〜夏の恋の物語第一章〜
私は子供じゃない。 だけどあなたはいつも私を子供扱いをする。 11も年齢が離れているせいかもしれない。 私がまだほんの子供だという幻想を、アリオスは抱いている。 本当はそんなんじゃないのに…。 アンジェリークは目の前に居るアリオスを見るなり溜め息をはく。今まで、まともに扱われたことなど一度もない。 にも関わらず、これからの二週間供に過ごさなければならなくなってしまった。 それも、アリオスが仕事で滞在するコンドミニアムに、アンジェリークが短期間の家政婦として雇われたがためにだ。 夏休みの間のアルバイトにも、とても都合の良い条件ではあった。 リゾート地のアルバイトは、羽根を伸ばせるからだ。 幼なじみで大好きなアリオスの傍にいられるのは楽しいが、複雑なところもある。 ほかの女性が雇われたら嫉妬するだろうし、かと言って自分が雇われれば、いつものように下に見られてしまう。 アンジェリークにとっては、まったくどちらに転んでも辛いことであった。 今日から朝食を供にして、そのままアリオスの仕事先のリゾートへと、飛行機にのって向かうのだ。 きっと、くたくたになるまで働いて、泥のように眠るだけだ。 一度もアリオスにはまともに相手をして貰えずに、終わってしまうことだろう。 アリオスは世界を飛び回る敏腕経営コンサルタントであり弁護士。 こちらは華やかな世界等、全く考えもつかない、平凡な女子高生。 それなりに勉強はしているけれど、アリオスのように非情に徹してテキパキと仕事を熟すなんてことは、本当に出来そうにない。 アンジェリークはアリオスと自分の違いに大きな溜め息を吐きながら、じっと見つめた。 「何をそんなにぼんやりとしていやがる。とっとと飯を食ったら、出発だ」 「うん」 「”うん”じゃねえ、”はい”だ」 「はあい」 アンジェリークはやる気のなさそうな声で返事をすると、残りのサラダをかきこんだ。 「ったく、現地に行ったらピシリとしろよ?」 「解った」 アルバイト感覚な私なんかを雇うよりも、現地のひとを雇ったほうがかなり価値があると思ってしまう。 アリオスとの差が広がる度に、アンジェリークはどこか切ない気分になった。 アリオスは弁護士。 これに対して自分は普通の女子高生で、何処にでも落っこちている。学校も普通よりも少しだけ賢いレベルのところに通い、将来はだらだらと流されて行くのがおちだ。 「行くぜ」 「あ、はい」 素早く行動を起こしたアリオスの跡を慌てて着いていく。 「現地に行ったらきっちりて二週間働いて貰うぜ。俺も子守には付き合えねえからな」 子守という言葉に、アンジェリークは過剰反応をする。 私はそんな小さな子供じゃない! むっとしついても、アリオスが可笑しいそうに笑うだけだったので、アンジェリークは余計に気分を害する。 空港に行くまでも拗ねたままで、アリオスが出国手続きをしている間も、アンジェリークは不機嫌だった。 このまま子供扱いをするのならば、絶対に見返してやる。大人な女性であることは、行動で示して見せる。 アンジェリークは強く誓った。 飛行機に乗っている間も、アンジェリークはそわそわとしている。 ゆったりとしたシートで、二人並んで腰を下ろしているのはいいのだが、余りにも近い距離にいるので、強く意識をしてしまう。 アリオスがアイマスクをしながら眠る姿をじっと見つめるなり、アンジェリークはひどくドキドキした。 男らしい、しなやかな筋肉に包まれた肢体はとても綺麗で、頼もしく見えたし、女性のように整った横顔のラインは、うっとりと見とれてしまうほどだ。 本当に綺麗過ぎて、見つめていると興奮さえしてしまう。 現地に着くと、直ぐに仕事が待っている。だからしっかりとしなければならない。 そう思ってはいるものの、アリオスをずっと見つめていたくて、アンジェリークは結局余り眠れなかった。 途中一度乗り換えをした後、ようやく現地に到着をしたのは、6時間も後のことだったので、もうくたくただ。 アリオス観察に勤しみ過ぎたアンジェリークは飛行機の中ではほとんど眠れずにいた。 逆に現地に着くなり眠くなってしまったのは、困ったものだった。 「アリオスさま、どうぞ」 流石は弁護士とばかりに、アリオス一行を迎えに来たのは、黒塗りのインターコンチネンタルだ。 それを見るなりアンジェリークはすっかり目が覚めてしまい、口をポカンと開けてしまった。 その後ろには小さな車があり、アリオスと使用人契約を結んでいるアンジェリークは、それが自分の乗り込む車だと悟った。 こんな大層な車に乗るには、相当肩がこる。後ろの車がいいとばかりに、アンジェリークはいそいそと後ろの車に乗り込む。 アリオスがそれを黙って見ていたので、アンジェリークは正しいことをしたのだと思った。 私は分別のつかない子供ではない。 アンジェリークはそれを示すことが出来て、とても良いと思った。 だが、胸が痛い。 アリオスと自分の間にどうしようもない程の溝を感じて、心が痛い。 昔はこんなのではなかった。 アリオスはアンジェリークの隣に住んでいて、いつも遊んでくれる、素敵なお兄さんだった。 だが、彼はロースクールを首席で卒業するなり、敏腕弁護士として名を馳せ、経営面のアドバイスなどでも成功を治めた。 今やアリオスを顧問弁護士にしたいという企業が引く手数多だ。 今や成功したパワーエリートのアリオスに対して、アンジェリークはまだまだしがない高校生で、しかも特権階級でもない。 歴然とした差に、アンジェリークは寂しさを感じえなかた。 車窓から外を見ていると、リゾート地らしく、美しい海と椰子の木が印象的なとおりだ。 アンジェリークは美しい風景を見つめながら、安心した気分になる。 もっと風景を見たいたい。 目的地に到着した安堵と余り眠ることが出来なかったせいで、かなり眠い。美しい風景も眠気には勝てない。。 アンジェリークはゆっくりと眠りに落ちてしまった。 心地良く惰眠を貧った後、アンジェリークは気持ち良く目覚めた。 だが目を開けた瞬間、後悔だけがアンジェリークを襲う。 イキナリアリオスの顔が視界に入ったのだ。アンジェリークの寝顔を覗いていたようだ。 「…おはよう」 「………!」 アリオスの顔を見るなり、アンジェリークは跳び起きると、眠った自分をひどく呪う。 今回はバカンスではなく、アリオスに雇われてやってきたのに、全く何たることかと思う。 アンジェリークは自責の念にかられた。 「…ごめんなさい…。ついつい寝てしまって…」 しょんぼりとアンジェリークがすると、アリオスは苦笑する。 よくよく見渡すと、素敵なベッドの上にいて、アリオスはそれに腰掛けている。恐らく、コンドミニアムなのだろう。 全く、これならどちらが雇われているかが解りやしない。 「まさか、アリオスがベッドまで運んでくれた?」 「俺以外におまえの子守をするやつが、一体どこにいるんだよ?」 アリオスが素敵な笑顔で意地悪に言うものだから、アンジェリークはわざと拗ねる。 「私はそんなに子供じゃないわよ」 「そうか?」 「そうよ!」 アンジェリークはきっぱりと言いきると、勝ち気な眼差しをアリオスに向けた。 「まあ、構わねえ…。おまえが子守が必要か、そうじゃねえのかは、おまえの仕事ぶりを見せてもらってからだ」 アリオスは相変わらず不遜な態度を取ってくる。その自信たっぷりな、大人のふりをした距離が、アンジェリークには気に食わない。 「いいわよ。この二週間で、きっぱりとあなたに私が大人の女だってことを、認めさせてやるから」 「やれるもんなら、やってみろよ。アンジェリーク」 アリオスはあくまで、アンジェリークがそんなことは出来ないと踏んでいるようだ。その証拠におでこに”デコピン”を人差し指で頂戴する。 「起きたところで早速だが、ここが俺達の部屋だからな」 「え?」 アンジェリークは驚いてしまい、辺りを見回す。部屋には確かにベッドはふたつ隣あってある。 答えはひとつしかない。 「あ、アリオス…、まさか…」 アンジェリークが声を上擦らせていることで、アリオスには直ぐに意味がわかったようだった。 「ああ、予想通り、この部屋を共同の寝室で使う」 「えっ!」 アンジェリークは耳を疑う。いくらベッドが別だといえど、こんなに密着して眠るのは抵抗がある。 アンジェリークはアリオスの顔を、唖然として見つめることしか出来なかった。 「心配するな。俺も”子守”が必要なようなガキには手を出さない」 きっぱりと宣言されてしまうと、嬉しいのか哀しいのか判らない。 二週間-----アリオスと一緒に過ごすことが出来るのか。 アンジェリークは全身の血が逆流するほど、鼓動を早めていた。 アリオスと一緒の部屋で寝るなんて、私に出来るの? |
| コメント 夏なので、リゾートものを書きたかったです〜。 8月中には終わらせます! |