うございます」 「何かしたいことや、行きたい場所はあるの?」 「……いいえ。帯刀さんと一緒ならどこでも……。一緒にいられるのが大事なので、本当に場所は気にしませんから」 ゆきはにっこりと微笑む。行きたい場所がないからではなく、本当に小松のそばにいたいからだけなのだ。 「……私色に染まっているね。良い子だね」 小松はフッと甘く幸せそうな笑みを浮かべる。 その笑顔が魅力的で、ゆきは嬉しい。 「帯刀さんの色に染まっていますよ。だから、帯刀さんから離れられないですから覚悟してくださいね」 ゆきが微笑みながら言うと、小松はフッと笑う。 「……そうだね。私も君から逃げられないようだね」 小松は柔らかく艶やかに微笑んだまま、ゆきに顔を近付けてくる。 耳許に唇が近づいて、ゆきは心臓が飛び出てしまうぐらいに恥ずかしかった。 「……私も君色に染まっているようだからね……」 小松の囁きに、ゆきは蕩けてしまい、幸せな鼓動を高める。 アナタイロに染まる。 それは、あなたをワタシイロに染めること。 |