*愛あれば*


 ゆきを自分だけのものに出来た。

 なんて幸せなのだろうかと、小松は思う。

 こんなにも幸せを感じたことは、今までなかった。

 ゆきの柔らかで華奢な躰を抱き締める。

 ゆきをもう離したくはない。

 ゆきを、他の男に渡したくはなかった。

 小松はゆきの素肌に触れながら、どんなことをしてでも離さないと思った。

 たとえこの時空を捨てることになっても。

 ゆきの時空は、かなり発達していて、政治も世の中の状況も進化しているときく。

 そのような世界に身を置くのも刺激的で愉しいことだろう。

 この時空で、自分がやるべき仕事はやり終えた自信がある。

 だからこそ、次の世界に羽ばたいても良いのではないかと思う。

 それはただの理由付けで、本当はただゆきと一緒にいたいだけだ。

 ゆきを離したくないだけだ。

 いつまでも自分の腕のなかに閉じ込めていたいだけなのだ。

 だからこれは別離の行為ではない。

 これからも離したくはないと、離さないと誓うためのものなのだ。

 離す気なんて更々ない。

 ゆきの初めての男で満足なんてしない。

 ゆきの生涯で最高の男になるつもりだ。

 それぐらいにゆきを深く愛しているのだから。

 ゆきをぎゅっと抱き締めて、その寝顔にキスをする。

 甘いキスに、自分自身が酔っ払ってしまいそうになった。

「……君は本当に可愛いね」

 異性に対して、こんなにもロマンティックな気分になるなんて、思ってもみなかった。

 小松がゆきにキスをし、やわらかな躰にのんびりと触れていると、甘い声を上げながら、愛しいゆきが目をゆっくりと開けた。

 

 何だか、お姫様になったような気持ちになり、ゆきはとても気分が良い。

 甘いキスと、濃密な愛情が滲んでいるボディタッチに、ゆきの肌が熱を帯びてくる。先ほどまで、激しく濃く甘い官能的な時間を過ごしていたからか、肌は敏感に反応する。

 恥ずかしいというよりは、とても幸せだと、ゆきは感じた。

 ゆっくりと目を開けると、そこにはイタズラめいた甘い眼差しを向けている小松がいた。

「……小松さん……」

「……眼、覚めたの?」

 小松の魅惑的で色気の滲んだ声が下りてくる。

 そのまま、羽根のようにふわふわと軽くて柔らかなキスが、ゆきの唇に降りてきた。

「……目が覚めた……、というよりは、気がついたという感じでしょうか……」

 ゆきは恥ずかしくて、少しだけ目を伏せた。

 その仕草が愉しいらしく、小松はフッと茶目っ気たっぷりに笑った。

「……そうだね……。気絶してしまうぐらいに、感じてしまっていたみたいだからね」

 からかうように甘く笑いながら言われると、ゆきは恥ずかしくてどうして良いのかが解らない。

「……君は本当に可愛い」

 小松にキスされて、ゆきは幸せで幸せで仕方がなかった。

 キスをした後、ゆきは剥き出しの逞しい小松の胸に甘えるように顔を埋める。

「……小松さんと、いつまでもこうしていられたら良いのにって思います……」

「……ゆき」

 今はふたりでこうしてしっかりと抱き合うことが出来て、とても幸せではあるけれども、それが明日に続くかと言われれば、否だ。

 ゆきは異世界の人間であるから、帰らなければならないのだ。

 小松はこの世界で必要不可欠な人間だ。

 彼がいることで、この世界は良い方向で姿を変える。

 それはとても素晴らしいことだと、思う。

 だが、それは女としてのゆきにはとても残酷な現実だ。

 美しくて清らかすぎる現実。

 こうして、愛するひとに抱かれることだけでも、幸せだと思わずにはいられないのに、どうして手にした幸せよりも更なる幸せが欲しいと思ってしまうのだろうか。

 ゆきにはそれが苦しかった。

「……ね、ゆき」

 小松の声が優しくゆきに降りてくる。髪を柔らかく撫でられて、ゆきは顔を上げた。

「……私はね、これで君を離す気はないことを忘れないでくれるかな……? 君とは、これで“はい、さようなら”なんてする気はないから、そのつもりで……」

 小松はゆきのボディラインを意味ありげに指先で辿りながら、官能的に囁いた。

 胸の奥から、切なくなるぐらいの喜びが込み上げてくる。

 幸せ過ぎて、ゆきは何も考えられないぐらいだ。

「……愛しているよ、君を。私が皆の神子殿をこうしたのは、絶対に離さないと言う意味を、君に刻み付ける為だよ……。抱いた後に別れなくちゃならないなんて、そんなことは考えてはいないよ?」

「……小松さん……」

 ゆきは嬉しさの余りに瞳いっぱいに涙を貯めて、そのまま小松にしっかりと抱き着いた。

「……ずっと離れないってことを証明しようか?明日の決戦は、私たちが勝つことは決まっているでしょ?だから、絶対に勝つから、その後もずっと一緒にいることを、証明してあげる」

「……はい」

 ずっとずっといられる。

 離れない。

 愛するひとから言われると、なんて、幸せなことなのだろうかと、思わずにはいられない。

 幸せだ。

 小松に言われると、ふたりは一生放れないのだと、信じられる。

「……じゃあ、証明してください……」

 恥ずかしくて幸せな気持ちを抱きながら、ゆきは小松にねだった。

 するといきなり組み敷かれてしまい、ゆきは慌てる余りに息を飲んだ。

 小松はゆきの滑らかで柔らかな肌をまさぐりながら、再び愛し始める。

「……もう、無理ですよっ!? 体力が!」

「は? 君の躰はそうは言っていないようだけれど」

 小松はクスリと笑うと、ゆきを愛撫で追い詰めてゆく。

 小松に触れられるだけで肌は敏感になり、沸騰しそうになる。

 ゆきは熱の嵐に巻き込まれるように、再び愛の世界に引きずり込まれる。

 小松が紡ぐ愛の世界に、くらくらしながらも、自ら率先して流された。

 

 くまなく愛されて、ゆきは満たされた幸せと、気だるさに包まれる。

 小松に抱き寄せられて、ゆきはふわふわとした幸せを感じる。

「……ずっと離さないから、覚悟して?」

「はい」

 明日の戦いの結果は誰にも解らない。

 ただ戦いの行方がどうなろうとも、小松のそばにいる。

 それだけは譲れない。

 この時空に残ろうとも、元の時空に戻ろうとも、それは変わらない。

 絶対に離れない。

 ふたりは強く思いながら、お互いを抱き合う。

 ずっと一緒にいると決めたから、今まで以上に強くなれる。

 ゆきと小松はお互いに見つめあい、微笑みあう。

 刹那ではない永遠の愛を噛み締めながら。





マエ モドル