|
小松の家で泊まるのは、いつもドキドキしてしまう。 大好きなひとと一緒に眠ると言うのは、ある意味、総てをさらけ出すことになるからだ。 だから、泊まる前日からかなりドキドキしてしまう。 ゆきは落ち着かなくて、何だか無駄に踊ってしまいそうになる。 それだけ、小松を大好きでしょうがないということなのだが。 ゆきにとっては、世界で一番ステキなひとには違いないのだから。 これはどのような時空だろうが本当に関係のないこと。 それぐらいに小松のことを、愛しているということだ。 だからこそ、お泊まりデートには、特別な意味を持っている。 外で逢って、様々な場所に出掛けたり、食事をするのも、確かに楽しくて、幸せだ。 だが、小松の家でのんびりと同じ時間を穏やかに過ごすというのは、これまた特別な意味を持っているのだ。 これは間違いない。 本当に愛し合って、信頼しあっているカップルでないと出来ないと、ゆきは常々思っているからだ。 だからこそステキな絆を感じられる、お泊まりデートは大好きだ。 とはいえ、小松に無防備な自分を晒すのは恥ずかしい。 もう十分すぎるぐらいに、無防備で恥ずかしい姿は、小松に晒してしまっているのかもしれないが、それでも恥ずかしい。 大好きなひとには、自分の一番良いところを見せたい。 そんな甘くてふわふわした恋心に、ゆきは左右される。 大好きだからこそ、きれいな部分だけを見せたい。 間抜けな部分は見せたくないと、ゆきはつい思ってしまうのだ。 恋ゆえに。 だから余計にドキドキするし緊張する。 特に夜は、世界でたったひとり小松だけに総てをさらけ出している。 安心すると同時に華やかで甘くて、ドキドキするようなときめきを、感じてしまう。 ゆきにとっては、幸せな時間だ。 だから、小松の家で泊まるのが、楽しみでもあったりする。 我ながら複雑な乙女心だと、思わずにはいられない。 ゆきは待ち合わせの場所に向かう。 今日はいつもよりも少しだけ荷物が多い。 それもまた愛嬌で幸せだ。 小松にはいつもギリギリの時間にカフェに行って、待つようにと言われている。 どうしてかはわからないが、それが、一番だとゆきも思っている。変な男に声をかけられないのも良かった。 ゆきはカフェオレを注文して、小松を待つ。 小松の会社の息がかかっているカフェだから、色々な意味で安心できた。 ゆきがのんびりと待っていると、小松がこちらに向かってくる。 「待たせたね。行こうか」 「はい」 ゆきが笑顔で返事をすると、小松はフッと微笑み、手を握り締めてくれた。 「今日はゆっくりするよ。夕食も用意してあるから」 「有り難うございます」 小松と手を繋いで、ゆきは駐車場までのんびりと歩いて行く。 「帯刀さん、夕食ぐらいなら作りますよ」 「有り難う、ゆき。だけど、今夜はゆっくりしたいからね。後片付けだとか、煩わしいものはいらないから。明日の夕食は作って貰っても構わないかな?」 「はい」 小松に食事を作るのが、ゆきは大好きだったりする。だからこそ、今夜も小松に夕食を作りたかった。 「では家に行こうか」 「はい」 小松の家でのお泊まりデート。 ドキドキとうきうきが同時にやってくる。 小松の車に乗り込んだ瞬間に、ゆきは幸せな時間が走り出したと感じた。 小松と二人きりで過ごすだけで、ゆきは幸せだ。 一緒に食事をしたり、本を読んだりするだけで、ゆきは嬉しい。 小松といられたら、何をするかなんて、そう大したことではなかった。 それはつくづく思う。 「今日はのんびりしていて良いのが嬉しいです。いつもなら夜は時計とにらめっこしないといけないですから」 「確かにね。今夜と明日の夜は二人きりでのんびりと出来るのが良いね」 「はい」 ゆきが穏やかに笑うと、小松はそっと抱き締めてきた。 「ね、ゆき、いつも荷物を持ってきて大変じゃないの?うちにある程度の荷物は置いておいたほうが良いんじゃないの?」 小松はゆきのバッグを見ながら、何事もないように呟いた。 小松の家に、泊まるのに必要なものを置く。 何だか同棲しているカップルのようで恥ずかしい。 歯ブラシや寝具などを置くことを想像しただけで、恥ずかしくて思わず目を伏せてしまう。 「そんな恥ずかしがるような間柄なの?」 小松はいきなり抱き寄せてくると、耳朶を甘咬みしながら、意地悪に艶やかに囁かれる。 「え、あ、あの……」 小松に囁かれるだけで、心臓が飛び出してしまいそうになるぐらいに、ドキドキした。 「さ、夕食を食べようか。ゆき、今夜はゆっくりゆっくりしようか……」 小松が意味ありげに言うものだから、ゆきは更に鼓動を速めた。 「……なんて顔をしているの?そんなにドキドキするようなことをしている?」 小松はゆきをからかうのを、ただただ楽しんでいるようにしか、見えない。 「からかっています?」 「さあね」 相変わらず可笑しそうにしている小松に、ゆきは拗ねる。 拗ねれば、拗ねるほど、小松はゆきをからかうのを止めない。 それがとても悔しかった。 いよいよ眠る時間。 ゆきは先にベッドに潜り込んだが、ドキドキしてしまう。 やはり大好きなひとと同じベッドで眠ることは、甘い緊張が走る。 情熱的な時間を紡ぐことを分かっていると、余計だ。 ベッドの隅で、小さくなって横たわっていると、小松がベッドに入ってきた。 優しいシャボンの香りがして、息が出来なくなる。 小松はゆきを抱き締めて、腕の中で自分と向き合わせる。 そっと唇に優しいキスをくれた。 「……おやすみ。良い夢を」 「おやすみなさい……」 小松はそのまま目を閉じて、眠りに落ちる。 ゆきは肩透かしを食らったような気分になる。 ドキドキしていた自分が、小松との官能的な時間を期待していたのだと思い知らされて、ゆきは恥ずかしくなった。 ゆきは居たたまれないような恥ずかしさに、小松に背中を向けた。 その瞬間、ゆきはいきなり抱き寄せられたかと思うと、組み敷かれてしまう。 小松との顔が近い。 整った顔が近づいてくる。 「……期待した?」 「そ、そんなことありません」 ゆきは気まずい恥ずかしさに、目を合わせられない。 「……そう?君の期待に応えないといけないね?」 くすりと笑うと、小松はゆきを情熱的に愛し始める。 結局は、小松の情熱には逆らえない。 ゆきはそのまま小松に自分の情熱を伝えた。
|