*愛しさを君に*

3


 いきなり息が出来ないぐらい抱き締められて、花は驚いてしまった。

「…玄徳さん…」

「すまん。驚かせてしまったか!?」

 玄徳はしまったとばかりの顔をしている。

「大丈夫です」

 花はにっこりと柔らかく微笑むと、玄徳を見上げる。

 玄徳は花の頬のラインを撫でると、本当に幸せそうな表情をした。

「…花…やはり、お前は軍師の格好よりも、そのスタイルが似合っている。…綺麗だ」

「有り難う…」

 玄徳に褒められると嬉しくて、花は頬をほんのりと桜色にした。

 ふたりが見つめあっていると、咳払いをするのが聞こえた。

「玄徳様、花。私は行きますね」

 まさかまだ芙蓉姫がいるとは思わなかった。

「あ、ああ、有り難う、芙蓉」

「…あ、有り難う芙蓉姫」

 恥ずかしくてしょうがなくて、花は耳まで真っ赤にして俯いた。

 芙蓉姫が部屋を出たのを確かめた後、ふたりは苦笑いを浮かべあった。

「…お前があまりに綺麗だったから…」

「玄徳さんもとっても素敵だったから…」

 ふたりはくすりと笑いあうと、手をしっかりと握り合う。

「花、食事が用意してある。一緒に食べようか」

「はい」

 ふたりだけで、先ずはお祝い。このような時間が取れて、花は幸せだった。

 食事をしながら、玄徳と他愛ない話をする。

 それだけで幸せだ。

「今はふたりだけだが、これからはもっと賑やかになるだろうな。俺は賑やかに家族みんなでわいわいしたいと思っているから」

「はい」

 みんなで楽しい食卓を囲めたら嬉しいだろう。

「花、沢山、家族を増やそう。俺は妻はお前しか持たないからそのつもりで…」

「はい」

 妻は花だけ。

 花の世界では当たり前のことではあるが、この世界ではそうではない。

 その決断を潔くしてくれる玄徳が、花は益々愛しくなっていた。

 

 食事が終わった後、花は甘い緊張がドンドン高まり、息が出来ない程になっていた。

 この先に何が待っているのか分からないわけじゃない。

 だからこそ余計に緊張してしまうのだ。

 決して嫌な緊張ではないのだが、落ち着かないことは事実だ。

 花の落ち着きなさに苦笑いしながら、玄徳は花の手を取った。

「花、行こうか」

「…はい…」

 手をしっかりと抱き締められて、花も同じように握り返す。

 すると緊張による甘い震えは、幾分かは落ち着いた。

 玄徳と渡り廊下を歩いて寝室へと向かう。

 幸せな緊張の余りに、花は薔薇色の吐息を吐きながら笑顔になった。

「…花、緊張しているか?」

「す、少しだけ…」

「俺もな…」

 玄徳もさり気なく認める。

 これには花は驚いてしまった。

 玄徳ならばかなり女性にモテるだろう。

 仁徳のあるひとであるから女性をきちんと扱うことが出来るだろうから、当然のごとく素敵な女性が集まるだろう。

 その玄徳が緊張しているなんて。

 ある意味驚くと同時に、花は嬉しくてしょうがなかった。

 寝室に入ると、玄徳はいきなり抱き締めてきた。

 息が甘く荒い。

「…今夜のお前は本当に綺麗で、何度も我慢出来なくなった…。お前を驚かせないようにと…何とか踏み止どまったが…、本当に堪らなかった…」

 玄徳は欲望が滲んだまなざしを花に熱く向けると、唇を深く重ねてきた。

 熱くて蕩けるようにキスをされて、花はもう何も考えられないほどに、甘い官能的な感覚に溺れてしまった。

 玄徳は、花の総てを貪るかのように深いキスをし、口腔内を激しく愛撫してくる。

 息が出来なくて、甘い快楽にくらくらしてしまい力が入らない。もう立っていられない。

 ようやく玄徳は唇を離してくれた。

「…お前が欲しい…。お前を正式な妻にしたい…」

 玄徳は息を乱しながら、花のまなざしを真直ぐ見つめる。

 逸らすことなんて出来る筈がない。

 花が小さく頷くと、玄徳は強く抱き締めてきた。

 躰がバラバラになるほどに抱き締められる。

 これほどまでに愛する男性に求められていることが、花には本当に嬉しいことだった。

 こんなにも愛してくれている男性にはもう出会えないだろう。

 だが、花自身も、これほどまでに愛せる相手には出会えないだろうと思った。

 玄徳は花を軽々と抱き上げると、寝台に運んでくれる。

 ずっと憧れていたロマンティックなシチュエーションだ。

 寝台に寝かされると、緊張が一気に高まる。

 呼吸が浅くなり、ただ熱を帯びたまなざしで玄徳を見ることしか出来なくなった。

「…花…緊張しなくて良い。力を抜いて…。なんて、俺のほうが余程緊張しているんだけれどな…」

 玄徳は苦笑いを浮かべながら呟く。

「本当に?」

「ああ…」

 玄徳は苦しげに言うと、花の手を取って自分のむき出しになった胸に触れさせる。

 筋肉が着いていて、しっかりと鍛えられた胸。

 逞しくて、花はドキドキした。

 触れると分かる。

 玄徳の胸が激しい鼓動を刻んでいることを。

 本当に緊張しているのだ。

 花は玄徳が自分と同じだと思うだけで、嬉しくてしょうがなかった。

「同じだろう?」

「…はい。同じです…」

 ふたりで甘い気持ちをシェアすることが出来るのが、花は嬉しい。

「…花」

 玄徳の手が花の装束にかかる。

 器用に装束を脱がされて、生まれたままの姿にされた。

 その間、玄徳は、花をじっと見つめる。

 そんなにも見つめないで欲しい。

 恥ずかしくて堪らなくなるから。

 花は耳の後ろが痛くなるぐらいに緊張していた。

「…花…。お前はとても綺麗だ…」

「玄徳さん…」

 玄徳に称讃されるのがとても嬉しい。

 恥ずかしいが、喜びが全身を満たしてくれる。

 玄徳は既にはだけていた装束を脱ぎ捨てると、花に肌を重ねて抱き締めてきた。

「…花…」

 花の名前を世界で一番素敵な名前であるかのように呼んでくれる。

 この名前で生まれて良かったと、花は思わずにはいられなかった。

 玄徳にその名前を呼ばれるだけで特別な名前になったのだ。

 玄徳は花の唇を優しく奪う。

 最初は柔らかく、その後は激しくなってゆく。

 花の唇を深く吸い上げながら、何度も官能的なキスをした。

 キスをするだけで、愛を感じる。

 もっと愛されたい。

 もっと愛したい。

 お互いの唾液を交換するかのような激しいキスに、花は溺れてゆく。

 これからもずっと玄徳には溺れてゆくだろう。

 永遠に恋をしている自信がある。

「…花…。愛している…。お前だけだ…」

 玄徳に掠れた声で囁かれながら、花は世界で一番幸せな女性になったと自分自身で思った。

 玄徳は唇を首筋から鎖骨へとはわせていく。

 痛々しく止血がされている腕を見ると、花は快楽を感じながらも心配になる。

「…玄徳さん…、腕は…」

「…大丈夫だから心配しなくても良い…。お前を抱いていたら…そんなことは忘れてしまう…」

「…玄徳さん…っ!」

 玄徳の大きな手のひらが、花の柔らかな乳房をゆっくりと味わうように揉みしだいてきた。

「…花…」

「…あっ、んっ…!」

 張り詰めるまでしっかりと胸を揉みしだかれて、花はお腹の奥に今までにないもどかしい快楽を覚える。

 躰の中心の熱い場所から熱いものが流れ落ちてゆくのを感じていた。

「…花…」

 玄徳の熱い吐息を、胸の尖端に感じる。

 そのまま唇が触れると、強く吸い上げられるわ

「…んっあっ!」

 玄徳の唇と舌の愛撫に、花はおかしくなってしまいそうだ。

「…玄徳さんっ…!」

 快感が全身を走り抜けて、花はどうして良いのかが分からないぐらいに、震えを感じていた。



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