愛の手紙


 女王試験が始まった。
 新しい宇宙に、守護聖様方のサクリアを送り、惑星を育てるのだ。
 私と共に女王試験を受けるのはレイチェル。
 正反対の性格なのに、レイチェルとは馬が合った。とてもさっぱりとしたハキハキ考え行動する性格のようで、のんびり屋の私とは、噛み合わないはずなのに、何故か仲良くよることが出来た。友人がライバルというのは良いもので、私たちは切磋琢磨しながら試験を乗り切っていた。
 アリオスに女王試験のことを真っ先に宝庫期したくて、手紙を書く。

 試験は順調です。
 こんにちはアリオス。
 アンジェリークです。
 試験は今のところ順調と言えるでしょうか。
 知り合ったライバルとも自然と仲良くなりました。同世代の友人とはいいもので、隔離された空間にいるとお互いに接触が多く、空いた時間ではついお喋りに花が咲くこともあるんです。
 日の曜日には、偉いスタッフの方々やレイチェルと、一緒にお茶会なんてこともあるんですよ。
 とても楽しく充実した日々です。メリハリが効いているといったほうが、良いのかもしれませんね。
 私は今とても華やいで、充実した時間を過ごしています。
 試験は大変だけれど、何せ相手は天才少女なので。
 厳しいと思った時には、アリオスさんから頂いた手紙を読み起こして、心を奮い立たせています。
 手紙を通じて、いつまでも見守っていて下さい。
 アンジェリーク。

 手紙を書き終えて、私は手文庫に直した。
 また素晴らしくも楽しい返事を期待して。

 正直言えば、聖地には沢山の素敵な守護聖様や教官の皆様が大勢いた。気さくな人々までいて、それは素敵な人々。
 彼等に憧れこそは抱いても、恋心を抱くことなど、私には有り得ないことだった。
 どうしてかは解っている。どうしようもなく、手紙の主であるアリオスに恋い焦がれていたから。
 精一杯頑張った女王試験の中で、私の心をホントに癒してくれるのは、アリオスからの手紙だけだった。
 翌日、アリオスからの短い手紙が来た。

 アンジェリークへ。
 試験を頑張っているらしいな。こつこつと頑張りそうなおまえのことだ、素晴らしい成果が上がるだろう。
 俺もまた運命に対峙している真っ最中だ。
 常に後悔しないように、より勇気のある選択をしている。
 そのせいか、たとえどんなことをしていようが、俺の後悔は有り得ない。
 後悔をするだけために、人間生きているわけじゃないからな。
 また、連絡する。
 女王試験の幸運を祈っている。
 アリオス。

 アリオスからはこの手紙を境として、長い間手紙を貰うことはなかった。

 試験の間、毎日手文庫を覗いていた。アリオスの手紙を探してはないことに少しがっかりとして。
 楽しいこと、嬉しいこと、大変なこと…。
 沢山の出来事が私の中を通り過ぎ、私は、一歩ずつ階段を登っていく。大人としての階段を。
 アリオスへの手紙は試験中、ずっと書き上げていたが、返事が来ることは無かった。
 アリオスへの愛の手紙も、その通過点だったかもしれない。

 短くも長かった女王試験が終わり、私が新しい宇宙の女王に選出された。
 補佐官は勿論レイチェル。
 まだ生まれたばかりの宇宙をふたりで素敵に育てて行くのだ。
 大好きな友人と、新しい宇宙に赴く。
 大変だけれど、やりがいのある素晴らしいものだ。
 守護聖がいない私たちの宇宙は当分、ふたりでなにもかもを決めていかなければならない。
 支えてくれるレイチェルがしっかりしているから、私は前に突き進むことが出来る。
 アリオスには女王になったことを告げる手紙を書いた。

 アリオス様。
 きっと手紙をどこかでお読みになっていることだと思います。
 試験は無事に終了し、私は晴れて違う宇宙に赴くことになりました。
 まだ何もない空っぽの宇宙。
 だけどひどく愛着が湧き、きっとこちらの宇宙でずっと暮らしていくことになると思います。
 この宇宙を愛して、しっかりと歩んで行きたいと思います。
 アリオスさんもきっと一度は遊びに来て下さい。素敵なパーティーをしてお迎え致します。
 愛を込めて。
 アンジェリーク。

 初めて手紙に”愛を込めて”と書き入れた。
 でも、今までの手紙総てに私は愛を込めて書いていた。
 アリオスのことを想って。
 アリオスは手紙の中にいる私にとっては理想の男性だった。
 励まし時には厳しい声で、私を見守り導いてくれる。たがら女王試験を頑張り抜くことが出来た。
 のんびりしている私を、アリオスが高いところから引っ張ってくれる。だから頑張り抜けたのかもしれない。
 アリオスがいたから、レイチェルがいたから、私は女王になれた。

 盛大な宣誓式とパーティーの後、私たちは聖地に残り、新しい宇宙の聖地と宮殿が出来るまで、様々なことを学ばなければならなかった。
 宇宙を統べるというのはどういうことなのか、という、壮大なことから、星の小徑の使い方といった細かなところまで、私たちが学ばなければならないことは山ほどあり、くたくたになっていた。
 そんな中で、手文庫には、久々ので待望の手紙が入っていた。

 アンジェリークへ。
 久し振りだな。随分返事が遅れて悪かった。
 俺もおまえと同じように、人生を左右しかねない選択に迫られていた。
 今、俺は生まれ故郷からは遠く離れた場所にいる。
 自分の信念を達成するためには、そうしなければならなかった。
 微塵の後悔はない。
 だからおまえも人生の信念を突き通す生き方をしろ。
 おまえならば、想い通りに生きても、明るく素晴らしい結果が得られるはずだ。
 俺はそう信じている。
 おまえに俺はいつか逢ってみたい気分になっている。
 本当にいつか会えるかもしれないな。
 アリオス

 アリオスも頑張っているんだと想うと、私も頑張れるような気がした。
 だからもっと素敵な宇宙にして、アリオスをいつか呼んで、お喋りに花を咲かせることが出来ればそれで幸福。
 私は手紙を書き、アリオスに今の充実した気持ちを伝えた。

 アリオスへ。
 お手紙有り難う。
 あなたも頑張っているようでとても嬉しいです。
 私もいつかあなたに逢いたいです。
 私がいまいる場所にいつかあなたを招待したい。
 手紙では伝い切られないことを、あなたに語りたい。
 どうかあなたが幸福でありますように。
 私は沢山の人々を幸福にしていきたい。
 私が尊敬する素晴らしい先輩のように。
 アリオス、あなたのこれからの道筋が明るくなりますように、祈ります。
 これからも沢山手紙を書きますから、アリオスも手紙を下さい。
 愛を込めて。
 アンジェリーク。

 アリオスが手紙で支えてくれる。
 私の行く道も、アリオスに照らされている。そんな気分だった。
 この聖地にいる素晴らしい誰よりも、私はアリオスが好きで、ずっと繋がっていたいと、脳裏では自覚していた。


 いよいよ新しい宇宙に旅立つ。
 僅かなスタッフだけしか今はいないが、いずれは陛下が統べる宇宙のように素晴らしい宇宙にしたい。その強い志のもと乗り込んだ。
 もう、二度と戻ることはないと覚悟を決めて。
 アリオスからの手紙を入れた手文庫が、私にとっては掛け替えのないお守りとなる。
 切なくがっかりした時にも、これを読むだけで、私は元気でいられる。頑張れる。だからくじけない。
 みんなが頑張ってくれているのだから、私も頑張らないといけない。
 アリオスの手紙を糧に、宇宙の育成を頑張り抜く。まだ、新しい宇宙だから、色々とやらなければならないことは山積みだが、それでも笑顔でいることが出来た。
 私達の正式なコスチュームも決まらないような慌ただしい中、私は、故郷の宇宙に戻ることになった。
 ”皇帝”と名乗る男に、故郷が侵略されたからだ。
 動けない陛下に代わり、私が宇宙に赴き、皇帝を倒しに行く為だ。
 深くてどうしようもなく厳しい試練。
 それを乗り切らなければならない。
 私は不安にうごめく心を静めるために、アリオスへ手紙を書いた。

 アリオスへ。
 私は今から故郷に赴くことになりました。
 重大なことが起こってしまったからです。
 それを解決スベク向かいます。
 あなたのことが好きです。
 当分は手紙を書くことが出来ないかもしれない。
 だけどいつでも私があなたのことを想っていることを、どうか忘れないで下さい。
 手紙が旅先から書けるようであれば書きます。
 愛を込めて。
 アンジェリーク。

 私はアリオスに手紙を認めると、勇気を持って故郷の宇宙に向かった。


 故郷の宇宙の状況は、想像以上に激しい危機だった。
 まさか陛下はおろか守護聖様迄もが捕らえられていたとは。
 私は信じられない気分だった。
 仲間を見つけるべく、教官の皆様や試験に協力してくれた方々を探しに奔走する。
 ショックと疲れのせいか、私は倒れ、宿屋の方々に助けられた。だが、そこも火事になり、私を助け出してくれた人がいたことを、ぼんやりと感じた。
 目が覚めると、目の前には銀の髪がとても素敵な翡翠の眼差しの青年。
 吸い込まれるように見つめていると、彼が名乗ってくれたのだ。
「アリオス」
 と。
 奇跡が起こった。
コメント

アリコレの半分パラレル、半分サイドのお話です。
楽しんで下さると嬉しいです。




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