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どうしようもないほど気怠くて、幸せ。 じんわりとほわほわとした幸せがやってきて、望美の唇に自然と笑みが浮かんだ。 将臣が柔らかく抱き締めてくる。 本当に泣きたくなるぐらいに優しくて、こころが幸せの余りにきゅんきゅん鳴り響いた。 広くて、筋肉質な胸に、甘えるように顔を埋めると、将臣が髪から背中にかけて緩やかに撫でてくれた。 指先から、手のひらから、将臣の愛情を感じられて、嬉しくて仕方がない。 幸せ過ぎて涙が滲んだ。 どうしてこんなにも幸せなんだろうか。 あんなにセックスに恐怖を感じていたのに、今はとても幸せ行為であることを感じる。 あんなに全身にまで愛を感じるなんて思ってもみなかった。 望美はふと疑問になる。 将臣も、自分と同じぐらいに幸せだと、快感が得られたと、感じてくれているのだろうか。 望美は不安になって将臣を見つめた。 「どうした?」 将臣の甘く掠れ気味な艶やかな声が下りて来る。声だけでこんなにときめくことが出来るなんて、将臣の威力は凄まじい。 望美は将臣の躰に華奢な自分のものをくっつけた。 「だるかったり、疲れたりしていねぇか?」 「…それはちょっとあるかも…。だけどね、この疲れもダルさも、全部暖かくて幸せなんだ…」 上手く伝える自信なんかない。だが自分が幸せな感覚であることを、望美は拙い言葉で伝えた。 「…今夜はゆっくり休んだらいいさ…。有り難うな」 「…うん、有り難う…。凄く幸せだね」 「そうだな」 将臣が抱擁してくれている腕の力が強くなる。 息が出来なくなるほどの強さなのに、全く苦しくなんかなかった。 「するまでは凄く怖くてたまらなかったのに、こうやってしちゃうと、怖さより幸せが多かったな。本当に幸せでたまらないぐらいだよ…。凄いね…」 「そうだよな。俺もむちゃくちゃ幸せだ」 将臣のストレートで愛のこもった言葉に、思わずギュッと抱き締め返してしまう。 「…えっちで、しちゃうと、もっともっと好きになって、もっともっと側にいたいって思っちゃうから不思議だよね」 「お前もそう思ってる?」 将臣は嬉しそうに呟くと、更に抱き締めてくる。腕のなかに抱き込むというのが正解なのかもしれない。 「俺はすげぇ嬉しかった。ようやくお前を手に入れられたんだから」 「私もだよ。あんなに怖がっていたのが嘘みたいだよ」 「マジでな…」 将臣とくっついて眠っているだけで、なんて幸せなんだろうか。 鼓動と温もりが、優しく大きく包み込んでくれているのが解る。 そして優しい波の音。 これ以上のBGMなんてないと思える。 瞼がゆっくりと下りてきた。 焦る必要なんてない。ふたりはこれからだから。 だから焦らず、これからもこうしてお互いのこころと総てを共に包みあって歩いて行こう。 瞼が気持ちよく重くなるのを感じながら、望美は目を閉じた。 ごそごそと音がして、くすぐったい刺激が肌に気持ち良い。 最初は本当にくすぐったいだけだったのに、やがて肌がしっとりと潤んでくる。 「…んっ…」 熱くなる肌とは反して冷たいものが、柔らかな胸に押し当てられて、流石に目を開けた。 肌が昨日の記憶を呼び起こすかのように、じわりじわりと震えている。 「…ま、将臣く…んっ」 将臣と視線が絡んだ瞬間、乳首を思い切り吸い上げられた。 「あっ、ダメだよ…、朝から」 「…もう無理。スイッチ入っちゃったから…。お前の寝顔、それぐらい可愛いかったってこと」 逆らえないまま、一番奥深い場所が潤んでくるのが解る。 熱く愛されている証が、しっかりと滲んで来る。 シーツをまた汚してしまう。 将臣は、そんなことはお構いなしとばかりに、唇を平らなお腹から、敏感な場所へと這わしていった。 「…ま、将臣くん…!」 いくら躰をくねらしてみても、スイッチが入った将臣を止めることなんて出来ない。 「…脚を開けよ。膝を立てるんだ…。俺の前ではな…」 将臣の声と瞳には、強い威力を持っている。 恋する遺伝子が、従いなさいと囁いている。 「…将臣くん…」 甘える声を出しながら、言われたようにする。 すると将臣は指先と舌で、敏感な部分をしっかりと愛撫し始めた。 「…んっ!」 「お前が俺をしっかりと受け入れてくれるように、準備をしねぇとな」 「…将臣くん…っ!」 肌を震わせながら、シーツを思い切り掴む。 すると将臣は面白そう薄く笑った。 将臣は舌で肉芽や襞の内側で刺激を与えるように舐め回しながら、指をしっかりと胎内へと沈める。昨日よりもかなりスムーズに行く。 胎内の奥深いふっくらとした場所をくすぐられて、頭が真っ白になるぐらいにたまらなくなった。 「…指なんかじゃなくて、もっと熱くて硬いもので刺激して欲しいみてぇだな」 いやらしい囁きに、望美は唇を噛んだ。 将臣は指を望美から抜き出すと、脚の間に入り込み、自分自身を入り口にあてがう。 「…愛してる…。朝からお前をこうしてひとりじめ出来るのが嬉しい…」 将臣は深呼吸をした後、一気に熱いものを突き入れてきた。 「…いっ…!」 まだ望美は受け入れるには充分な経験はない。 昨日よりも更に強い圧迫に、思わず呼吸を止めた。 圧迫が何もかもをどこかに追いやり、将臣の熱い力強さしか感じられなくなる。 将臣は腰を強引に推し進めると、先ほど指で弄っていた場所を、今度は自分の勇剣でやわらかく突いてきた。 「…まっ!」 一瞬、心臓が止まったかと思うほどに、衝撃を感じた。 そのまま将臣は優しく、望美を癒すように動いて来た。 「あっ!」 朝日が眩しいのか、それとも快感が激しいのか、そんなことは解らない。 ただ幸せな感覚と、熱い心地好さが望美の総てを支配して行く。 好きだ。 沢山の“愛してる”と“好き”が躰のなかから溢れ出してきた。 将臣の動きが激しくなる。 薄い薄いものを通して感じる将臣の熱も、とても温かくて凶暴なのに優しい。 朝日と快楽のひかりがクロスをして、望美の総てを支配し始めた。 快楽が痺れのように全身に行き渡り、気持ちが爆発してしまいそうになるぐらいに、支配される。 もう何が何だか分からなくなる。 ひととしても、恋をするものとしても、理性のたがが外れてしまう。 「…あっ、ああ!」 このまま総てを失っても良いと思うぐらいに、望美は快楽という名の奈落へと突き落とされた。 「もうっ! 旅行の目的はダイビングだったのに、これじゃあ無理だよっ!」 将臣に所有の痕をつけられまくった結果、水着になれる状態ではなくなった。その上、下半身が痛くて上手く歩けない。 恨めしい余りに将臣を睨み付けると、逆に笑われてしまった。 「ダイビングならいつでも出来る。来年もまた来たらいいさ…」 「うん…」 少し複雑な気分になりながらも、望美は頷くしか出来なかった。 「んな顔をするな。ダイビングなら何度でも出来るが、ふたりの大切な“初めて”は、今しかねぇんだからな」 将臣は望美の髪をくしゃりとさせて、優しい笑みをくれる。いつもこれに負けてしまうのだ。 毎回、毎回。 「そうだね…。今回はお散歩で我慢する」 握り締めた将臣の手に強い力を入れると、ゆっくりと頷いてくれた。 ふたりにとっては一生忘れることが出来ない旅行。 きっとこの甘い香りがする旅を振り返る度に、幸せな気分に浸れるに違いない。 望美は幸せを噛み締めると、将臣に愛情を込めて微笑んだ。 一生忘れないよ…。 その想いだけを刻んで。 |