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子供の頃から何度も聞かされていたおとぎ話を、私も普通の子同様に信じていた。 ただひとつ、普通の子と違うことは、私が本当のお姫様であること。 王子様が迎えにくると、ずっとずっと信じていたあの頃。 私はエレミア国の王位継承権第一位。 将来はこの国の女王になるはずだが、まだまだのんびりとさせてもらっている。 うちの王家には変な風習があり、プリンセスにはハートの形をした可愛いプリンセスのペンダントが産まれた時に与えられ、成長してそのチェーンが切れた時、ハートを拾ったのが年頃の若い青年であれば結婚すること。 小さい時に、一度チェーンを切ったことがあるけれど、それは余りにも小さすぎて、伝説は関係がないと父が笑って言っていた。 そんな風習に少しドキドキとしてしまう、今日この頃---- エレミア国のアンジェリーク姫は、好奇心旺盛なお年頃。 プリンセスとしての帝王学よりも、まだまだ普通の年頃の少女としての生活に憧れている。 今日も学校の帰り、SPのウ゛ィクトールが制止するのも聞かず、アンジェリークは可愛いファンシーショップに顔を出し、文房具を買いにあさる。 それを遠くで見ながら、ウ゛ィクトールは苦笑していた。 どうも彼には不釣り合いの可愛い過ぎる店だから。 満足するものを買って店を出ると、ウ゛ィクトールの待つところに駆けて行こうとした。 「・・・!!」 ペンダントのチェーンが切れ、ハートのチャームが飛ばされる。 びっくりして息を呑みながら振り返ると、銀髪の青年がハートのチャームを拾ってくれるところだった。 「あ・・・ 」青年が立ち上がるとかなりの長身で、しかも、精悍で整った容立ちをしている。 「これあんたのだろ?」 「有り難う」 アンジェリークは青年の顔から視線を離すことが出来ずに、ただじっと見つめている。 魂の奥底から彼に魅入られているといった雰囲気だった。 「おい?」 低い声で何度か声を掛けられて、アンジェリークはようやく気がつく。 「あ、ごめんなさい。どうも有り難う」 青年の手の中で戻されたチャームが輝いて見える。 温かさが伝わって、心の奥が熱くなった。 少し厳しく妙な表情を青年はしている。 その表情がまた素敵に見えて、益々見惚れてしまった。 「じゃあな。大事なもんだろ? ちゃんと首にくくりつけておけ」 それだけを言うと、青年は颯爽と去っていく。 後ろ姿を見つめながら、アンジェリークは運命を感じていた。 また逢えるような気がする・・・。 だってきっと運命だから・・・。 アンジェリークは切なく感じながら、青年の後ろ姿を見つめている。 この瞬間、王女は完全に、名前も知らない青年に恋に落ちる。 「王女様」 ウ゛ィクトールの声にアンジェリークははっとして彼を見た。 「どうかなされましたか?」 「いえ・・・」 アンジェリークは、惚けた顔を見られるのが嫌で、つい下を向いてしまう。 「お用事がお済みになられましたか?」 「はい」 アンジェリークは俯いたままひとつだけ頷いた。 黒塗りの仰々しいリムジンに乗せられて、外の世界と隔たれた場所に向かうようで、アンジェリークは心が陰った。 はっとして車窓を見ると、先程の青年がやる気がなさそうに歩いているのが見える。 通り過ぎるまでの一瞬に、アンジェリークは瞳に焼き付けるように青年を見た。 刹那、彼と目があったような気がした。胸を貫かれるような電流が走る。 青年のことを思うだけで、全身が震えてしまうのではないかと思う。 アンジェリークはもう見えなくなってしまった青年の残像を、いつまでも心にとどめていた------- 翌日の朝、休日であったが、父王ジュリアスに呼び出しを受けた。 「お父様、どうかなされましたか?」 「ああ。今度、おまえには私の名代として、フェリシア国のロザリア女王の婚約式に参列してもらいたいのだ」 「ロザリア姉様の! 喜んで参列させてもらいますわ!」 ロザリアはアンジェリークの従姉で憧れの存在だ。アンジェリークは嬉しくて有頂天になる。 「とうとうご婚約だなんて、ルウ゛ァ様とそれはお幸せにおなりになられるでしょう」 ふたりはとてもお似合いのカップルで、アンジェリークの憧れの存在だった。 幸せな従姉に逢えるというのも、嬉しいものだ。 「それで、いつ?」 「二週間後が式だ。あの国の昔からのしきたりで、盛大な婚約式を行うからな。 まあうちうちの身内だけの式だ。急はいたしかたない。 すぐにおまえのドレスを新調させ、準備をする。おまえの初の外遊に良い機会だ。 将来の女王としてそろそろ外の姿も見て良いだろう。 一週間後から十日間、エレミア国の様子も十分に視察しておけ」 「はいっ!」 初の外遊にアンジェリークは心が逸る。 心はここにあらずと言った感じだ。 「今日はおまえに、今回の外遊の随行員を紹介するために呼んでいる。おまえの世話にはパリロー夫人に当たってもらうが、警備などの随行員を紹介しよう。昼食がてらに呼んである」 「はい」 「では行こう」 アンジェリークは父王ジュリアスの後に付いてバンケットルームに赴く。 ドアが開けられ、中に入った瞬間、アンジェリークは驚きで言葉を失うかと思った。 そこにいたのは、あの銀髪の青年だったのだ。 嬉しい驚きが全身を駆け巡る。アンジェリークは、もはや他の随行員が見えず、彼しか見えない。 無表情に冷たい容姿を助長しているが、アンジェリークにはたまらなくそれがいい。 「今回の警備責任者のアリオス中佐だ。頼りになるぞ」 アンジェリークはそんなことは判っているとばかりに頷き、アリオスから視線を逸らせない。 アリオスさんって言うのか・・・。素敵な名前だな・・・。 じっと見惚れていると、アリオスの瞳が悪戯っぽく光り輝いたような気がした。 結局、アンジェリークはアリオスに夢中なあまりに、他の随行員の名前と顔をきちんと見られずに紹介は終わってしまった。 バンケットルームでの昼食会の間でも、アンジェリークはアリオスから目を離すことなんて出来やしない。 ただアリオスを見つめるだけで、胸がいっぱいになった。 凄く素敵だな・・・。 アリオスさんと初めての外遊をご一緒出来るのが凄く嬉しい・・・。 素晴らしい日々を期待しながら、アンジェリークは夢を見ずにはいられなかった------ To Be CONTINUED… |
| コメント 「王家の恋」。今回はアンジェリークがお姫様です。 甘く切なく美しい恋物語をお届けする予定ですので、お楽しみ下さいませ。 今回のアリオスは、今回のアリオスもステキに格好良い予定です。 正統派のお話です〜。 ご期待下さい(笑) アリオスさんがシャツとか乱すシーン書きたいvvvv |