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「避妊したくなかったって言ったら、お前は怒るか?」 将臣は望美と繋がったままで、細い躰を抱きしめる。 「どうして?」 「お前を行かせたくないから。離したくないから」 「あっ…!」 将臣の屹立が望美の胎内で再び熱を増し始める。 痛みよりも今度は鈍い快楽を感じた。 まだまだ凄く気持ちが良いとは言えないが、それでも充分に背中は震える。 「避妊しねぇでセックスしたの、お前が初めてだから…。お前となら、子供が出来ても幸福になれると思ったしな」 「…あっ…!」 また将臣が強くなり、望美は息を乱す。 「赤ちゃん…出来ちゃう可能性があるんだよね?」 「ああ」 「嬉しいよそれも…」 望美は喜びを笑顔に込めると、将臣もまた同じ意味を含んだ笑みをプレゼントしてくれる。 「そうなったら俺もすげぇ嬉しいな」 将臣は想いをぶつけるように、望美を抱きしめてくる。まるで望美を自分の鎖に縛り付けるかのように。 「…好きだ…! 愛している…! どこにも行くな、俺の前からいなくなるな…! 俺はずっとお前が好きだった…。ガキの頃から…」 「将臣くん…っ! あっ…!」 胎内の中で将臣の欲望や熱が暴れ出す。まるで望美を行かせないと言っているようだ。 再び深いキスを浴びせ掛けられる。将臣は舌を入れ、口腔内を擽る。 再び力を増した将臣は、望美の胎内を再び擽り始めた。 舌と欲望を同じリズムで動いていく。 先ほどよりも優しい快楽に、望美の肌は粟立つ。 全身の産毛が波立つ快楽に、逞しい背中に縋り付いた。 唇を離されて、望美は大きく喘ぐ。 「…将臣くん…好き…っ!」 将臣の瞳が、欲望と愛情できらめき、望美に愛情を光で与えてくれる。 「…愛している…っ!」 ふたり繋がったままで、激しくぶつかり合う。 何度も内壁を突き上げられて、望美は背中をのけ反らせた。将臣がそれを受け止めるようにしっかり抱きしめ、激しく奥を突き上げてくる。 「…離さないから…っ!」 「ま、将臣くん…!」 気持ちが良すぎて、涙が滲む、 激しい愛情を受け入れるのが気持ちが良い。 離れたくない。 離れられない。 望美は将臣を抱きしめる。 セックスが、こんなにも気持ちが良くて、ロマンティックで、愛が溢れているとは思わなかった。 魂がぶつかり合い、躰がぶつかり合う。 視界が揺れる。 ぐるぐる揺れて、快楽の淵に堕ちていく。 「あっ、あっ、ああっ…!」 膣が収縮し、将臣を強く締め付ける。 「…ま、将臣く…ん…っ!」 「…お前…良すぎるんだよ…」 「あっ…!」 最奥を強い欲望で突かれる。 頭の中が真っ白になるほどに激しく感じる。 「あっ、ああ…っ!」 躰が激しく弛緩し、望美は意識をぼんやりと沈み込ませた。 まだ快楽に漂っている。 将臣が静かに望美の胎内から滑り落ち、望美を鈍い快楽で刺激した。 「望美、イギリスには行くなよ。お前の夢を潰しちまうのは解っている。だけど、お前が行ってしまったら、俺の一番の夢も崩れるんだぜ」 将臣は、滑らかに熱い望美の肌を、手の平で撫でてきた。 「…将臣くんの夢って?」 「…お前と、ずっと一緒に、人生を歩いて行くこと」 将臣は更に強く望美を抱き込むと、唇を優しく重ねてきた。 将臣の言葉がすとんと心に舞い降りる。 迷う余地なんかない。それどころか、迷うことなんて出来やしなかった。 「…私の夢は…、イギリスに行くことなんかじゃないんだよ。一番の夢じゃないんだよ。一番が叶わないから…、叶えられる夢を探して叶えようとしただけだもの…」 「一番の夢は何なんだよ?」 将臣は望美を強く抱きしめ、低い声で囁いた。 「…あのね…」 愛を告白するには、鼓動が激しくなる。喉がからからになり、望美はときめく余りに窒息しそうになった。 「…だって…一番の夢は…」 恥ずかしさの余りに声が小さくなる。 「一番の夢は?」 「…一番の夢は、将臣くんの傍にいることだもの…。一生、一緒に…」 途端に、激しく抱きすくめられる。 将臣は自分の感情をぶつけるように激しく抱きしめてきた。 「…その夢を叶えようぜ」 「うん、叶えよう」 抱擁は苦しかったが、この狂おしいほどの想いが溢れ出す。 お互いに呼吸をすることすら忘れてしまいそうな恋心が激しく燃える。 「イギリスに行かないよな?」 将臣を見上げると、まるで最期の審判を待つかのように、どこか神妙で真面目腐った顔をしている。 望美は僅かに微笑むと、ひと呼吸を置く。 「行かないよ…、将臣くんの傍にいる」 望美は将臣の胸に頬を寄せると、瞳を閉じる。 力強い将臣の鼓動のリズムが、望美を幸福へと導いてくれた。 「…幸福にする」 「私も将臣くんを幸福にするからね」 ふたりは見つめ合い、笑い合うと、触れるだけのバードキスを繰り返す。 「一緒に暮らそう」 「うん。荷物まとめてるから、直ぐに引っ越しが出来るよ」 「明日、おばさんに挨拶に行くから、ここに戻って来ようぜ」 「うん」 再び望美を組み敷かれてしまい、将臣の愛を受け入れる。 「イギリス行きが決まった時より嬉しいよ」 「俺を選んだことを絶対に後悔させねぇから」 「うん、私も後悔させない」 そこから先は、歓喜に溢れた時間を過ごした。 ようやく欲しかったものが手に入ったことを望美は喜び、涙した。 たったひとつの真実の恋を手に入れるのは、こんなに難しくて、幸せなものなんだ。 「…春日さん、残念だわ…。次点の方には直ぐに連絡をしたら、今すぐにでも行きたいって喜んでいたわよ」 「ありがとうございます。教授にはご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」 望美は心からの謝罪を込めて、深々と頭を下げた。それを教授は静かに受け入れてくれた。 研究室を出ると、将臣が廊下で待っていてくれる。 「終わったか」 「うん、終わった」 ふたりは手を繋いで、ゆっくりと大学の廊下を歩いていく。 すると向こうから、かつて将臣と付き合っていた、ライバルだった彼女が歩いてくる。 緊張で心臓が震えてしまい、望美は思わず唾液を飲み込んだ。 手の平に汗をびっしりとかき、将臣から離れようとする。しかし逆に強く握り締められてしまった。 「…大丈夫だ」 「うん…」 高いヒールがリノリウムを蹴る音が廊下に響き渡る。 望美にとっては、恐ろしい音のようにも聞こえた。 彼女がふたりの横を通り、一瞬立ち止まる。 「…ごめん」 たったひとことだけ呟くと、まるで夏の風のように通り過ぎていった。 「行くか」 「そうだね」 手を繋いで歩き出し、校舎を出た。 ふたりを見守る空はあっけらかんとする程明るくて高い。 秋の色が滲み始めていた。 「さてと、後は引っ越し準備だけだな」 「そうだね」 ふたりは明るい未来に向かって歩き出す。 もう影も杞憂もない世界へと。 |
| コメント 想い合うのことに気付くのに遅れてしまったら? のコンセプトの、パラレル的な物語です。 恋の甘さと切なさ、愛の厳しさがテーマです。 無事完走できました |