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誕生日に何が欲しいと聴かれて、色々な物が思い浮かんだ。 可愛いワンピース、イヤリング、ブレスレット…。素敵な音楽が詰まったCDでもいい…。 だけど一番欲しいのは、記憶に残る素敵な思い出かもしれない。ロマンティックなひとときを今は過ごしたい…。 「アンジェ、誕生日さ、何も予定が無かったらさ、遊びに行かない? 素敵なカフェがあるんだけどさ、ランチぐらいなら手が届きそうだからさ、ワタシたちにもね。そこでお祝いしようよ!」 「うん! 嬉しい!」 親友からの申し出は、本当に心から嬉しかった。ひとりでだらだらと週末の誕生日を過ごすと思っていたので、楽しい気分になる。 「カフェレストラン、”アルフォンシア”だよ! 凄く楽しみなんだ〜!」 鼻唄混じりにレイチェルはご機嫌だ。”アルフォンシア”は生のピアノ演奏と最高の料理を出すことで知られている、アンジェリークも名前は良く知っているレストランだった。 「予約取れたね、よく…」 「うん! ランチが安いのも評判だから、ナカナカ予約が取れないんだけど、3か月前から予約しておいたの。友人同士の誕生日のお祝いってね」 「レイチェル〜!!! らぶゅ〜!!!!」 アンジェリークは嬉しさの余りに後輩に抱き着いてしまった。 「アンジェの17の誕生日だもんねぇ〜! 奮発しなくっちゃ!」 ことアンジェリークに関しては、何でもしてあげたくなる男性のような気分になる。レイチェルは、アンジェリークの嬉しそうな笑顔を見れば、それだけで満足だった。 アンジェリークの誕生日当日は、思い切りお洒落をしてレイチェルとの待ち合わせ場所に向かった。 やはり憧れのレストランに行くのは、凄く楽しみだ。 「アンジェ、可愛い〜!!」 「有難う〜!!!」 今日のアンジェリークは本当に愛らしいと思う。薄いオレンジのワンピースは白い肌に映えている。両親から誕生日プレゼントとして貰ったものだ。 「さあ、行こうよ!」 「うん!」 ふたりで仲良くレストランに入ると、見目麗しい青年がエスコートして座席まで案内してくれた。 暫くすると、長身で銀髪の青年がやって来る。見事に制服を着こなし、黒のパンツが足の長さを強調している。 素敵な人が世の中にはいるものなのね…。 思わず見とれてしまうほど青年は素敵だった。 青年がテーブルにやってきたとき、アンジェリークは彼と目が合ったような気がした。それはほんの数秒の話だったが、何時間にも感じられた。 胸の奥が切なくて熱い。 「ランチコースAとお伺いしておりますが、それでよろしいでしょうか」 「はい、それでお願いします」 レイチェルと青年がやり取りをしている間、アンジェリークはじっとその横顔を見ずにはいられない。 「畏まりました」 青年と目が合った。だが、自分だけがそう思い込んでいるのだと感じて、恥ずかしさの余り俯いてしまった。 「アンジェ、せっかくのバースデー楽しんでね」 「うん。有り難う」 アンジェリークはどきどきとしながら、笑顔で答えた。 不意にピアノの演奏が始まる。しかも、スティービー・ワンダーの!HAPPY BIRTHDAY!”だ。 「誰か誕生日がいるのかな?」 「…凄い綺麗な音…」 奏でられる音に、アンジェリークはすっかり魅せられていた。 誰がこんな繊細で素敵な音を奏でているんだろう…。耳を澄ませながら、ピアニストに注目を集めた。 あ…、さっきのひとだ…。 ピアノを弾いていたのは、先ほど注文を取りに来てくれた青年だった。 繊細かつ不思議な魅力のある音色。まるで闇に光る月光のようである。 アンジェリークはすっかり音に引き込まれてしまい、周りが全く見えなくなっていた。 凄い…。綺麗で、心に染み込んでくる。 あまりの語彙のなさにアンジェリークは苦笑しながら、青年のピアノを聴き入っていた。 「アンジェ、前菜が来たよ」 「あ、うん」 レイチェルに声をかけられるまでは、全くの上の空状態であった。 「ここのお料理は最高だからね。じっくり味わおうね」 「そうね!」 ピアノの音色に音を傾けながら、アンジェリークはしっかりと頷くと、早速食べ始める。 「美味しい!!」 「でしょ!!」 ひとくち食べるだけで、芳醇な味が広がり、思わず声を上げてしまった。 「素敵なところね。ごはんは美味しい上に、ピアノ演奏も凄く素晴らしいんだもの!!」 正直、評判だけのレストランも数あるなかで、評判以上のレストランだった。 「やっぱり、評判に偽りないでしょ」 「うん!」 ピアニストは”HAPPY BIRTHDAY!”を弾き終わると、静かに席から立ち上がる。 「初めて見たなあ、今のひとがピアノ弾いてるの。専属ピアニストより絶対上手いもん」 「そうなんだ…」 「いつもいる人なんだけどね…」 いつもいる。 その言葉にアンジェリークはときめかずにはいられない。 ここに来れば会えると考えるだけで、何だか嬉しかった。 レイチェルと談笑しながら、出される料理を次々と平らげる。本当に美味しくて、話すのも忘れてしまうほどだ。 デザートを残すのみとなった時、ひとりのウェイターがテーブルに歩いてやってきた。 「お客様、本日がお誕生日だとお伺いいたしました。こちらは、うちのオーナーがお客様へのプレゼントでございます」 「あ、有り難うございます」 渡されたのは、綺麗にラッピングがされていへる箱を受け取る。 「有り難うございます」 プレゼントを素直に受け取った。 「凄い! 最近はランチタイムでこんなサービスしているんだ〜」 「レイチェル、知らなかったの?」 「うん」 アンジェリークは、嬉しさにドキドキしながらプレゼントを開けてみた。 「うわあ! 凄いね!」 「うん…!」 箱の中には、レストラン”アルフォンシア”のディナー券と、「お好きな曲をリクエストして下さい」と書かれた紙が入っている。 「このディナー券って凄い高いんだよ〜!!! 」 「お友達とどうぞって書いてあるけど…ええ、今日の日付!」 二人は顔を見合わせる。 「…アンジェ、行ってみる?」 「うん、勿論!! レイチェル!! つきあってくれる!?」 「いいよ」 ふたりはディナーもここに来ることが出来ると思うと楽しみ嬉しくてしょうがない。 アンジェリークにとっては運命の瞬間が始まる------ |
| コメント 今年の誕生日創作は、続き物です。 続き頑張ります |