Sweet Sweet Birthday

後編


 誕生日は前夜色々として遅くなったせいか、アンジリークはアリオスとふたり昼過ぎまでベッドにはいっていた。
「今日は良いところに連れていってやるからな」
「いいところって・・・、地下足袋を買いにいってくれるの!?」
「-----…美味い店だ」
 アリオスは相変わらずな恋人に苦笑しつつ、ぼけてる彼女が可愛すぎてぎゅっと抱き締めてしまう。
「おまえの好きそうなところに連れていってやるよ。楽しみにしておけ。その前にブランチに行かなくっちゃな。随分良い時間になっちまったし」
「うん」
 時計を見ると、間もなく12時、昼時だ。
「このままでいてえ気もするが、今日はおまえの大事な日だもんな。動かねえとな」
 先にアリオスが堂々とベッドから全裸で出て、シャワーを浴びに行く。
「アリオスっ!!」
 均整の取れた彼の躰のラインを目の当たりにするのが恥ずかし過ぎて、アンジェリークは真っ赤になってしまった。
「クッ、俺の裸なんて見慣れてるだろ?」
「もう、バカ〜!!」
 アンジェリークは恥ずかしさをアリオスに八つ当たりをするように枕を投げ付ける。
 だが、アリオスは感嘆に避けてしまうと、笑いながらバスルームに姿を消してしまった。
「ったく、もう」
 アンジェリークもバスローブを羽織ってベッドから出ると、早速乱れたベッドのメイキングにかかる。
 新しいシーツに替えるなどしていると、アリオスがシャワーから出てきた。
「おまえも入れよ」
「うん」
 アンジェリークもぱたぱたとシャワーを浴びに行った後、手早く身支度を整える。
 今日という日を思うと、不思議とにやけてきた。
 アリオスは別にお洒落をするわけでもなく、着替えも早いせいか、アンジェリークは待たせるまいと、もたもたながらも一生懸命着替える。 恋人はいつも待ってくれるが、甘えるわけにはいかないから。
 そのせいか身支度のスピードアップをはかることが出来た。
「支度出来たか? 行くぜ」
「うん」
 アリオスと仲良く手を繋ぎながら、横目でちらりと見てみる。

 適当に身支度しても、カッコ良すぎるのは変わらないんだ・・・。
 いいなあ。

 仲良く手を繋いで駐車場に入った後、アリオスの車に乗り込む。
 アリオスの運転する車が、乗り物中で一番、アンジェリークは大好きだった。
「ねえ、どこに連れていってくれるの?」
「ブランチはおまえが好きな定食屋にしてやるよ」
「嬉しい!」
「今日は、甘甘デイだ」
 普通の女の子なら、お洒落なカフェでブランチで喜ぶだろうが、見掛けと名前とは違って、べたな物が大好きなアンジェリークには、定食屋がランチタイムの素敵スポットだ。
「アンジェ、今日の定食屋の刺身定食最高だぜ?」
「うん、楽しみ〜!」
 アンジェリークの期待はいやがおうでも高まってくるのであった。


 定食屋”おふく”のメニューはアンジェリークを十分に満足させた。
 刺身はまぐろ・いか・たいが盛り合わせで出てきて、野菜の炊きもの、もずく酢、つけもの、その上白菜とあげのみそしると、アンジェリークの心をくすぐるものばかりだ。
「美味し〜! 嬉し〜!」
 やはりアリオスは恋人のことを十二分に理解している。アンジェリークの愛らしい笑顔のためなら、何だって出来るのである。
 最高のブランチを堪能した後は、夕食までは十分に時間がある。
「どこ行きたい? 今日はおまえのご要望にお応えするぜ?」
「だったらねえ・・・」
  大体のことが想像できて、アリオスは奇妙な顔をする。
「ドカタスタイル専門店に行きたいの!」
 図星だとアリオスは思った。
 普通の年頃の少女が行きたがるとは思わない。
 きらきらと大きな瞳を輝かせて期待するように見てくる彼女に、アリオスは大きな溜め息を吐いた。
「しょうがねえ。今日はおまえの誕生日だからな。連れていってやるよ」
「ホント!!」
 アリオスは取引のある、馴染みの作業着専門店に連れていってやることにする。
 少し頭を抱えながら。

 車でしばらく走ると、アンジェリーク好みの店に到着した。
 店を見るなり、アンジェリークは車から飛び出して駆けていく。
 アリオスは、駆けているアンジェリークの後をゆっくりと歩いていった。
「ねぇ、アリオス! これ素敵じゃないっ!」
「は・・・?」
 アリオスは益々頭がいたくなる。
 恋人が持っているのは、工事道具でおなじみ、鶴嘴だ。
「この鶴嘴いいでしょう? 私もこれで、トリッシュみたいに強くなれるかしら?」
 一生懸命語るアンジェリークに、アリオスは目まいすら感じた。
 アンジェリークが鶴嘴を持つなり、重さの余りに躰がよろけて、コケる場面が容易に想像出来てしまう。
 しかもあさって方向に鶴嘴を突き刺しそうである。
 ゲームの”デビル・メイ・クライ”のトリッシュになるには、アンジェリークは些かおとぼけ過ぎている。
「トリッシュってな、おまえ・・・」
 アリオスは開いた口が塞がらないとばかりに、唖然とアンジェリークを見つめている。
「だってトリッシュはダンテのかけがえのない相棒なのよ! アリオス、ダンテに凄く似てるから、私もトリッシュみたいになりたいんだもん」
「あのゲームばっかやってたのは、そんなことだったのかよ。ったく、おまえってやつは。そんなにゲームばっかやってると目を悪くするぞ!」
 アリオスが少し強く言うと、アンジェリークはむくれてしまった。
「もぅ・・・。目なんか悪くならないもん! アリオスってば説教くさい」
「俺は説教好きのジジィだからな。行くぞ」
 いきなり手を強く握られて引っ張られていく。
「どこ行くの?」
「タイムリミット」
 鶴嘴なんぞを欲しがる恋人は可愛いとは思うが、ものには限度があるのである。
「あ〜、アリオスぅ〜!」
 アンジェリークが可愛らしい声で抗議するが、アリオスは取り合わない。
 車に乗せた後、アリオスは早々とドカタ専門店を後にした。
「もう・・・」
「何時までも拗ねるなよ? ジャム付けて食っちまうぞ?」
「だって・・・」
「それ以上は言うな。もっといいものがあるからな」
 甘い声で囁かれて、アンジェリークはしぶしぶ折れた。

 緩やかなドライブを楽しむ頃には、アンジェリークの機嫌は良くなっている。
 窓の外を見て歓声を上げていた。
 夕食は豆腐会席で、しかも”男の会席”と銘打ったものだったので、アンジェリークは大いに喜ぶ。
「美味しい〜!」
「だろ? おまえこういうの好きだろうからな」
 アリオスが、自分をきちんと判ってくれているのが、アンジェリークは嬉しくて堪らなかった。

 おなかいっぱい食べた後は、アリオスのマンションに向かう。
 アンジェリークは今日もお泊まりをするのだ。
 部屋に戻ってお茶を飲みながら落ち着くと、アリオスはお約束のものを出してくれた。
「特注で発砲スチロールで作ったイースターエッグなんだぜ?」
「うわあ! 開けていい?」
「どうぞ」
 嬉しくて何度も飛び上がりながら、アンジェリークは慎重に卵を開ける。
「あっ! 地下足袋だ〜!! 嬉しい! 裏はゴムで滑り止めも付いてる!」
 興奮しながら、アンジェリークは小踊りをし、早速履いてみる。
 花柄のワンピースに地下足袋。
 この世のものとは思えないほどの、ミスマッチコーディネイトだ。
「うっとり・・・」
 足下を見ながら、アンジェリークは嬉しそうに笑う。
 散々堪能をした後、卵の中に地下足袋を直そうと、その中を見た。
「あれ・・・、卵の子供」
 ひょいっそれを手にとると、卵はベルベットのケースだった。
 ケースを開けてみて、アンジェリークは言葉を失う。
 そこには”結婚してくれ。アリオス”と書かれたメッセージと、ダイヤの指輪が入っている。
「アリオス・・・っ!」
 嬉しさと感動が怒濤のように襲いかかってきて、アンジェリークはぎゅっとアリオスに抱き付いた。
「トリッシュより、アリオスのお嫁さんになりたい」
「アンジェ・・・」
 アリオスのセクシーな唇が降りてきて重なる。
 アンジェリークは誓いのキスをたっぷりと堪能した。キスの後、アンジェリークはアリオスに左手薬指に指輪をしてもらう。
「アリオスのお嫁さんにして貰うのが一番の夢だったもの…。毎日ご飯作って、背中に赤ちゃんしょいながら、アリオスをお出向かいに…。きゃあっ!」
 ここまで言いかけて、アンジェリークは軽々とアリオスに抱き上げられる。
「おまえのその夢、早めに叶えてやらねえとな? 子作りだ」
「アリオス〜!!」
 幸せそうな微笑みを浮かべながら、アンジェリークはベッドに運ばれる。
 アンジェリークの願いが叶うのは、もうすぐそこ。

*コメント*

さくら様、少し早いですがミナミ様、お誕生日おめでとうございます。
お二人に捧ぐべく、とぼけたアンジェとアリオスの物語をお送りします。
おふたりへのイラストは間に合いませんでしたが(笑)
創作をお届けいたします(笑)
これで許してちょ(笑)

 アンジェちゃんDMCって。
ゲーマーだったのね(笑)



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