*大みそか*


 今年も間もなく終わる。

 小松と過ごす、初めての大晦日。

 大晦日は、例年なら大好きな家族と過ごすが、今年は、愛するひとと過ごす。

 とても幸せな時間だ。

 ゆきは、小松に誘われて、大晦日は彼の家で一緒に過ごす。

 静かに過ごす大晦日だ。

 小松の家に向かうのは、ついドキドキしてしまう。

 二人きりで一晩中過ごす。

 甘い緊張でどうにかなりそうだ。

 母親に持たされた、お節料理を片手に、ゆきは小松の家を訪ねた。

 小松の家のインターフォンを鳴らす。

「はい、ゆき、入って」

「有り難うございます」

 ドアが開かれて、ゆきはゆっくりと小松の家に入った。

 すると小松は、落ち着いた表情で迎えてくれた。

「よく来たね。どうぞ」

「はい」

 ゆきは、緊張しながら、ぎこちなく小松の家に入る。

「帯刀さん、これ、お節料理です。母が一緒に食べなさいって」

「有り難う」

 小松は重箱を受け取ると、丁寧にテーブルの上に置いた。

「さて、今日はゆっくりとしましょうか」

「はい」

 小松はゆきの手をしっかりと握り締めると、和室へと向かった。

「こちらの時空の正月の過ごし方は、私の時代とは随分と変わっているかと思っていたけれど、そうでもなかったんだね。同じように過ごせば良いから、楽だね。ただ、カウントダウンはないけれどね」

「そうですね」

「ただ、今年は静かに君と二人だけで、過ごしたいね……。だから、君を読んだんだよ」

「私も小松さんと過ごせて嬉しいです」

 ふたりで共に過ごすことが出来るのが嬉しい。

 ゆきは穏やかさと華やかな気持ちを持ち合わせ、不思議な幸福感を感じていた。

「年越しそばも用意しなければなりませんね」

「だったら、買いに行く?」

「はい」

 小松は素早く準備を終えると、ゆきと手を繋いで、家の外へと向かう。

 相変わらず仕事が素早い。

「さあ、行こうか」

「はい」

 小松はゆきの手を引いて、自宅近くの商店街へと向かった。

 大晦日の空気はとても澄んでいて、気持ちが良い。

 寒さも増しているが、張りつめた空気がとても気持ち良い。

「ゆき、寒いの?」

「大丈夫です」

 ゆきは笑顔で答えたものの、小松は眉を潜めた。

「余り無理はしないの。ほら、私のマフラーをしなさい」

 小松は首からマフラーを外すと、ふわりとゆきにかけてくれる。

 ふんわりと小松の白檀のような良い香りをさせている。

 とても良い香りで、ゆきはドキリとした。

 胸がいっぱいになる。

「……これで寒くないでしょ?」

「有り難うございます」

 ゆきはほんのりと頬を薔薇色に染め上げながら、小松を見上げた。

「さ、年越しそばを買うよ」

「はい」

 小松とふたりで、年の瀬の商店街をぶらぶらと歩いてゆく。

 こうして、大晦日ならではの光景を、小松とふたりで歩いて見つめることが出来るのが嬉しかった。

 世話しなくも幸せな風景を見ながら、小松と手を繋いで年末の町を歩く。

 なんて幸せで暖かい。

 ふたりで年越しそばを買い、荷物は小松が持ってくれる。

 小松は、薩摩隼人でありながらも、ゆきには優しい。

 それがとても幸せだ。

「さてと、買い物も済んだし、帰るよ」

「もう少しだけ、一緒に歩きたいです。小松さんと一緒に歩けるのが、とても幸せなんですよ。歩いているだけで、楽しいんです」

「君はしょうがない子だね。少しだけだよ」

「はい!帯刀さん、大好きです」

「本当にしょうがないね」

 小松は呆れ果てるような溜め息を吐きながらも、ゆきの手をしっかりと握り締めた。

 暫く、ふたりで大晦日の街の雰囲気を楽しんでいた。

 

 たっぷりと楽しんだ後、ふたりは家へと戻った。

「夜までは時間があるから、静かに過ごしたいね。君とふたりきりで」

「はい」

 ふたりで一緒に静かに過ごす。

 いつも小松が忙しいから、こうして、ゆっくりのんびりするのも、充実した時間だと思う。

 こんなにものんびりとして、幸せな時間は他にないのではないかと思った。

 

 夜になり、間もなく新年を迎える時間になり、ゆきは年越しそばを作る。

 和気藹々とした家族との時間も良かったが、こうして愛しているひとと過ごすことが出来ることを、ゆきは最高に幸せだと思う。

 好きな人のために年越しそばを作るのは、幸せで素晴らしい。

 小松は静かに年末恒例のテレビをじっと見つめている。

 これからもこのような時間が続けば良いと、ゆきは思う。

 毎年、毎年、重ねてゆきたいと思っている。

「帯刀さん、年越しそばが出来ました」

「有り難う」

 小松と向い合わせで、正座で畏まって年越しそばを食べる。

 テレビで、ゆく年くる年を見ながら、除夜の鐘を聞く。

 こうして、小松と静かに年を越す。

 落ち着いた時間だ。

「……もうすぐ、新しい年が明けるね」

「そうですね」

 小松は静かに微笑むと、ゆきを引き寄せる。

「帯刀さんっ!?」

「恋人同士の年越しは、こうするって決まっているでしょ!?」

「あ……」

 もうすぐ、年が変わる。

 小松の唇がゆっくりと近づいてくる。

 新しい年を迎える瞬間、小松の唇が重なる。

 甘いキスに、ゆきは蕩けるような幸せを感じた。

 唇が離されて、小松は微笑む。

「明けましておめでとう、ゆき」

「明けましておめでとうございます、帯刀さん」

 ふたりは笑顔を重ね合わせると、もう一度キスをした。

 新しい年が幸せに始まる。




マエ