17の紅くなる病

3


 将臣の部屋に行くということは、どういうことなのか解らない望美ではない。
 耳たぶまで熱さを感じながら、望美はただ将臣を見ていた。
 駅から自分たちの家に帰るまでの間、馴れているはずの道が、何だか見知らぬ場所のように思える。
 望美はただ将臣の指先の強さを感じながら、自分の指先から恋心を送っていた。
 将臣が家の鍵を開けている間も、ずっと黙っている。お互いに言葉に出来ないぐらいに緊張していた。
 いつも通い馴れているはずの有川家なのに、まるで場末の宿にでも迷い込んでしまった気分だ。
 将臣に導かれて、階段を踏み締めるように上がる。
 将臣は自分の部屋を開けると、望美を招き入れた。
「来いよ」
「うん」
 部屋に入ってしまうと、本当に落ち着かなくなってしまった。妙にベッドにばかり注目をしてしまい、余計にドキドキしてしまう。
「座れよ、何だよ、硬くなって」
 将臣に苦笑されて、望美は唇を尖らせてしまう。
「か、硬くなってなんかないよ」
 わざと悪態をつくと、将臣は目をスッと細めて見つめてくる。切迫した鋭い眼差しに、胸が支えてしまうほどのときめきを感じた。
「大丈夫かよ…」
「大丈夫だよ…」
 将臣に頬を撫でられる。全身が感覚になるような気がした。
「…望美…」
 名前を呼ばれるのと同時に、唇を奪われた。
 しっとりと重なる唇は、望美の総てを奪い尽くしてしまうのかと思うほどに強い。
 噛み付くようなキスよりも何よりも、望美の心を掻き乱した。
 勿論、しっかりと抱き合わなければ、躰を支えることなんて出来ない。望美は逞しくなった将臣の背中に縋り付きながら、キスを一方的に与えられた。
 将臣は”男の子”ではない。立派な”男”なのだ。
 望美は背中に総てを預けながら、ひしひしとそれを感じていた。
 頭が痺れるぐらいに容赦ないキスを浴びせられる。舌で口腔内を擽られると、子宮が甘く疼いた。
 女の子の時とは違ったやる瀬ない痛みに、涙が滲む。それは望美にとっては決して不快なものではなく、むしろ気持ちが良い傷みだった。
 キスだけで総てを将臣に奪われてしまったような気分だ。だがとうの昔から心は奪われてしまっていたのだ。
 流石にこれほどに激しいキスをされてしまうと、酸素すらも躰に遺ってはいなくて、唇を離されたと同時に、へなへなと崩れ落ちてしまっていた。
「大丈夫かよ」
「だ、大丈夫じゃないよ…」
 望美は速い呼吸をしながら、将臣の首に腕を巻き付けた。
 ドキドキするのに、こんなに安心するなんて、全く奇妙な感覚だ。
 将臣に総てを預けて、たゆたゆと抱き着いているのがとても気持ちが良い。
 甘えていると、将臣がくすりと僅かに笑った。
「何だかお前、今日は可愛いな」
「今日はじゃないよ。私はいつも可愛いんだから」
 拗ねても、将臣はおとなびた笑みを浮かべるだけだ。
「だって、今日は何時にも増して、キラキラしてるぜ」
「私が?」
「ああ」
 将臣は望美の躰を抱き抱えると、ベッドに連れていく。余りにスムーズな動きに、望美は焦らずにはいられなかった。
「ちょ、将臣く…んっ!」
「焦っても、泣いても、笑ってごまかしてもダメだぜ。俺はもう止められねぇからな」
 ベッドに寝かされた後、隙を与えないとばかりに、将臣が組み敷いてきた。
 幼なじみの色めいた表情に、望美はくらくらしそうだ。
 ずっと一緒に生きて来て、お互いの総てを知り尽くしているとてっきり思い込んでいた。
 なのに本当な何も知らなかったのではないかと、思ってしまう。
 お互いに神秘のベールに包まれたものを持っているなんて、思っても見なかったから。
 将臣の指がネクタイをするりと抜き取る。まるでマジシャンのようにする様と、擦れる音に、全身が沸騰してしまうぐらいに熱くなってしまっていた。
 将臣は愉しんでいるかのような表情をしながら、ブラウスのボタンを外す。鎖骨のボタンを外したところで、息を呑むのが聞こえた。
「…どうしたの? へ、変かな…」
 将臣が答えてくれないので、望美はひどく不安になる。
 気に入らなかったのだろうか。
 それとも他の誰かさんと較べられているのだろうか。それなら泣きたい。
 将臣の喉仏が僅かに動いた。
「バカ…。あんまり綺麗だから見とれていただけだ。マジで…綺麗だ…。白くてミルクみてぇでキラキラしてて…」
 言葉だけで官能が沸き上がり、望美の息が弾む。
 どうしてこのひとは、こんなにも簡単に夢中にしてしまうのだろう。
 将臣はじっと望美の鎖骨を見た後、そこに舌を這わせてきた。
「…んっ…! ああっ!」
 切迫した痺れが電流になって駆け巡る。こんなに気持ちが良い経験は、今までなかった。
 舌先で鎖骨の形を確かめられ、強く皮膚の薄い部分を吸い上げられる。そこが痛いほどに感じて、思わず身じろぎをした。
 きっと紅くなっている。まるで虫にでも刺されてしまったかのように。
「…あんまり」
「あんまり痕はつけるなってこと? 悪いがそんなことは出来ねぇな」
 将臣が独占欲をきらめきにして望美に見せ付けてくる。
「どうして」
「お前が俺のものだってことをしっかりと印象づけておかねぇと、馬鹿なコバエが群がるからな。印だ」
 嬉しいような困るような複雑な気分になりながらも、結局は将臣を止めることなんて出来やしないのだ。
 ボタンがまたひとつ器用に外された。
 今度は胸が露出する。
 下着を付けてはいるものの、こんな無防備な姿を見られるなんて、恥ずかしくてきわまりない。
 ブラウスのボタンを総て外された後で、するりと簡単に脱がされてしまった。
 ブラジャーだけにされた後、将臣は強く抱きしめてきた。興奮しているのだろう、呼吸がかなり荒い。
「ずっとお前の服の下がどうなっているか想像していたもんだぜ」
「へ、変なこと想像しないでよっ!」
「…それだけお前が欲しかった…ってことだろ?」
 将臣は背中に手を伸ばすと、ブラジャーのホックを軽々と外す。圧迫から解放された乳房は、将臣に向かって震えていた。
「綺麗なもんだな…」
「やっ…!」
 指先で乳房の縦ラインをなぞられる。背筋がぞくりと震えた。
「なんて声を出すんだよ…。そそられちまうだろ?」
「あ、あの…、ああんっ!」
 反論をする前に、将臣に下から持ち上げるように、乳房を揉みこまれる。
 その柔らかさを愉しんでいるかのように、張り詰めるまでしっかりと揉みしだかれた。
「あっ…! やだっ…!」
 何を言っても説得力がないのは解っている。
 だが、快楽に溺れる前に、ささやかな抵抗をしてみたかった。
 子宮が熱くなる。今まで知らなかった感覚が競り上がり、どうしようもなくなってしまう。
「…すげぇ綺麗だな…」
 官能に深くなった声で囁きながら、将臣は望美の乳房に顔をうめた。
 まるで小さな子供のように。
 総てを奪うように歯を乳首に立てられて、望美の瞳には涙が光っていた。
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「迷宮」ED後の日常です。





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