*夫婦日和*


 こんなにも激しく愛することが出来る相手に巡り逢えるなんて、玄徳は思ってもみなかった。

 花を抱いているだけで、幸せ過ぎて堪らなくなる。

 何度も花を奪って、突き上げて、玄徳は桃源郷の住人になったような気分だった。

 明け方まで花を激しく愛したからだろうか。

 眠る頃には、流石に花もぐったりとしていた。

 これには玄徳も反省をせずにはいられなかった。

「花、本当に大丈夫か?」

「鈍い怠さはありますけれど、大丈夫です…。ちょっと疲れて眠いだけです…」

「そうなのか? 本当に大丈夫なのか?」

 玄徳は、ぐったりとして今にも消え入りそうな花が心配でしょうがない。

 玄徳は花を柔らかくもしっかりと抱き締めて、その背中を撫で付けてやる。

「…大袈裟ですよ、玄徳さん…。本当に少しだけ眠いだけなんですよ…」

「…花…」

 花は優しいから穏やかに言ってくれるが、本当のところは、かなり眠くて堪らなくなるのだろう。

「…花…、苦しくはないか?」

 玄徳が声を掛けると、花からは返事は全くといって良いほど聞けなかった。

 ほどなくして、花の落ち着いた寝息が聞こえてくる。

 それがまた可愛くてたまらなかった。

「…すまなかったな…。ゆっくり玄徳は呟くと、花の柔らかな躰を抱き締めながら、自らも眠りに落ちる。

 ゆったりとのんびりした癒された気分だった。

 

 結局。

 玄徳が起き上がった後も、花は起きられずにいた。

「花、大丈夫か?」

「…大丈夫…だと…思いますが…」

 花は言いながらも、少し苦しそうだった。

 昨夜や際限なく花が欲しくて堪らなくて、つい激しく求めてしまった。

 一晩中、ついうっかり寝かせなかったのが原因なのかもしれない。

 それぐらいに昨日な花は綺麗で素晴らしかった。

 本当に奪い尽くしても奪い尽くせないぐらいに、欲しくてしょうがなかった。

 玄徳は自分自身を抑制出来なかったことに苦笑いを浮かべながら、花を柔らかく抱き締めた。

 子作りなんて名目的なことで、それよりも花が可愛かったからに尽きるのだ。

 本当に可愛くてしょうがなかった。

 あんなにも可愛い女は他にいないだろうとすら、玄徳は思う。

 子作りなんて、花を愛する行為の副産物に過ぎないのだ。少なくとも玄徳にとっては。

「…花、辛いのならば、今日は仕事を休むと良い。俺がお前を際限なく抱いたのが原因だからな…。いつものこととはいえ、お前には全く申し訳ない」

 玄徳は、疲労している花を見ると、胸が痛くなる。

「大丈夫ですよ。少し眠ったら良くなりますから…」

 花がにっこりと微笑んで、こちらを見つめてくる。潤んだ笑みが艶やかで、玄徳は息を飲む。

 本当に可愛くて綺麗で、玄徳は凝りもせずにまた花が欲しくなってしまう。

「…花…」

 ここはグッと堪えなければ、本当に花を破壊してしまうことになる。

 流石に玄徳は、堪える。

 全くなんて堪え性がないのだろうかと、我ながら思ってしまう。

 何とか堪えているのを花は不思議に思ったのか、小首を傾げて見つめてくる。

「…どうされたんですか?」

「…お前が可愛いことを言うから…」

 玄徳はくぐもった声で言うと、花から離れようと試みたのだが、出来ない。

 全く花相手だと堪えることが出来ないのが、我ながら大人気ないと思わずにはいられなかった。

「…お前が可愛いすぎると、俺は我慢が出来なくなるらしい…」

「…え…?」

 恥ずかしいが正直に伝えると、花は驚いたように目を見開いた。

「…あ、あの…」

「だからお前から離れなければならないんだが…」

 玄徳は苦慮しながらも、花の生まれたままの柔らかな肢体に降伏せざるをえなくなる。

「…花…、もう一度だけ…許せ」

「玄徳さんっ」

 結局は、花を抱かずにはいられなかった。

 

 結局、玄徳はほんの少しだけ遅れて執務を始めた。

 当然のことではあるが、花は流石に起き上がることが出来なくて、“おやすみ”になった。

 流石にこれには、芙蓉が気を病んだ。

「私が子作り作戦なんかをしたから…、花は…」

「…俺が悪い。あいつが可愛い過ぎた…」

 玄徳はほんのりと反省はするものの、後悔なんて全くしなかった。

「子作り作戦なんてしなくても大丈夫でしょう」

 相変わらず飄々とした声で言いながら、孔明がやってきた。

「…孔明…」

「花は恐らく、子供を身籠もっていると思いますよ。最近、やたらと眠いと言ったり、顔つきが何処か凛としているんですよね。で、そこまで玄徳様に愛されているとなると、それしか考えられないよね。まあ、花の様子をもう少し見なければならないでしょうけれど」

 流石に孔明は落ち着いて話をしている。

 孔明が言っていることは、根拠があるように思えるから、正しいと思っても良いだろう。

「…花に子供…」

「恐らくは」

 孔明はそう言うと、食えない笑みを浮かべた。

 本当に孔明の言う通りに、花が自分の子供を身籠もっていたとしたら、飛び上がる程に嬉しくなる。

「花に体調の様子を訊くと良いですよ。それから芙蓉、子作り大作戦で花を飾り立てたら、こういうことになるよ。ただでさえ、玄徳様は花を猫っ可愛がりするところがあるからね」

 孔明に指摘されると、全く花には面目ないと思ってしまう。

「…そうですね、確かに。花の体力を奪ってしまうだけですものね」

「そうだよ」

 ふたりの会話を聞いていると、まるで自分が好色魔か何かのように思えてきて、玄徳は堪らなくなる。

「…言っておくが…、俺のは花限定だからな…」

 わざと咳払いをして、玄徳は強調をする。

「そんなことは解っていますよ。まさにその通りなんですから」

 芙蓉にあっさり言われて、玄徳は返す言葉がなかった。

 

 執務が終わり、玄徳は花が待つ室に戻った。

「花、大丈夫か?」

 室に入るなりいきなり訊くと、花は笑みを浮かべて頷いた。

「大丈夫ですよ。…その…、たまになら構いませんから…」

 花は一段と輝きを増した肌をほんのりと紅に染め上げる。

 本当になんて可愛いのだろうか。

 それだけで堪らなくなる。

 花を見つめるだけで、また、抱かずにはいられなくなった。

 だが、ここはグッと堪えるしかないのだ。

「…花、気持ちが悪いとか…、眠いとかはないのか? 大丈夫なのか?」

 玄徳は心配する気持ちを抑えながら、花に尋ねる。

 すると驚いたように花が目を見開いた。

「どうしてそれを…?」

「食べないと気持ちが悪いとかはないよな?」

 これにも驚いたようだった。

「そうですけれど…」

 花の躰の変化や孔明の話を総合すると、やはり間違いはないようだ。

 玄徳は喜びを込み上げてくる。

 誰よりも愛しい花が自分の子供を産むのだ。

 これからのことを考えると、それは沢山の子供たちを産んでくれるのは間違いはないだろう。

 それが嬉しい。

 玄徳は深呼吸をすると、花を真直ぐ見た。

「…花…、子供が出来ているんじゃないか?」

 玄徳からの指摘に、花は息を飲む。

「…確かにそうかもしれません…」

 花ははにかみながら答えた後、真直ぐ玄徳を見つめてきた。瞳には母親としての誇らしさを感じずにはいられない。

「有り難うな、花」

 玄徳は嬉しくて、思わず花を抱き締めてしまう。

「…私も…有り難うございます。とっても嬉しいです…」

「俺も凄く嬉しい」

 花の笑顔に、玄徳は感きわまる。

 愛の証が得られ、更に幸せになるだろう。

 玄徳は花を抱き締めながら、そう思わずにはいられなかった。

 



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