*ずるいあなた*


 身体の奥が熱いと感じながら、ゆきはゆっくりと目を開ける。

 小松が、幸せそうな笑みを滲ませて、ゆきだけを見つめていた。

 甘い眼差しに、こちらの心が蕩けてしまいそうになる。

 小松はフッと笑って、ゆきに唇にキスをする。

「……有り難う……」

 ギュッと小松に抱き締められて、ゆきは嬉しさの余りに涙をこぼした。

「……私こそ、有り難うございます……」

 ゆきは自ら小松を抱き締める。

「ゆき、私たちの結婚式を早急に挙げなければならないね」

「……え?」

 まさか、いきなり話が結婚に飛ぶなんて思ってもみなくて、ゆきは思わず目を見開いて小松を見つめた。

「私たちは早急に結婚しなければならないと思うけれどね。私はそうしたいけれど、君は?」

 小松は艶のある真摯な眼差しで、ゆきを捕らえてくる。

 こんな眼差しで見つめられてしまったら、逃げることなんて出来ないではないか。

 そもそも逃げる気なんてないのだけれど。

 いきなり過ぎるので、ゆきは上手く考え方がまとまらなかった。

 本当にどうして良いのかが分からない。

 ゆきはただただ驚いていた。

「……嫌なの?」

「い、いいえ。全く、嫌じゃないです……。それよりも、突然のことなので、びっくりしてしまったというか……。あ、あの、私は学生なので、そこまでの考えが浮かばなかったんです……。まだ、早いかと」

 ゆきは戸惑いながらも小松の瞳をしっかりと見つめた。

「……だけど、とっても嬉しいです。小松さんが私のことを真剣に考えて下さっていたので。それはとても嬉しいです」

「相手は君だからね。ちゃんと、大切にして、今まできたんたよ。だけど、もう私が限界かもしれない……」

 小松はそれだけを言うと、ゆきを再び組み敷くように抱き締めてくる。

 しっかりと抱き締められて、ゆきは息が出来ないぐらいにときめきと興奮を感じた。

「……私と結婚してくれないかな?ゆき」

 小松にストレートにプロポーズをされて、ゆきは胸が切なく高まってくる。

 ドキドキして、華やかな気持ちを抱きながら、ゆきは胸が幸せでいっぱいになった。

「ゆき、君の返事が欲しい」

 小松にとても近いところまで顔を近づけて来られる。

 きっと、ゆきがプロポーズを受け入れることを分かっていて、こうして迫って来るのだろう。

 プロポーズ。

 その響きだけで、ゆきはドキドキしてしまった。

「ゆき?」

「……はい。小松さんと一緒になりたいです」

 それはずっと変わらない気持ちであることは分かっていたから、ゆきは素直に返事をした。

 小松が好きだと言う気持ちは、きっと一生変わらないという自信があるから。

「君は学生のままで変わらないから……。直ぐに結婚準備をしなければね」

 小松は幸せそうに呟くと、ゆきの唇に甘いキスをくれた。

「良いのですか?そんなに急いで……」

 ゆきが戸惑いの声をあげると、小松は確信した、艶のある笑みを浮かべてくる。

「ゆき。私は、君の胎内に、私自身を放ってしまった。君はもう私の子供を身ごもっているかもしれないからね」

 小松は何処か幸せそうに言うと、ゆきを思いきり抱き締めてくる。

「……勿論、わざとだよ。君を私のものに完全にしてしまうには、一番良い方法でしょ?」

 しらっと小松は言うと、ゆきの頬を柔らかく撫でる。

「か、確信犯ということですか……?」

「まあ、そういうことだね。計画的に君を自分のものにしたという点ではね……」

 小松はくすりと微笑むと、ゆきの身体をまさぐってゆく。

「……こ、小松さんっ!?」

 ゆきがいくら戸惑っても、小松は再び身体を愛し始める。

「あ、あの!?」

「君をしっかりと愛さなければね……。それと、君には私の子供を産んで貰いたいからね……」

 小松は微笑むと、ゆきをしっかりと愛し始めた。

 そのまま愛の嵐に、ゆきは巻き込まれた。

 

 翌朝、ゆきは幸せで少し怠い身体を愛しく思いながら、目覚めた。

「ゆき、目が覚めた?身体は大丈夫」

 小松が柔らかな笑みを浮かべながら、ゆきを見守るように見つめてくれる。その姿がとても優しい。

「はい、大丈夫です……」

「それは良かった」

 小松はゆきをもう一度抱き締めると、身体をゆっくりと起こしてくれた。そのまま、甘いキスをくれる。

「ね、ゆき、私と結婚したら、毎日、幸せにしてあげるよ。どう、気に入った?」

 小松の言葉に、ゆきはその身体を抱き締める。

 本当にズルい。

 ゆきが断ることが出来ないのをわかっていて、周到な計画を練るのだから。

「……ズルいですよ、小松さん。その計画に素直に乗る私もかなりズルいですけれど……」

 ゆきはくすりと笑うと、小松にもっと抱きつく。

「……そうだね、お互い様だ」

 ふたりはお互いに笑いあうと、もう一度キスをする。

 幸せをたっぷりと感じながら。

 これからもずっとずっと幸せだということを、確信して。

 ふと、左手薬指が光輝くのが見えて、ゆきは思わず手を大きく広げた。

 すると、そこには、ダイヤモンドの指輪が目映く輝いている。

「……指輪……」

「そう、婚約指輪。私はここまでちゃんと周到に用意をしていたんだよ。君はそれにまんまと捕まってしまったということかな」

 小松は確信犯よろしく、ニヤリと微笑んでいる。

「捕まりたい?一生ね」

「勿論、一生捕まりたいです。小松さんも、一生。私に捕まっていて下さいね」

「お手柔らかに頼むよ」

 小松はフッと笑うと、ゆきの頬を柔らかく撫でてくる。

「ゆき、愛しているよ。もう離さないから」

「はい、私も愛しています。離れませんから」

「ああ」

 ふたりは唇を重ねる。

 こうしてキスをしていると、ゆきは世界で一番幸せな女性になれたような気がした。

 ずっとずっと好きだったひとと幸せになれる。

 それは本当に嬉しい。

 ゆきは幸せな気持ちを抱きながら、小松を見上げた。

「ずっと好きでした。これからもずっと好きです」

「私も、五年間も君を狙って色々と計画を立ててきたからね……。だから君を絶対に離さないから……」

 小松の言葉に、ゆきは目を見開く。

 甘い幸せな驚き。

 まさか、そんなにも好きでいてくれたなんて思ってもみなかった。

 嬉しくてゆきはつい涙ぐむ。

「はい。ずっと捕まっていますから」

 これからはバタバタと結婚準備が始まる。

 だが、ズルい小松と一緒だったら、ゆきは頑張れるような気がしていた。





マエ モクジ