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ホテルに戻り、フロントで鍵を受け取る。 チェックインした時よりも緊張してしまい、かなでは息も出来ない。 緊張してしまってどうにかなりそうなのに、何故かここから逃げたしたくはない。 本当の意味で、大好きな大地の恋人になれるのだから。 大地はかなでをさり気なく気遣うようなまなざしで見つめてくれた後で、手をしっかりと抱き締めてくれる。 そこからは大地の緊張が伝わってくる。 大地もかなり緊張しているのだ。 ふたりが甘い緊張を感じているのは同じことなのだ。 そう思うと気分が随分と楽になったような気がした。 かなでは大地に寄り添うように着いていく。 部屋に入ると、お互いについ深呼吸をしてしまった。 時計を見るともう深夜近い。 「明日はゆっくりと出来るけれど、今日は疲れただろう? 眠る支度をしようか」 「あ、お風呂入れますね」 「ひなちゃん、先に入って良いよ。かなり疲れただろう?」 「あ、有り難う…」 大地に先にお風呂に入って良いと言われて、かなでは更に緊張してしまった。 歯をふたりで並んで磨きながらも、甘い緊張をしてしまう。 大地は余裕があるように見えるが、実際には同じように緊張してくれているのだろう。 気持ちが共有出来るようで、かなでは嬉しかった。 歯を磨いてサッパリした後、かなではメイクを落としてお風呂に入る。 薔薇の香りがする入浴剤を持ってきたから、のんびりと疲れをほぐそうとする。 だが、甘い緊張で躰も心臓もカチコチになってしまって、全く上手くいかなかった。 だが肌は綺麗だと言われたい。 かなではそれだけで肌を磨く。 大地ががっかりしてしまったらどうしようだとか、そんなことばかりを考えてしまう。 かなでは鼓動がヒートアップしてしまい、このままではどうしようもないと思うぐらいに緊張してしまう。 とにかく。躰と髪を丁寧に洗い、お風呂から出た。 寝る支度をして後片付けをしながらも、かなでは緊張でくらくらした。 ホテルのパジャマを上から被って、スリッパを履く。 鏡に映る自分を見ると、まるで小さな女の子だ。 少しも大人じゃない。 かなでは溜め息が出た。 大地と一緒にいる女性は、もっと大人びていて綺麗なのに。 無防備で、薄いメイクすらしていない自分は、子供そのものだ。 どこもかしこも成長していないと、かなでは思わずにはいられなかった。 かなでは溜め息を吐いた後、今度は勇気を掻き集める。 大地にこの子供のような姿を見せるためには、かなり多くの勇気が必要だと、かなでは思った。 何とか勇気を掻き集めて、かなではバスルームから出た。 「大地先輩…、お先でした」 かなでが小さな声で言うと、大地は一瞬、艶やかなまなざしを向けてきた。 その瞳を見つめているだけで、心臓が止まりそうになるほどにときめいてしまう。 艶のある瞳は、大人の男性そのものの華やかさと色気があった。 それに比べて自分はなんて子供なのだろうか。 かなでは恥ずかしくて、少しだけ目を伏せた。 大地は気に入らなかったのだろうか。 何も言わずにバスルームに行ってしまう。 大地には素顔なんて見られたことは数え切れないほどある。 高校生の頃は化粧なんて全くしなかったからだ。 かなでは不安になりながら、膝を小さく抱えた。 大地はバスルームに入った瞬間、大きな溜め息を吐いた。 風呂上がりのかなでは、無防備な可愛らしさと透明な美しさを同居させていて、とても艶やかで魅力的だった。 まだ少女のような雰囲気もあるかなでではあるが、もうこんなにも艶やかになっていたのかと、大地は思い知らされた気分だった。 大地が想像するよりもずっと大人の女性になっていた。 かなでがお風呂に入っている間も、欲望が頭を擡げてきて堪らなかった。 だが、今はもっと欲望が込み上げてくる。 突き上げるような欲望が、全身に漲っている。 かなでが欲しい。 欲しくて堪らない。 今までで一番欲しいものだ。 欲しくて、欲しくて、もうこの欲望を止めることなんて出来やしないと大地は思った。 バスタブに漬かると、肌がかなでのやわらかなものを想像する。 お湯が痛くなるなんて、思ってもみないことが起こってしまう。 欲望が漲るのは、こんなに苦しいのに、どうしてこんなにも素敵なものだと思ってしまうのだろうか。 大地は躰をしっかりと温めた後、意識するように躰を洗う。 かなでを抱き締めた時に、愛していると深く思って欲しかった。 この腕にかなでを抱く。 肌の熱を共有して、お互いの想いを伝えあいたかった。 大地はただそれだけを熱く思う。 かなでには自分の情熱、愛情を伝えたい。 それにはもうキスだけでは足りない。 大地は、かなでを自分の腕の中に閉じ込めてしまい、もう離す気はなかった。 お風呂から上がり、無造作に寝る支度をする。 欲望がたぎり、痛みすら感じる。 かなでが欲しい。 総ての細胞が悲鳴を上げているように、大地には感じられた。 大地を待っている間、かなでは、ベッドの上で膝を抱えて座り込んでいた。 シャワーを浴びる気配を感じながら、緊張する余りに指先を震わせてしまう。 呼吸が上手く出来ないのは、ある種の緊張があるからだ。 大地が好きだから、この苦しい緊張にも耐えることが出来るのだ。 かなでは何度も深呼吸をしながら、大地を待つ。 落ち着かせようとしても、上手くいかなかった。 ならばもうこのままでも構わないと思ってしまう。 大丈夫だと言い聞かせたところで、バスルームのドアが開いた。 大地がバスローブを無造作に羽織って、中から出てきた。 綺麗に筋肉がついている胸がちらりと見えて、かなでは耳の下が痛くなるぐらいに緊張してしまった。 なんて艶やかで色香があるのだろうか。 濡れた髪を無造作に拭いている姿は、卒倒してしまいそうになるぐらいに、素晴らしく色気があった。 かなでは思わず喉を鳴した。 濡れた髪が、ホテル特有の黄昏色の照明に照らされて、うっとりとするほどに あだめいている。 大地は美しくて、驚くほどにセクシィだ。 かなでは魂が奪われるのを感じながら、大地を熱いまなざしで見つめた。 大地はこれほどまでに艶やかで麗しいのに、自分は足下にも及ばないほどに子供だ。 それが哀しくなる。 かなでが見つめているのに気付いたのか、大地は髪を無造作に拭くのを止め、まなざしを向けて来る。 欲望に満ちたまなざしならば、いつでも焼かれて良いと、かなでは思った。 髪を無造作に拭きながら、かなでがこちらを見ているのを気付いた。 かなでのまなざしはとても清らかなのに熱い。 潤んだ瞳からは欲望が感じられ、大地は息が出来なくなる。 綺麗だ。 こんなまなざしで見つめられたら、どんなに欲望にストイックな男でも、直ぐに沈没してしまうだろう。 大地はこのまま抱き締めて、一気に自分のものにしたいと強く感じていた。 かなでは綺麗で清らかなのに、とても艶やかだ。 そこにいるだけで、胸が苦しくなる。 大地は、自分だけの女神に熱いまなざしを向けると、ゆっくりと近付いてゆく。 かなでが欲しい。 その華奢な躰を力強く思い切り抱き締めたかった。 これ以上ないぐらいに。 大地が近付いてくる。 その圧倒的な艶やかさに息を飲みながら、かなではただひたすら見つめた。 大地に思い切り抱き締められたい。 その瞬間、息が出来ないぐらいに抱きすくめられた。 |