*Love Anniversary*

4


 吉羅とふたりで何度もドライブをしたことはあるが、今回ほどドキドキしたことはなかった。
 横浜を通り過ぎ、都内へと向かう。
 夜のドライブはまるで宝石箱の中を走り抜けているかのようだ。
 香穂子は闇に光る人工的な輝きに、ときめきを覚えた。
 六本木に近付くにつれて、鼓動は激しくなってくる。
 吉羅のテリトリーに近付いているから当然だろう。
 東京タワーのライトが麗しく輝いているのを見つめながら、香穂子は気持ちが高ぶってくるのを感じた。
 吉羅をみらりと見ると、いつものようにクールな表情のままだ。
 香穂子は自分だけが緊張しているのではないかと思った。
 車は駐車場に入り、ゆっくりと停車する。
「着いたよ」
「は、はいっ!」
 緊張する余りに声がうわずる。
 吉羅は先にシートベルトを外すと車から降りて、助手席側のドアを開けてくれた。
「どうぞ」
「有り難うございます…」
 香穂子はぎこちなく礼を言うと、ゆっくりと車から降りた。
 直ぐに吉羅に手を強く握り締められる。
 手を繋いで、いよいよ吉羅のテリトリーへと向かう。
「緊張しているのかね?」
「…す、少しだけ…」
「私も緊張しているよ」
 吉羅があっさりと認めたため、香穂子は逆に驚いてしまった。
「…吉羅さんが…?」
「私も君が相手だと、流石に緊張してしまうよ」
 まさかあの吉羅暁彦が緊張するなんて、香穂子には思いもよらないことだった。
 香穂子が驚いて顔を上げると、吉羅は照れ臭そうにフッと笑っていた。
「君が相手だからね、しょうがないよ」
 吉羅はエレベーターの中で、香穂子をギュッと抱き締めてくる。
「君がずっと欲しくて…しょうがなかったのだからね…」
「吉羅さん…」
 吉羅が頬にキスをくれたタイミングで、エレベーターが停まり、ドアが開いた。
「さてと、行こうか、お嬢さん」
 吉羅は香穂子をエスコートして、自宅へと向かってくれる。
 鼓動が激しくなる。
 吉羅がセキュリティを解除する間、香穂子は全身が震えた。
「どうぞ、お嬢さん…」
「あ、有り難うございます…」
 緊張が高みまでくるのを感じながら、香穂子は吉羅の家へと足を踏み入れた。
「有り難うございます」
 吉羅の住む空間は、本当にシンプルで、生活感が全くないといっても良かった。
 香穂子は緊張を覚えながら、ゆっくり部屋に入る。
「水分でも取るかね?」
「じゃ、じゃあ、お水を…」
「解った」
 吉羅は二人分のミネラルウォーターを準備してーリビングに持ってきてくれた。
「有り難うございます」
 ふたりでソファに座って、少しだけ息を吐く。
 それでも緊張は解けない。
 自分で望んだことなのに、どうしてこんなにも緊張をしてしまうのだろうか。
「…香穂子、緊張を取り払おうか」
 吉羅はそう言うと、ロマンティックな音楽をかけてくれる。
 とても美しいメロディだ。
「踊ろうか。先程の続き」
「あ、はいっ」
 ダンスで緊張がほぐれたら、こんなにも素敵なことはないのにと思う。
 綺麗な音楽に乗せて、優雅なダンスをする。
 その砂糖菓子のようなロマンティックが、香穂子から緊張をするすると解いてくれた。
 ダンスを楽しんだ後、吉羅は香穂子の手にキスをする。
 そのままふわふわとした薔薇色の幸せの中で、吉羅に抱き上げられた。
 本当に、お姫様にでもなったような気分だ。
 ロマンスに満たされるというのは、このような気分を言うのだろうか。
 香穂子はそんな幸せに浸りながら、吉羅に寝室に連れていかれる。
 先程まであった緊張は、ほんのわずかではあるが、少なくなっていた。
 ゆっくりとベッドに寝かされて、首に腕をあてがわれて、軽く躰を起こされる。
 吉羅は艶のある笑みを僅かに浮かべると、香穂子の髪を解いた。
 その瞬間、紅の艶がある髪が、ベッドの上に麗しく広がる。
 もう一度ベッドに寝かされて、今度はドレスを脱がされた。
「…あ…」
 扇情的なゆっくりとした官能がある動きに、香穂子は息が詰まりそうになる。
 それ程、苦しくも華やいだ動きだった。
 吉羅は香穂子を生まれたままの姿にした後、自分自身もスーツを脱ぎ捨てる。
 吉羅がネクタイを外したり、カッターシャツを脱ぎ捨てる仕草はとても色気があり、香穂子は見とれてしまった。
 本当になんて艶があり綺麗な男性なのだろうか。
 香穂子はうっとりと見惚れることしか出来ない。
 香穂子が見惚れていると、吉羅の美しい裸身が晒された。
 綺麗に筋肉がついていて、とてもしなやかで綺麗な肉体だ。
 こんなにも綺麗な肉体は他にはない。
 本当に彫刻のように完璧な芸術的な躰だと、香穂子は惚れ惚れした。
 吉羅が逞しくも美しい躰を、香穂子の柔らかい躰に重ねてくる。
「どうしたのかね…?」
 吉羅が耳朶を甘く噛みながら囁いてくる。
 それだけで、背筋がゾクリと震えてしまうほどに感じてしまう。
 こんなにも甘い囁きはきっと他にはない。
「…吉羅さんの躰が…うっとりとするぐらいに…、綺麗だったから…」
 香穂子が耳朶まで真っ赤にするまで囁くと、吉羅は香穂子のボディラインを意味ありげになぞってきた。
「…あ…」
「君のほうが…綺麗だ…。可愛くて柔らかくて滑らかで…。本当に君は綺麗だよ…」
 吉羅がこんなにも甘い言葉を囁いてくれたことなんて、今まではなかった。
 吉羅は香穂子をあだめいた瞳で見つめた後、唇を重ねてきた。
 しっとりと包み込むような優しさと、征服するような燃える激しさが同居しているキス。
 何度も求め、与えながら、香穂子は愛の世界に溺れていった。
 こんなにも激しくも穏やかな世界があるなんて、香穂子は思ってもみなかった。
 吉羅は、香穂子の首筋に唇を強く押し付けてくる。
 首筋に自分の所有の証を刻み付けるかのように、吉羅は強く吸い上げてきた。
 唇は首筋からやがて鎖骨へと向かう。
 吉羅は、香穂子の躰を称賛するかのように、何度も何度も肌を強く吸い上げていった。
 しっかりと所有の痕を刻み付けられて、香穂子は頭がくらくらしてしまうのを感じる。
 こんなにも熱い感情は他にはなかった。
 熱い。
 だが穏やかで甘い。
 吉羅に愛されている。
 そう思うだけで嬉しくて涙が零れ落ちた。
「…香穂子!?」
 泣いているからか、吉羅は驚いて声を掛けてくれる。
「…嬉しいんです…。大好きな人とこうなれたことが…」
 香穂子は泣きながらも笑顔になる。吉羅はそれを見て、きつく抱き締めてきた。
「…吉羅さん…っ!」
「…君はどうしてそんなにも可愛いのかね? …私を狂わせる…」
「…暁彦さん…」
 香穂子が掠れた声でその名前を呼ぶと、吉羅は深く唇を重ねてきた。
「…香穂子…」
 吉羅には珍しく、名前を呼ぶ声が裏返る。
 掠れた裏声は、なんて魅力的なのだろうかと思った。
 吉羅は香穂子の乳房に手をかける。
 ゆっくりとしたリズムで揉みしだかれて、思わず甘い吐息を漏らしてしまう。
 吉羅は、香穂子の乳房が張り詰めるまで揉みしだいてくる。
 痛いのに気持ちが良いなんて感覚があるのだということを初めて知った。
 躰の奥深い場所が熱い。
 切ない疼きがどうしようもないほどに込み上げてきた。
「香穂子…」
「あっ、んっ…」
 吉羅が香穂子の乳房に顔を埋めてくる。
 そのまま、張り詰めた薔薇色の蕾にくちづけてくる。
 唇に含まれて、香穂子はやるせない快楽を感じていた。
 もうどうしようもないほどに吉羅が欲しかった。



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