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ゆきは様々なことを思い巡らせる。 静かでロマンティックなクリスマスを迎えるのも素敵だろう。 小松とふたりきりの初めてのクリスマス。 想像するだけで、テンションが上がる。 ゆきは、色々と考える。 クリスマスに、手作りのクリスマスケーキを食べるのが良いだろうか。 クリスマスがどのようなものか、経験したことがない小松のために、静かで温かでロマンスがたっぷり含まれたものが良いだろうか。 ローストチキンを手作りするのも良いかもしれない。 ゆきは、すっかりふたりきりのホームクリスマスを思い、幸せな気持ちになっていた。 クリスマス前のデートは、イルミネーションを楽しむロマンティックなものだ。 夜のデートはなるべく大人びて見えるように、お洒落を頑張ってみる。 小松と一緒にいて、兄妹のように見られるのが嫌だった。 恋人なのに。 堂々と釣り合えるようになりたいと、ゆきは常に思っている。 今夜は、イルミネーションが美しい通りをふたりでのんびりと歩いてゆく。 それだけでもとっておきの時間だ。 小松としっかり手を繋いで、のんびりと歩いてゆく。 「……しかし、まばゆいね。確かに綺麗だけれど、情緒はないね」 「宝石箱をひっくり返したみたいですよ」 「君はこういうのが好きなの?」 小松は達観しているかのように、呟いた。 「女の子は好きですよ。だけど、静かなロマンティックにも憧れています」 「そうだね……。君は静かにしている場所で、私に抱き締められるのが大好きだからね」 小松に指摘をされて、ゆきは恥ずかしくて真っ赤になってしまう。 静か場所で小松に甘えるのが今は好きだ。 最初は恥ずかしくて堪らなかったが、今はとても素敵な気持ちを抱くことが出来る。 ドキドキしているのに、とても安らぐ。 不思議な感覚だ。 ゆきにとっては、とても幸せな感情だった。 「帯刀さんと一緒に、こうしてイルミネーションの海を歩くのは幸せですよ」 幸せで本当に充たされた気持ちになる。 何も要らない。 傍に小松がいれば、ゆきはそれだけで幸せだった。 「……本当に幸せですよ……」 ゆきがうっとりと魂の底から呟くと、小松は身体をしっかりと引き寄せてくる。 「ゆき。そんなに可愛いことばかりを言っていると、本当に連れて帰りたくなるよ……」 小松は静かに呟くと、ゆきの手を更に強く握り締めてきた。 痛いほどの強さに、ゆきは一瞬、幸せな気持ちでいっぱいになり、泣きそうになった。 「今夜は食事に来ているからね。食事に行こうか」 「はい」 ゆきは小松に笑顔を向ける。 すると小松も笑顔を返してくれた。 ロマンティックが溢れている。 ゆきは幸せすぎて、そのまま小松の肩に凭れて、しっかりと甘えた。
デートは、素敵だった。 小松は、自分の最低限のスタンスを守りながら、ゆきを楽しませるために、この時空に対応したデートをいつも組んでくれる。 それはとても幸せで、嬉しいことだ。 今夜も夜景の見えるレストランで、すてきなディナーがデートのメインだった。 「今日は本当に楽しかったです。有り難うございます」 「こちらこそ、素敵な気持ちを抱くことが出来たよ。ゆき、24日と25日は空けておいて。ふたりでクリスマスを楽しもう。23日も休みだけれど仕事を片付けなければならないからね」 「はい。嬉しいです」 「24日に迎えに行くから、そのつもりでいて」 「はい……」 小松に言われて、ゆきは素直に頷いた。 クリスマスケーキを作った。 クリスマスケーキといっても、しっかりと焼いてある、アメリカンスタイルのもので、春先ぐらいまでは充分に持つものだ。 小松へのクリスマスプレゼントにしようと思う。 流石にローストチキンを焼くことは叶わなかった。 このようなものを、持っているわけにはいかないから。 ケーキなら持つから、持ち歩いても問題はないし、一気に食べる必要もない。 自宅で待っていると、小松が迎えに来てくれた。 小松は、両親がかなり気に入っており、小松と一緒ならば、どのようなことも許可が下りる。 小松がゆきを幸せに出来るだけの愛情と、環境を兼ね備えているからだろう。 そして何よりも、小松と一緒にいると、ゆき自身が幸せであるからだ。 小松は両親に挨拶をし、ささやかなクリスマスプレゼントを贈った後、ゆきを車に乗せて、出かける。 休日のせいか、空気が清んでいて、とても透明感が溢れている。 綺麗だと。 美しすぎる。 このような日に、小松とふたりで過ごすことが出来るなんて、ロマンティック過ぎる。 素晴らしい。 「今夜はゆっくりとしよう。折角のクリスマスイブというものだからね」 小松は静かに呟くと、車を教会へと進めた。 まさか、本格的にクリスマスイブを過ごすなんて、思ってもみなかった。 本格的に、クリスマス礼拝に参加をする。 ゆきは神聖な気持ちになると同時に、このような特別な時間を小松と過ごすことが出来ることに、至福を感じずにはいられなかった。 祈りと癒しの特別な時間。 ゆきにとっても、小松にとっても、神聖で心が豊かに透明になる時間だった。 礼拝の後、小松と手を繋いで、宿り木の下に立った。 「ね、知っている?クリスマスの宿り木の伝説」 小松は宿り木を見上げながら、息を白くさせながら呟く。 「知らないです」 「クリスマスに宿り木の下でキスをすると、そのふたりは永遠に結ばれるという話」 小松は真っ直ぐゆきだけを見つめて呟く。 いつも合理的でロマンティックな伝説なんて信じていないような小松が、このようなことを呟くなんて、ゆきは思ってもみなかった。 思わず目を大きく見開いてしまう。 「随分と驚いているようだね。そうだね、私がこのようなことを言うなんて思ってもみなかったって顔をしているね」 小松はここまで言うと、くすりと笑いながら、ゆきの耳許に唇を近づけてきた。 「……ゆき、君のせいだよ?君のせいで、私はこんなにも下らないことも、信じるようになってしまった……」 小松はくすりと笑いながらからかうように呟くと、ゆきを抱き寄せる。 そして、甘過ぎるロマンティックな口づけをゆきにした。 最高のクリスマスプレゼント。 ゆきの気持ちは最高潮に甘くロマンティックに高まっていった。 |