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花との子供についてもう少し考えるようにと、芙蓉姫に説教を受けてしまった。 真剣に考えていないわけじゃない。 ただ、花に要らぬプレッシャーを与えることに対して、気が進まないだけだ。 それに、花ともう少しだけふたりきりの新婚気分を味わいたいというのもあるのだ。 玄徳にとっては、花が唯一無二の妻であるから、跡継ぎを産むとなると、当然、花しかいない。 花には要らぬ重圧にならないよう、気をつけるしかなかった。 花は既にいつ玄徳の子供を身籠もってもおかしくはない。 だが今は、そんなことからは解放してやりたいという気持ちがあった。 花が今日も一生懸命、軍の為に、州牧である玄徳の補佐の為に頑張ってくれている。 だからそれに加えて、懐妊してくれだなどと、なかなか言い出しにくかった。 だが、毎夜、花を愛しているのは紛れもない事実であり、それが自然と子作りになっているせいか、玄徳は跡継ぎに対してむとんちゃくになっているのではないかと思った。 玄徳が忙しい執務の最中、廻廊を歩いていると、花を見掛けた。 竹簡を持って一生懸命歩いているところをみると、かなり忙しいようだ。 一生懸命になって働いている花の美しさに、玄徳はついうっとりとしてしまう。 花は益々綺麗になってゆく。 しかも目を見張る程のスピードでだ。 これには、玄徳も驚かずにはいられない。 忙しい中、歩みを止めて、つい見つめてしまう美しさだ。 不意に花と目が合う。 玄徳の顔を見つけるなり、小刻みに手を振って来る。 その姿が愛らしくて、玄徳はつい頬を緩めてしまう。 「玄徳さん!」 花が小動物のようにこちらに向かって駆けて来る。それが可愛くて、ついうっかり抱き締めてしまいたくなる。 「精が出るな」 「玄徳さんこそ、お仕事ご苦労様です」 玄徳が贈った漢服を着ている花は、天女のように美しいと、我が妻ながらつい思ってしまう。 「これを雲長さんの所に届けたらお終いなんです」 「俺はまだかかるな。終わったら房で待っていてくれるか?」 「はいっ!」 花が待つ房に帰るというのは、なんて心地が良いのだろうかと思う。 玄徳は、毎日、この楽しみがあるからこそ更に頑張れるのだと思う。 花がこちらを幸せそうに見ている。 最高に愛せる相手と出会えて、玄徳は本当に幸せだと、思わずにはいられない。 花がいるからこそ、幸せでいられるのだ。 玄徳は花の頭をそっと撫でる。 「また、後でな」 「はいっ」 玄徳は花の髪を柔らかく撫でると、再び仕事へと向かった。 花は孔明のお使いを終えて、執務室へと戻る。 すると室からは芙蓉姫の声が聞こえてきた。 「あのふたりのことだから、直ぐに子供は出来るだろうね。遅かれ早かれね」 孔明がいつものようにのんべんだらりと呟く。 「あのお二人には、きちんと自覚を持って貰わなければ! 特に玄徳様には!」 いつも以上にヒートアップしている芙蓉姫にたじろぎながら、花は執務室に入った。 「師匠、終わりました」 「ああ、ご苦労様。今日の仕事はここまでだよ」 孔明は落ち着いた雰囲気で言うと、花に頷いてくれた。 「花! 今日は綺麗にしましょう? 素敵な夕食も用意しているから、玄徳様とのんびり出来るように手配するから」 「有り難う、芙蓉姫」 どうして急にこんな申し出があるのかが分からないが、花は受けることにした。 女の子としては綺麗にして貰えるのは、本当に嬉しいからだ。 「じゃあ早速、湯浴みして、綺麗に、綺麗になりましょうね」 「うん、有り難う」 花は芙蓉姫が張り切る意味を知りたくて、ふと孔明を見た。 「花、明日は休暇だと思っておくからね」 ひらひらと手を振られて、花は訳が分からなくて、孔明を見る。 「あ、あの。私。ちゃんと仕事に来ますよ」 花は訳が分からなくて、うろたえるように言うと、孔明はにっこりと笑って、手をヒラヒラとさせるだけだ。 「まあいいから。師匠の言うことを訊いておきなさい。明日の朝、君にも意味が分かるハズだからね」 意味深なことを言われて、花は頭の中が、クエスチョンマークでいっぱいになる。 「じゃあ花、行くわよ。綺麗になりに」 「は、はいっ」 芙蓉姫は張り切るように花を執務室から引っ張ってゆく。 「そんなことしなくても、玄徳様は充分だと思うけれどね…」 孔明は溜め息を吐くと、花に気の毒そうな視線を送ってくる。 「花…、気をつけて」 「はあ、有り難うございます」 何を気をつけなければならないのかが花には分からなくて、ただ曖昧に返事をした。 花がゆっくりと湯浴みが出来る時間を設けてくれ、久方振りにさっぱりとのんびりとすることが出来た。 湯浴みが終わると、贈られた数々の服から、芙蓉姫が選定をしてくれる。 芙蓉姫が選んだのは、美しい蒼の肩が幾分か出た、セクシーなものだった。 「こんなに綺麗に服を着ると、何だか落ち着かないというか…」 花が率直に言うと芙蓉姫は、信じられないように花を見た。 「花! 本当にこの服はあなたに似合ってピッタリなのよ! 解っている?」 「あ、有り難う、芙蓉姫」 花が遠慮がちに言うと、もっと自身を持ちなさいとばかりに、芙蓉姫は頷く。 「今夜はとっておきの時間を玄徳様と過ごしてね」 芙蓉姫は微笑みながら花に言うと、そっと肩を叩いてくれる。 「有り難う」 玄徳とふたりきりで食事をしながら、甘い時間を過ごす。 こんなにもロマンティックな時間を連続で過ごせるなんて、花は嬉しくてしょうがない。 ついはにかんだ笑みを浮かべてしまう。 「もうっ! 花っ! あなたはなんて可愛いのっ!」 いきなりギュッと抱き締められて、花は驚いてしまう。 「玄徳様があなたにうっとりとなさるように、最高に綺麗にするからね!」 「どうも有り難う」 玄徳に綺麗な所を見せたいと、花はつい思ってしまう。 「花、いつも以上に、可愛くて美しく仕上げるからね!」 「有り難う、芙蓉姫」 芙蓉姫は笑顔で返事をすると、花に化粧を施した。 今日はいつもよりも早く仕事を終えることが出来た。 これで花と一緒にのんびりと過ごすことが出来る。 玄徳にとっては、今、何よりも欲しいものは、花との時間だった。 花とふたりで過ごす時間が、何よりもかけがえのないものなのだと、感じずにはいられなかった。 花とふたりで過ごす房に向かう。 ずっとこうしてふたりの時間を重ねたいと思わずにはいられない。 「花、帰ったぞ」 玄徳が声を掛けると、花がいつもよりも淑やかな雰囲気で、現われた。 「おかえりなさい、玄徳さん」 「………」 恥ずかしそうな愛らしい笑みを浮かべて出迎えてくれた花は、本当に美しくて艶やかで、それでいて可愛い。 玄徳は思わず言葉を失っていた。 胸元と肩が開いた青い漢服は、確かに玄徳が贈ったものだが、本当によく似合っている。 誰にも見せたくない。 こうしてふたりきりの時だけに身に纏って欲しかった。 このまま抱き締めて、寝台に連れてゆきたい。そう思ってしまうほどに、花は美しかった。 このまま理性が持つかが、自信がないほどだ。 「芙蓉姫が美味しい食事を用意してくれました。楽しみですね」 「そうだな」 玄徳は、本当のご馳走は花だと思いながら、玄徳は花に着いて行く。 背中から見てもなまめかしくて、美味しそうだ。 背後から抱き締めたくなる衝動を、玄徳は何とか抑えた。 |