*のんびりデート*


 小松の家にお泊まりをした朝は、心が澄んで満たされている。身体もエネルギーが満ち溢れている。

 そのせいか、いつも目覚めはスッキリしているのだ。

 今朝は特に、のんびりと眠れるから、余計に幸せな気持ちに浸れるのかもしれない。

 幸せでつい笑みが溢れてしまう。

 傍らで、ゆきを護るように抱き締めて眠ってくれている小松を見つめる。

 幸せすぎてつい笑顔でになってしまう。

 小松を見つめるだけでゆきは幸せだ。

 本当になんて綺麗なのだろうかと、思わずにはいられない。

 綺麗だなんて言ったら、きっと小松は怒るだろうが、ゆきにとってはそれしか思い浮かばない。

 精悍な美しさといはうのは、小松だけが持ち合わせているものだと、思わずにはいられない。

 ゆきがじっと小松を見つめていると、ゆっくりと小松の瞳が開かれる。

 こうしていると、本当に綺麗だ。

 眠れぬ森の美男だと思ってしまう。

「……ゆき、何、にやにやしているの?」

「え、あ、あの、帯刀さんの寝顔が見られて嬉しいなって思って……」

「そう……」

 小松はあっさりとした返事をすると、ゆきをじっと見つめる。

 小松に見つめられると、ゆきはドキドキし過ぎて、おかしくなりそうだ。

 こんなにもドキドキするのは、小松だけだ。

「間抜けな顔をしているね。君は」

 くすりと笑われて、ゆきは耳まで真っ赤になる。

 確かに小松に見とれていたのは事実だ。みとれている時のうっとりした顔は、さぞかし間抜けな表情だったろう。

 恥ずかしい。

 ゆきが百面相よろしく、色々な表情をしていると、小松は指先を瞼に伸ばしてきた。

「……あ」

「瞼が少しだけ腫れているね……」

 寝起きの浮腫んだ顔であることに気付かされて、ゆきは顔を隠そうとした。

「隠さないで」

 小松は、サッとゆきの手首を掴むと、フッと微笑む。

「昨日は、私が随分と君を追い詰めて泣かせてしまったからね……。だから、瞼が少しだけ腫れているんだよ」

 小松は満足そうに笑うと、ゆきのフェイスラインをゆっくりとなぞった。

「……可愛いね。君は……」

 小松はクスリと笑うと、ゆきのほんのりと腫れた瞼にキスをする。

 官能的な甘さがたっぷりと詰まったキスに、ゆきは肌の細胞が活性化してゆくのを感じた。

「ゆき、瞼の腫れを治す方法を、教えてあげようか?」

「帯刀さん!?」

 小松はゆきを支配するように組み敷くと、その唇に軽くキスをする。

 折角着たパジャマを、丁寧に脱がし始めた。

「……え?あ、あの、帯刀さんっ、あ、朝ですよっ?」

「そんなことは関係ないよ……。君が朝から可愛いから悪い。私の心と身体に火をつけたことの責任を取って貰うからね。覚悟して……」

「え、あ、あのっ!?」

 ゆきはジタバタと手足を動かして抵抗をするが、小松は全く動じることはない。

「諦めなさい。それに、愛し合っている間に、君の瞼の腫れは治るよ」

「な、治らないですよ……。あっ……!」

 ゆきが抵抗を試みても、結局は、小松の術中に堕ちてしまう。

 熱くて激しい朝の始まりだった。

 

 昼はふたりでのんびりとゆっくりする。

 ソファに並んで座って本を読んでいると、ゆきの携帯電話が鳴る。

 直ぐに取ると、瞬からの着信だった。

「あ、瞬兄、あ、うん。お母さんのプレゼント?」

 ゆきが瞬と話をしていると、小松は切れるような眼差しを向けたかと思うと、ゆきの脚にひざずいたかと思うと、雨のようなキスをする。

 つい感じてしまい、電話に集中出来ない。

 ゆきは堪らなくなって、ソファから立ち上がると、話を続ける。

 すると、小松は追いかけてきてゆきを強引に引き寄せると、首筋に何度もキスをしてきた。

 くすぐったいのに、甘くて激しいキスに、震えが走る。

 小松から逃れようと身体をずらして、話を続ける。

「……すぐ終わりますから……」

 軽くたしなめるように言ったが、小松の甘い攻撃は一向に終わらない。

 ゆきは困りながらも、小松の官能的なイタズラに夢中になってゆく。

「うん、瞬兄にお任せするよ。だから……。また、お話……」

 ゆきが瞬と話そうとすればするほどに、小松のキス攻撃は凄さを増してくる。

 唇を塞がれて、何度も深いキスが下りてきた。

 そうなるとゆきもキスに夢中にならずにはいられない。

 息が出来なくなるようなキスに、ゆきは話せなくなる。

 いつのまにか、小松に抱きついてキスをしてしまう。

 キスに応えてしまう。

 夢中になり過ぎる。

「ゆき、おい」

 遠くに瞬の声が聞こえるが、まるで自分と別世界にいるような響きがある。

 ゆきの世界には、小松しかいなくなる。

「……嫌じゃないでしょ?」

 低い声で囁かれて、ゆきの心が蜂蜜のように、とろとろに蕩けて、小松のキス以外は何も要らなくなる。

 何度もキスを繰り返した後、小松はゆきの携帯電話を切ってしまう。

 そのままキスをしながら、ふたりはソファに倒れこむ。

 何度も何度もキスをしても足りないと思ってしまう。

 やがて、小松の手によって、器用にもニットワンピースがたくしあげられてゆく。

 止められないし、止まらない。

 携帯電話が再び鳴る。

 だが、もう出ることなんて出来ないぐらいに、小松に夢中になった。

 小松と何度も愛情を確認しても、満たされることはない。

 もっと欲しくなってしまう。

 小松中毒だ。

 恐らく、一生、中毒であり続けるのだろう。

 何度も何度も、お互いの情熱を確かめるようにキスをする。

 頭の中が小松でいっぱいになった頃に、ゆきはようやく唇から解放された。

 潤んだ瞳で見つめながら、ゆきは小松を抱き寄せる。

「……私のことしか考えられなくなったでしょ?」

 小松は低いトーンで悪魔のように甘く囁く。

「……考えられないです……」

「そう。私のことだけを、考えれば良いんだよ。君は……」

 小松は低い声で意地悪に言い放つと、再びゆきを愛し始める。

 ゆきは熱い愛撫に身を委ねながら、小松に溺れてゆく。

 これ以上の甘美な堕落はないと思いながら。

 

 結局、ゆっくりするというのは、小松と愛を深く交わすことと同じ意味なのではないかと、ゆきは思った。

何度か愛されて、ゆきはすっかり甘い疲れを覚えていた。

「疲れた?」

「帯刀さんが一番ご存知だと思いますが」

「そうだね。だけど、今夜もまた疲れさせてあげるよ。たっぷりとね」

 小松に堂々と宣言され、ゆきはからだが震える。

 翌朝は全く起きることが出来なかったことは、言うまでもなかった。




マエ