*鮮やかな未来へ*

中編


 仕事を終えて、花は玄徳の部屋に向かった。

 まだまだ厳しい仕事をしている玄徳を待つためだ。

 ふたりで供に過ごす時間が、何よりも素敵な時間だからだ。

「玄徳さん、こんばんは。仕事がようやく終わりました」

「ご苦労さん。俺はもう少しかかるから、待っていてくれないか?」

「はい」

 花は、玄徳が忙しそうにしている様子を見た後、お茶を準備する。

 忙しい中少しでもホッとして欲しかった。

「どうぞ」

「有り難う」

 玄徳は花にとろけるような笑みを浮かべてくれる。

 その笑顔を見るだけで、花は幸せな気持ちになれた。

 玄徳が仕事をするのを見るのが花は大好きで、じっと見つめる。

 玄徳の仕事ぶりは、見つめるだけの価値があった。

 いつまでもこうして玄徳のそばにいられたら良いと、思わずにはいられない。

 そのためには、やはり赤ちゃんを早く産まなければならないのだろう。

 世継ぎが出来れば、いつまでも愛する玄徳のそばにいられる。

 だが玄徳は赤ちゃんが欲しいのだろうか。

 花が玄徳の想いを汲むようにじっとその横顔を見てしまう。

 すると玄徳はまなざしに気付いて花を見た。

「花、どうした?」

「え、あ、あの」

 玄徳は優しいまなざしで、花をあやすように見つめる。

「何か言いたいことがあるんじゃないか?」

「あ、あの、その…、玄徳、赤ちゃんが欲しい…ですか?」

 花が緊張しながら、上目遣いで言うと、玄徳は驚いたように目を見開いた。

「…え?」

 花が余りにも突拍子もない質問をしたからだろう。不思議そうにじっと見つめてくる。

 花はドキドキしながら答えを待つ。

 その震えが解ったのだろう。

 玄徳は柔らかな笑みを浮かべて頷いた。

「勿論、お前との子どもが欲しい」

 玄徳は男らしい力強さでキッパリと言うと、花の頬に手を伸ばす。

 甘い鼓動のダンスに、花は蕩けてしまいそうになった。

 蜂蜜のようにとろとろの甘い幸せに、自分自身が蕩けてしまいそうだ。

 玄徳が自分との間の子どもが欲しいと言ってくれるのが、何よりも嬉しかった。

「…花…」

「私も…、玄徳さんの赤ちゃんが欲しいです…」

 これは本当に素直な気持ちだ。

 愛するひととの子どもが欲しくてしょうがない。

 玄徳は、花のフェイスラインをゆっくりと撫でてくる。

 その指先の情熱的な動きに、花は思わず目を閉じた。

 心地が好くて、そして官能的だ。

 大好きなひとの指先から、愛が迸っている。

「…どうして、子どもが欲しいか…なんて、訊いたのだ?」

 玄徳の声は花が落ち着くようにと、この上なく優しい。深呼吸するだけで、落ち着いた。

「…周りの皆さんが、最近、よく世継ぎのことを訊いてこられます。まだですと答えると、皆さんがあからさまにがっかりされるのが解って…、早く赤ちゃんを産まなければならないのかな…、なんて…。今までは考えたことがなかったから…。だけど、皆さんが赤ちゃんを望む理由も分かる気がします…。…皆さん…、お世継ぎに期待しているんですね。だから玄徳さんも赤ちゃんが欲しいのかなって…」

 玄徳の前だと素直に話せる。

 玄徳が大きな心で包み込んでくれているからだろう。

「花、それで、子どもがまだ出来ないことに不安になったんだな?」

「そうなんです。…赤ちゃんのことを言われると、逆に重圧になってしまいました」

 花が素直に苦笑いを浮かべると、玄徳はフッと柔らかな笑みを浮かべた。

「花、こちらにおいで」

 玄徳に促されて、そのまま近付く。

 するとそのまま膝の上に乗せられてしまう。

「あ、あのっ!?」

 花が焦るのも気にせずに、玄徳はギュッと抱き締めてくる。

「赤ん坊はいつかきちんと授かるから気にするな。大丈夫だ」

「はい…」

「俺はお前との子どもだけが欲しいと思っている。だから、それまでは待つ価値があると思っている」

 玄徳は優しいトーンで更に花を深く抱き締める。

「…愛し合って子どもを作る楽しみは長くても構わないしな」

 玄徳が意味深で官能的なことを言い、花の唇に唇を重ねてきた。

 甘い甘いキス。

 お互いに官能的な声があちこちで漏れてくる。

 何度も浅いキスをしながら、玄徳は花の腰を何度も優しく触れてきた。

 欲望と情熱を煽るかのように。

 すると込み上げてくる愛情に花は堪らなくなって、玄徳の背中にしっかりと手を回した。

 花の小さな掌が背中で動き回る度に、玄徳は更に花を引き寄せてくる。

 キスも次第に深くなり、もう後戻りが出来ないぐらいに深みを帯びた激しいものへと変わっていった。

 髪が乱れるぐらいに激しくキスを交わし合う。

 お互いに唾液を交換しあい、流れることも気にすることなく、キスを交わした。

 玄徳は舌を花の口腔内に入れ込んで、更に激しく求めてくる。

 互いに舌を絡ませ合い、愛撫をしあって、めくるめく時間へと突っ走ってゆく。

 玄徳の唇が花のま白い首筋に押し当てられる。

 随分と伸びた緩やかにひとつに纏めた髪が、玄徳によって器用に外された。

 髪まで乱れると、もう止められない。

 玄徳の手が、さり気なく花の袷の間に入ってきた。

 直に素肌に触れられる。

 ここは玄徳の執務をする部屋なのに。

 せめて部屋を移動しなければならないのに、花は動けないし言えやしない。

 その間も、玄徳は艶やかに息を乱しながら、花の漢服を肩口まで脱がしてしまう。

 白い乳房の谷間が露になる。

 恥ずかしい筈なのに、そんなことはどうでも良いと思ってしまうぐらいに、玄徳の愛撫に夢中になってしまっている。

 白い首筋から鎖骨にかけて、玄徳は唇を這わせてくる。

「…お前は俺をいつでも狂わせる…」

 玄徳はくぐもった声で呟くと、花を抱き上げた。

 そのまま玄徳が仮眠に使っている寝室へと向かう。

 ここからは聖域だ。

 誰も中に入ってくることは出来ない。

 花はほんのりとホッとしながら、玄徳にすがりつくように思い切り抱き締めた。

 息が出来ないぐらいに欲望が高まっている。

 玄徳が欲しい。

 玄徳は寝台に花を寝かせると、漢服をはぎ取った。

 花の白い裸身が曝されて、玄徳はじっくりと見つめる。

 情熱と官能が滲んだ瞳には、独占欲が浮かぶ。

 じっと見つめられるだけなのに、敏感に感じ取ったしまった。

「…花…。お前は綺麗過ぎる…」

「玄徳さん…」

 玄徳は、息を乱しながら、花に躰を重ねてきた。

 抱き合って脚を絡め合う。

 玄徳の筋肉が美しく着いた脚と、花のすんなりとした脚が、麗しくも絡みあう。

 この世界に着いた頃は、あんなにも華奢な子供そのものの躰をしていたというのに、玄徳に愛されて彫刻が施された躰は、今やしなやかで滑らかな女そのものの躰になった。

 ずっと貧相な躰のままだと思っていたのに、女性らしい美しい躰になっていった。

 これには花も驚いた。

 本当にこんなにも変わることが出来るなんて、玄徳に心から力強く愛された証だろう。

 花はそう思わずにはいられなかった。

「…花…。本当に綺麗になったな…」

「玄徳さん…」

「俺の子どもを身籠もったお前を見たい。物凄く、綺麗なんだろうな…」

 玄徳は掠れ気味の甘い声で囁くと、花の乳房に顔を埋めてきた。

「…あっ…!」

「…生涯…、お前だけだ…」

 涙が出そうなぐらいに嬉しい言葉に、花は玄徳に思い切り抱き着く。

「…玄徳さん、愛しています…」

「俺も愛している…」

 玄徳に甘い言葉を囁かれて、花はもうこのまま墜落しても構わないとすら思った。



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