*純な情事*

後編


 響介の手が、手早く美優のバスローブをはぎ取っていく。
 視線で躰をなぞられて、奥深い場所がきゅんと鳴るのが解った。
「…そんなに見ないで…。見られるほど…、私は綺麗じゃないから…」
「…またそんなことを言う…。君は誰よりも綺麗だ…。自信を持ちなさい」
 経験値の高い響介に言われると、自分の何の取り柄もない躰が、意味を持つような気分になる。
 世界で一番素敵なのじゃないかと。
 少なくとも世界で一番素敵なひとに愛されているのは確かだと、美優は思った。
 響介は素肌に羽織っただけのカッターシャツを脱ぎ捨てると、美優の肌に重ねてくる。
 守られるように抱き締められて、胸がきゅんと鳴るほどにときめきを感じた。
 響介の体温よりも少し冷たい唇が、美優の首筋にあてがわれる。最初は触れるだけの甘いキスだったのに、やがて音が出るほどに強く吸い上げられた。
「…きょ、響介さん…っ!」
 痛くて気持ちが良い感覚が、肌にしっかりと刻み付けられる。
 こんなに強く吸い上げられたら、痕が遺ってしまう。美優は、響介の唇から首筋を逸らせようとしたが、無駄な足掻きだった。
「…響介さんっ! 痕がついちゃうのはいやっ!」
「わざと俺の痕を刻み付けているんだよ…。君が俺のものだと、世間の男達に知らしめるためにね…?」
「…私…そんなにモテません…」
「君は自分のことをまるで解っちゃいないね…」
 響介は更に強く肌を吸い上げてくる。痛い刺激は、きっと痣になってしまっている。
「…あっ!」
 響介はゆっくりと唇を鎖骨に落とすと、ラインを舌先で辿った。
「…ずっと独り占めをしたかった…」
 まるで子供のように独占欲をむき出しにしながら、響介は美優の肌を味わって来る。
 華奢な躰にすがりつくように強く抱き締められて、美優は響介を包みこむように優しく抱いた。
 まるで子供をあやす母親のように。
 さらりとした響介のくせのない髪を撫でながら、満たされた気分になった。
「…全身に俺のものだという証を刻みたいよ」
 響介は、美優の肌のあらゆるところに、唇を強く押しつけていく。
「…あっ…!」
 躰のラインを手のひらで辿ったあとで、乳房を下から持ち上げるように掴まれた。
「あっ…んっ!」
 乳房を柔らかく揉みしだきながら、響介は親指の腹で、美優の乳首を押さえ付ける。円を描くように指を動かされて、やるせない熱が甘さを帯びてきた。
 響介の手のひらによってしっかりと揉みしだかれ、痛くなるぐらいに張り詰めた乳房を、今度は舌で味わってきた。
 最初は柔らかな白い双丘を舌で辿ったあとで、キスの雨を降らせてくる。
 下半身の奥深いところに一気に火がついて、痺れるような甘い蜜を作り始める。
 胎内から滲んできた蜜は、直ぐに美優の躰を潤ませた。
 響介は乳房に顔を埋めると、まるで美優が自分の母親かのように、乳首を口に含んだ。
「…あっ!」
 強弱をつけて乳首を吸われた後に、舌先でも乳首を丁寧に転がされた。
「あっ…!」
 全身に電流よりも激しい切なく甘い感覚が走り抜け、思わず響介の髪に手を差し入れてしまった。
 気持ちが良くて変になりそうだ。
 無意識に躰を身動ぎさせると、響介は嬉しそうな顔を向けてくる。
「…可愛くて、凄く綺麗だ…」
「あっ…!」
 響介は、美優の躰を俯せにさせると、背後から強く抱き締めて来た。
 滑らかな項や背中に、痕をつけるほど強く吸い上げる。
 前に回した手のひらで乳房を揉みこまれて、気持ち良さのために、何度も背筋を伸ばした。
「あっ…! 響介さん…!」
 腰ごと美優を抱き締めながら、背中じゅうにキスの雨を降らせ続けた。
 全身くまなくキスをされる。
 勿論ヒップも例外ではなかった。
 硬くて弾力のあるヒップに、響介は唇を落とした。
「…ああっ!」
 熱いとろとろな愛の蜜が、躰から溢れ出してきた。
 その蜜を舌先で舐めながら、痕を綺麗に辿る。
 熱い感覚が躰の奥から泉のように湧き上がり、美優には最早、どうすることも出来なくなってしまっている。
 ヒップのクレバスに、響介の舌が入り込んできた。
「…やっ…! 止めてっ!」
 そんなところまで舐められるなんて、恥かしくてしょうがなかった。
 なのに腰は物欲しそうに揺れてしまう。
 ひとかけらだけ遺った理性で、響介の舌から逃げようとしたが、しっかりと腰を掴まれてしまった。
「…逃げるな…。命令だ…」
「…あっ…!」
 熱に浮かされた響介の声を聞くだけで、躰がその通りに動いてしまう。
「…あっ、ああっ…!」
 響介の舌が、クレバスの溝を一筋、一筋、丁寧に舐めてくる。
 その度に、背中に冷たいのに熱い痺れが走り抜けた。
 思わずシーツを強く掴んでしまう。
「…あっ…!」
 一度響介に愛された躰は感じ易く、燃え上がるのも直ぐだ。
 背筋には甘くて冷たい汗が滲み、躰の細胞は響介を求めて敏感になっている。
「可愛い声をしているな、君は…」
 響介の舌は、美優のヒップから離れ、今度はすんなりとした脚へと向かう。
 美優が自分のものだと、高らかに宣言をするかのように、滑らかな肌に唇を落として、所有の証を刻んでいった。
「可愛いね…、君は本当に…。開発しがいのある躰だ」
 音を立てながら、脚にキスの雨を降らされる。きっと明日の朝起きたら全身に、響介のつけた印が広がっていることだろう。
 足を掴まれて、ゆっくりと上げられる。足の指の一本、一本にキスをされて、全身に快感の痺れが走り抜けた。
「…あっ!」
 本当に響介に愛されていない場所なんて、ないだろうと思ってしまうほどに、愛撫は緻密で豊かだ。
 やがて唇は、ゆっくりと脚を辿ってあがってきた。
「感じた? 凄く濡れているね…」
 恥かし過ぎることを指摘されて、泣きそうになる。なのに響介は楽しそうに色香がある笑みを浮かべていた。
 響介の舌が流れ落ちた蜜を辿り、上へと上がってくる。
 丁寧になぞられて、背筋が華やいだ。
「…響介さん…っ!」
 太股の内側を舐められると、躰が跳ね上がる。呼吸もかなり苦しくなってどうして良いか解らないほどだ。
「…響介さん…っ! 響介さんっ…!」
 浮ついた意識で大好きなひとの名前を呼ぶと、涙がこぼれ落ちた。
 恥かしくて堪らないから脚が自然と閉じていく。なのに響介は許してはくれなくて、美優の脚を強引に開けた。
「…悪い子だね…。さっき教えた筈だよ…。脚は閉じるのではなく、俺の前では開くものだと…」
「やあっ!」
 まるでお仕置でもするかのように、脚の付根を強く吸い上げた。
「…んんっ…!」
 痣になって暫くは遺ってしまうだろうと、思わずにはいられない。
 響介は熱い女の部分の周りを、わざと焦らすように舐める。
 中途半端な気持ち良さに、美優は狂ってしまいそうになった。
「…響介さん…お願い…っ!」
「…何をおねだりするんだ? 言わないと解らないだろ?」
 響介の意地悪さに悪態を吐きそうになる。だが従わなければ、欲しいものは絶対手に入らない。
「…弄って下さい…」
「指で…それとも…舌で…?」
 襞の内側を舐められて、背筋が震える。待っていた刺激だ。
「…どっちも…!」
「了解」
 響介の指が襞を掻き分けて、肉芽に舌を這わせる。慈しむようにゆったりと舐められて、無意識に腰が揺れた。
 熱い蜜が止めどなく溢れるのも、充分に感じられて、美優は泣きそうになる。
「…あっ…!」
 舌先を入り口に入り込ませて、溢れる蜜を舐めとる。
 頭のなかが沸騰して、ぐにゃぐにゃになってしまうような刺激を感じた。
「…あっ、ああっ!」
「…美優…っ! 凄く可愛い」
 響介の唇は肉芽に押し当てられ、音を立てて吸い上げられる。
 指が胎内に入り込んで、先程発見した美優の感じ易い場所を、刺激し始めた。
「…あっ、やあっ!」
 乳房の谷間に、背中に、官能の汗が流れて行く。冷たくて心地好い汗が、更に美優を高めて行った。
 もう目なんて開けていられなくて、美優は強く閉じた。
 視界にはもう何も見えないし、見たくもない。
 躰がふわりと浮き上がった。瞼の奥に星が走るのが見えて、まるで宇宙遊泳でもしているようだ。
「あっ、ああ…!」
 響介の指が一番敏感な場所を突く。その瞬間、躰がゆっくりと溶けていったのが解った。

 息が乱れていて、意識もやはり同じように乱れている。
 美優が目を開くと、真摯なきらめきを持った響介の瞳とぶつかった。
「…今度は…俺を楽しませてくれるね…」
「…はい…、響介さん…」
「良い選択だ…」
 響介は既に準備が整った雄剣を、美優の入り口にあてがうと、一気に入り込んできた。
「ああっ! あーっ!」
 自分の声だとは思えないほどの甘ったるい声がこだまする。
 激しく水音を立てながら、響介は自分自身で美優の内壁を抉るように進んでくる。
 かなり愛されたせいか、先程よりも更に硬くて熱い大きなものを、容易に受け入れることが出来た。
「…あっ! 響介さ…っ!」
 薄い人工の皮膚を介しても、充分過ぎるほどに暑さが解る。
 熱情が籠った温かさに、目眩がしそうになった。
 力強く響介は先へと進んで来た。奥に来れば来るほど、腰に感じる快楽がより強くなる。それが証拠に、 美優は強く響介を締め付けていた。
 もう離したくはないから。
「…君は…最高だっ…!」
 息を乱して苦しそうに言う響介が、誰よりも愛しい。
 艶やかな髪を乱して顔を歪める姿は、美優を更に刺激した。
「美優…、愛してる…っ!」
「私も大好きっ!」
 響介を二度と離さないように、美優はしっかりと抱き締めていた。
 響介の雄剣の先が、美優の敏感な場所をくすぐってきた。
「やっ、あっ、ああっ!」
 奥深い場所を思い切り突き上げられて、先ほどよりも更に強い波がやってくる。
 狂ってしまいたい。
 そしてもっともっと熱くなって響介ととろとろになってみたい。
「あっ、ああっ…」
 脳天を突き抜けてしまいそうな激しい突き上げが始まった。
 響介は渾身の力で突き上げ、美優はありったけを迎え入れようとする。
 意識も躰も何もかもが揺れている。
「あっ…、あああっ…!」
「…美優っ…! クッ…!」
 響介とお互いが示し合わせたかのように、タイミングよく舞い上がる。
 響介の力強い突き上げと、美優の締め付けが同時に起こる。
 美優の躰は弛緩し、激しく揺れた。
 頭が痺れた瞬間、もう何もかも考えられなくなった。
 今はただ無になるしかない…。

 幸せな気怠さに包まれながら、美優はゆっくりと目を開けた。
 すぐ目の前には響介。
 本当に精悍な顔立ちだと思う。
 満たされた優しい眼差しに、美優は思わず微笑んで見せた。
「…後始末は終わったから…ゆっくりおやすみ…」
「…うん。バスローブ着たら…」
「バスローブは必要ないよ…。君はこれからパジャマなんて必要じゃない…。俺がずっと抱き締めていてやる…」
「…有り難う…」
 瞼に古尾休みのキスに、思わずにんまりとしてしまう。
「明日の朝は起こしてあげるよ…」
「…はい…」
 幸せ色に染められて、美優はゆったり眠りにつく。
 明日の朝、愛するひとの“おはよう”を楽しみにしながら。





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