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こんなにも幸せな瞬間は他にない。 ゆきは最高の女だ。 今まで出逢ったなかでは、最高の女だ。 小松は、もう二度とゆきを離すことは出来ないと想う。 こんなにも快楽を感じたことは今までなかった。 直ぐにゆきが欲しくなる。 ゆきがゆっくりと目を開けて、自分を取り戻してゆく。 まだ、気だるい余韻に、ぼんやりとしている。 「……帯刀さん……」 可愛くも甘い声で、ゆきは小松の名前を呼んでくれる。 「……君がまだまだ欲しくて、堪らないよ……。ゆき」 小松は低い声で甘く囁くと、ゆきは真っ赤になって、はにかんだ色香が滲んだ視線を向ける。 「……あっ……!」 ゆきか甘い声を上げる。 胎内で小松が回復していることに気付いたのだろう。 ゆきは、無意識に小松を強く締め付けている。 それがたまらなく気持ちが良い。 欲望がせりあがってくるのを、小松は感じる。 堪らなくて息を乱しながら、香穂子を思いきり抱き締めた。 「……君は本当に可愛い……」 小松はゆきの唇に、とっておきのキスを送ると、再び、激しく動く。 ゆきを完全に自分のものにしたいがために。 小松はすっかりゆきに夢中になっていた。 ゆきを自分色に染め上げてしまいたいと、強く思う。 ゆきの総てを味わい尽くすように激しく動き、総てを奪うように突き上げる。 小松はこれ以上の幸福は得られないだろうと心底思いながら、ゆきを激しく奪った。 ゆきが自分の子供を産んでくれたら、これ以上の幸せはないだろう。 幸せ過ぎて、くらくらする。 それほどの幸福感を小松は感じずにはいられなかった。 妻として、ひとりの女として 小松にたっぷりと愛された。 とうとう、本当の意味で小松の妻になったのだ。 これにはゆきも言葉では言い表すことが出来ない幸せを感じた。 誰かを愛するだとか、好きになるだとかは、今まで経験したことはなかった。 だが、今、それを初めて経験したような気がする。 小松をここまで好きになった。 突然、小松の妻となった。 元々、恋だの愛だの言えない立場にあることは、分かっていた。 だが、恋だの愛だの言えるひとと、たまたま結ばれた。 幸運だと心から想う。 ゆきは、いつもよりは寝不足であるのにかかわらず、きちんと目覚められた。 流石に小松はまだ眠っている。 寝顔を見ていると、なんと綺麗な人なのだろうかと、思わずにはいられなかった。 ゆきが寝床から出ようとすると、小松に手を握り締められた。 ぎゅっと握り締められると、ゆきは思わず息を飲んだ。 「起きたの?」 「はい……」 「ゆっくり眠らせて差し上げたいのは山々だけれどね……。しょうがないね……」 小松はフッと甘く艶やかな笑みを滲ませると、身体を起こした。 「先に身支度をします。いつまでも眠ってはいられないですから」 「そうだね。だらだらしろとは言わないけれど、たまにはのんびりする時間を取りなさい……」 「有り難うございます」 「とは言っても、なかなか取れないのだろうけれどね」 小松はフッと困ったように笑う。その表情がとても甘くて魅力的だった。 「君はいつまでもそのままでいて欲しいと思うよ。いつまでも、母になっても、年を取ってもだよ」 「帯刀さん……」 小松の言葉がゆきには嬉しい。 成長はしても、変わらないで欲しい。 ゆきにとっては嬉しい言葉だった。 甘くて胸がいっぱいになる。 「成長しても、変わらないように頑張りますね」 「うん。有り難う。それが私には一番理想の君かな?」 小松はゆきにそっと甘いキスをしてくれた。 「さて、君が先に身支度を起きなければ、厳しい目で見られるかもしれないからね。私は気にはしないけれど……」 「そうですね」 小松は合理的で、かつ先見の明をもって、物事を見ている。 だが、昔から武家社会にいる者はなかなか難しいだろう。 だからこそ、こうして助け船を出してくれているのだろうと思った。 身支度を整えた後、ゆきは妻としての仕事を行う。 昨日までよりも、不思議と清々しく、そして晴れやかな気分だった。 この世界でただひとり、自分の総てを知っているひと、分かってくれるひとがいる。 その事実が、地に足をつけさせてくれた。 分かってくれるひとがいる。 それだけで、ゆきは幸せでしょうがなくなる。 このひとがいてくれるから大丈夫。 ゆきは強く思った。 小松と朝食を取った後、ゆきは恥ずかしさと晴れやかさを同居させながら、見送りにいく。 複雑な甘さが絡んだような気分だ。 いってらっしゃいませ。 昨日よりもずっと恥ずかしくて、ゆきははにかみながら言った。 小松を見送りながら、ゆきは本当に妻になったのだと、実感した。 小松が仕事に行っている間は、ゆきは色々と勉強をした。 妻としてだけではなく、小松をどうしたら支えられるかを考えながら、勉強を重ねる。 幸いにも、小松はたくさんの書物を持っており、それを読みふける。 面白くて、全く飽きなかった。 ゆきは、今まで学んだことのないようなことを、様々知ることが出来て、それが楽しかった。 何度も本を読んで、ゆきは知識として様々なものを会得していった。 ゆきは小松の書斎に呼び出された。黙って本を読んでいることが、バレてしまったのだろうか。 確かに、記帳な本を読んでいるのは事実だ。 「ゆき、こちらを」 小松が差し出したのは、まだ新しい本だった。 「もう、かなり、私の本は読み尽くしてしまったでしょ?新しい本だよ。しっかりと、読みなさい」 ゆきが本棚の本を読み尽くしていることを、小松は知っているようだった。 ただ静かに新しい本を渡してくれる。 そこには本を無断に読んでいたからと、責める様子は一切なかった。 「有り難うございます」 「しっかりと本を読んで。君には、私を様々なところで支えて貰わなければならないからね。そのためには勉強も必要だ」 「有り難うございます」 小松は、ゆきのことを支えてくれる相棒だと認めてくれている。 その事実がゆきには嬉しかった。 小松帯刀に認められる。 それはゆきにとっては、何よりも嬉しいことだった。 誰よりも小松の横にいるのに相応しい相手になりたい。いや、なるのだ。 ゆきはそう強く決意をした。 |