中編
「子、子作りですか…?」 花が真っ赤になりながら繰り返すと、公瑾はクールな表情で花を見た。 「ええ。周りを黙らせるには、本当に子供を作るのが一番ですからね」 公瑾は静かに言うと、花の唇を塞いだ。 先ほどよりも更に熱いキスをされて、花は溶けてしまいそうになる。 お互いに息を乱しながら、何度も舌を絡ませ合う。 公瑾の執務室だから、ここに誰が来るかは分からないのに、そんなことさえ忘れてしまうような熱いキスだった。 公瑾の綺麗な掌が、花の背中を這い回る。 そのリズムがとても官能的で、思わず熱い吐息を零した。 思わず目を閉じてしまわずにはいられない。 「…公瑾さん…」 花が熱く名前を呼んだ時だった。 不意に足音が聞こえてきて、花と公瑾は息を呑む。 「…続きは後でしましょうか…」 「はい…」 花も同意して頷くと、そっと自分の椅子に腰を掛けた。 足音が近付いてくる。 このまま人が来ても冷静にいられるだろうか。 そんなことを緊張しながら花は考えていた。 公瑾を正面に見られない。 花はずっと俯いたままで、仕事をし続けていた。 足音は、やはり公瑾の執務室の前で止まった。 「公瑾様、文官が書類を届けに見えられました」 警備の兵が高らかに言い、公瑾は扉を慎重に開けた。 「ご苦労様」 公瑾は何事もなかったように、文官から竹簡を受け取る。 花は顔を上げて、ふと文官と目が合った。 文官が一瞬こちらを凝視するのが解かり、花はキスをした後だというのがバレたのだろうかと、思った。 公瑾が一瞬だけ花を見つめる。 「では」 公瑾は直ぐに扉を閉めて、花をじっと見つめた。 冷徹で厳しいまなざしに、花は怒られたのではないかと思った。 「…花…、やはりあなたはここで仕事をすべきではないのかもしれない…」 公瑾は溜め息混じりで、花を見つめた。 「あ、あの…、今、何をしていたのかが、解ってしまったから…ですか?」 はしたない色が出てしまったのだろうか。それは泣きたくなるぐらいに嫌な気分になる。 花は隠せない質である自分を恨んだ。 「…いいえ…、そんなことはありません。気付いてはいないでしょう…」 公瑾はそこまで言うと、花の頬に手を伸ばした。 切ないと思っているのが、バレたのではないだろうか。 そう思うだけで息苦しくなる。 それを癒すかのように、公瑾は花の頬を優しく撫で付けてくれた。 「…花…、あの文官は、あなたに見とれていたのですよ…」 「…え…?」 「私のあなたが余りにも美しいものだから、見とれていたんです。あなたは本当に綺麗になった…。いや、益々、綺麗になってゆく…。誰にも見せたくはないのですよ…」 公瑾は静かに言うと、花をそっと抱き寄せた。 「…公瑾さん…」 「ですが、あなたをうちでひとりにしておくことも出来ないんですよ…。そこが辛いところです…」 花が顔を上げると、公瑾はフッと微笑んだ。 「全く、今日のあなたには責任を取って頂かなければ…」 「責任…?」 公瑾はそれだけを言うと、花を更にギュッと抱き締める。 このまま抱き締められて、蕩けてしまいたいと思う。 じっとしていると、公瑾は花の額に唇を落とした。 「この竹簡を処理したら、今日はもう帰りましょう。あなたには責任をきちんと取って貰わなければならないですから…」 公瑾は意味深に呟くと、花から抱擁を解いて、仕事を始めた。 一緒に極上に甘い時間を過ごすために、公瑾が仕事を頑張ってくれている。 花にはそれが嬉しかった。 待っている間は、自分が出来る限りのことをしよう。 花もまた仕事に没頭した。 「花、終わりましたよ。帰りましょうか」 「はい」 花がゆっくりと立ち上がると、公瑾はその手を取ってくれた。 とても優雅だ。 「うちに帰ったら、ゆっくりとしてから、食事をしましょうか。今日は随分と早いですからね」 「はい…」 花は静かに言うと、公瑾の手をギュッと握り締めた。 邸に戻り、夕食までの時間に花は湯浴みをする。 仕事の疲れを取るために、のんびりと出来るのは嬉しかった。 しかも、公瑾の刺激的な発言の後なだけに、花は甘い緊張を覚えずにはいられない。 公瑾には、最近、ようやく“綺麗になった”と頻繁に言われるようになった。 だからこそ更に綺麗になりたいと思う。 愛する人にはいつもベストの状態で綺麗だと言って貰いたかった。 花は湯浴みを終えた後、公瑾から贈られた漢服に袖を通すと、髪をふわりとひとつに纏める。 随分と髪も伸びたと思う。 それだけの時間、この世界にいたということになる。 愛するひとのそばにいたいから、花はここで生きることを決意した。 それには何の後悔もない。 公瑾のそばにただいたいだけだからだ。 湯浴みが終わり、湯家から出ると、公瑾もまた湯家から出てきたところだった。 湯上がりの公瑾は、女性よりも美しいと思わずにはいられない。 花は思わずじっと見つめてしまう。 「花、食事に行きましょう」 「はい」 花の手をしっかりと握り締めると、公瑾は食堂へと連れていってくれた。 食事も終わり、公瑾とふたりで部屋に戻った。 「…花…」 くぐもった艶のある声で名前を呼ばれた後、いきなり背後から抱き締められる。 首筋に唇を押しつけられて、思わず甘い息を零した。 「…花…。誰にも見せたくはないぐらいに…あなたは美しい…」 公瑾は花をキツく抱き締めると、唇を項に這わせていく。 肩口の襟ぐりあたりの肌に、強く情熱的に唇を押しつけてきた。 「…花…」 公瑾は、花の漢服の袷の間から、器用に手を侵入させてくる。 滑らかな白い乳房を直に触れられて、花は熱い吐息を宙に漏らした。 「…花…」 このまま愛撫を続けられると、立っていられなくなる。 肌が震えて、花はどうしようもないぐらいに甘い吐息を漏らした。 花の躰から力が抜けていくのを察したのか、公瑾は更に強く支えてくれた。 「…あなたが…欲しい…。食事の時も、ずっとあなたが欲しいと…思っていました…。食べ物よりも、あなたが欲しかった…」 「公瑾さん…っ!」 公瑾は、花を軽々と抱き上げると、寝台へと運んでくれる。 子作りをするだなんて先ほどは軽々しく言っていたけれども、まさにそれは愛の交換に他ならない。 お互いの愛情から滲む欲望をぶつけあうのだ。 公瑾は、花を寝台に座らせると、そのまま抱き締めてキスをする。 遠慮のないキス。 唇を貪るように吸い合い、舌を絡ませあって互いの情熱を相手に浸透させていく。 息をすることも、何もかも、キスをすること以外は総て忘れて、貪り尽した。 甘い蜂蜜のようなキス。 花はキスだけで、快楽の淵に墜落してしまうのではないかと思った。 公瑾の逞しい背中を抱き締める。 自分の夫なのだと。 自分だけのものなのだと、花は強く感じた。 公瑾はキスをしたまま、寝台に倒れ込む。 花とピッチの早いキスを何度となく重ねながら、漢服の袷を一気に広げる。 露になった、豊かになり始めた花のま白の乳房を、下から掬い上げるように揉みしだいてゆく。 張り詰めるまで揉みあげられると、子宮の奥深くが痛いぐらいに甘く痺れた。 公瑾を強く求めて疼いている。 そう感じずにはいられない。 花は公瑾を更に求めるように、しなやかな腕を、その逞しい躰に伸ばして抱き寄せる。 公瑾が自分の夫である誇りがそこにはあった。
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