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吉羅がこれほどまでに強引になるのは初めてかもしれない。 香穂子は、吉羅に腕を掴まれたまま、その顔を見上げた。 「暁彦さん、何処へ行くんですか?」 香穂子が不安になりながら訊くと、吉羅は飽きれたような基部強いまなざしを見つめられた。 「うちに帰るに決まっている」 吉羅は掃き捨てるように言うと、駐車場へと足速に向かった。 吉羅は機嫌が悪いまま、香穂子を車に乗せて、自宅へと走らせていく。 何も話しては来ない。 ただ怒っていることだけは解っていた。 吉羅はいつもよりもかなりスピードを出して自宅へと戻った。 香穂子はあっという間に到着したものだから、驚いていた。 車から降りると、吉羅は香穂子の手をしっかりと握り締めたままで、エレベーターへと乗り込む。 こうして強く掴まえられるのは、結婚してから初めてと言っても良かった。 エレベーターにいる間も、吉羅は無言のままだった。 香穂子は、この先に何が待ち構えているのかを、緊張しながら考えていた。 自宅に戻ると、香穂子はそのまま吉羅に引っ張られてリビングへと向かう。 「暁彦さんっ! どうしたんですかっ!?」 吉羅がこんなにも感情的に行動するなんて初めてのことだった。 今までも一度もなかったことだ。 どうしてこんなにも厳しいのか、香穂子には全く理解することが出来なかった。 「香穂子、私は離婚する気はない」 吉羅はストレートに言うと、香穂子を見つめる。 その視線はクール過ぎるぐらいだ。 「…暁彦さんはそれでも構わないとおっしゃるんですか?」 「ああ」 「仮面夫婦を続けてもですか!?」 吉羅は僅かに眉を上げると、香穂子をいきなり抱き上げた。 「あ、暁彦さんっ!?」 「君は随分、私たちがそのような関係でないことにこだわっているようだね…。だったら、私たちが仮面夫婦でなくなれば良い」 吉羅は何でもないことのように言うと、香穂子を抱き上げたままで、寝室へと向かう。 「あ、あのっ!」 「仮面夫婦でないことは、君が望んでいることではないのかね? ならば、私はそれを実行するまでだ」 「…あ…」 仮面夫婦ではなく、本当の夫婦になる。 その意味が分からないわけではない。 香穂子は直ぐに意味を正しく理解をし、心臓が飛び出る気分になった。 抵抗しなければならないのか。 それとも抵抗しなくても良いのか。 香穂子にはそのあたりが分からない。 だが、実際には上手く抵抗出来ないのが事実だった。 吉羅は寝室に入ると、香穂子をベッドに寝かせてくる。 香穂子がただ目を丸くして吉羅を見ていると、じっと観察するようなまなざしを向けて来た。 「…香穂子…。これからは私と一緒にベッドを共にするんだ。私のベッドで寝るんだ。良いね」 珍しく吉羅は感情が滲んだ命令口調で言うと、香穂子にゆっくりと近付いてくる。 キスをしたことがあるのは、結婚式の日だけだ。 それから、全くの進展がなかった。 ただの同居人のようにふたりで暮らしてきたのだから。 「香穂子…」 吉羅に組み敷かれると、思い切り抱き締められた。 抵抗なんてもう出来なかったし、する気もなかった。 香穂子の唇に吉羅の唇がゆっくりと重なってくる。 甘い唇に、このまま砂糖菓子のように蕩けてしまうのではないかと思う。 今まで知っているような触れるだけの軽いキスではなかった。 しっとりと征服されるかなようにキスをされて、香穂子はこのまま溺れてしまっても構わないとすら思ってしまう。 それほどまでに吉羅のキスは魅力的だった。 やがて吉羅の唇は香穂子の五感以上のものを支配してゆく。 舌が唇を割って口腔内に侵入してゆく。 舌先できめ濃やかにキスをされて、香穂子はもう溺れてしまった。 これ以上に素敵なキスはない。 香穂子は今までのどのようなキスよりも素晴らしいと思った。 とはいえ、香穂子の比較対象の相手は、あくまでも吉羅暁彦であるのだが。 舌先で愛撫をされてくらくらしてしまう。 香穂子は、今が寝かされていて良かったと思わずにはいられなかった。 立っていたら、とてもではないがそのままの姿勢ではいられなかっただろうから。 吉羅はキスに夢中になりながら、香穂子のボディラインを撫で付けてきた。 その官能的で甘いリズムに、息を激しく乱してしまう。 香穂子はいつしか、吉羅が紡ぐ快楽の海に墜落しそうになった。 自分ではどうして良いかが分からないから、このまま吉羅に身を任せていく。 すると衣服が器用に取り払われる。 ドレスを脱がされると、香穂子はいよいよ吉羅の妻になる準備を始めていた。 ドレスを綺麗に脱がされると、今度は吉羅も素早く衣服を脱ぎ去った。 「…香穂子…。本当の意味で君を妻にする。もう止められないから…」 吉羅の低くて官能的な声が響き渡る。 香穂子はその声に導かれて、酔い痴れていく。 鍛えられ引き締まった吉羅の見事な躰を見つめるだけで、鼓動が早くなっていった。 「香穂子…」 名前を呼ばれて直に抱き締められると、うっとりとするような幸せが満ち溢れてくる。 幸せ過ぎて、香穂子はどうして良いのかが分からなくなる。ただしっかりと吉羅を抱き締めて、受け入れた。 未知なるものを受け入れるのは怖かったけれども、それでもずっと望んでいたことだ。 まるで吉羅の魔法にでもかかったように、香穂子は素直な気持ちになれた。 吉羅と深いキスを交わす。 唾液が絡んでも全く平気だった。 むしろそのほうがより深い愛を重ねることが出来るような気がして有り難かった。 吉羅とぎこちなく舌を絡めあい、抱き合う。 お互いの肌が重なり温もりがシェア出来る。 この上ない幸せだと、香穂子は思った。 こんなにも幸せを感じたことは今までなかった。 吉羅は香穂子の華奢で柔らかな躰をしっかりと抱き締めながら、首筋から鎖骨にかけて唇を這わせていく。 それだけでも躰は甘く反応してしまい、どうしようもないぐらいに甘い旋律が駆け抜ける。 「…君は滑らかで柔らかくて美しい…」 吉羅は称讃するように言うと、香穂子の柔らかな胸元を大きな手のひらで愛撫してきた。 「…香穂子…」 吉羅に名前を呼ばれるのは、なんて幸せなことなのだろうか。 吉羅が手のひらで甘い刺激を送ってくると、香穂子は耐えきれずに何度も甘い声を上げた。 息が乱れてしまうぐらいに感じてしまう。 香穂子は熱い吐息を漏らしながら、吉羅にしがみついた。 吉羅の唇や舌で、甘く薔薇色をした胸の蕾を愛撫されると、甘くて気持ちが良い苦しみに満たされた。 躰の奥深くが熱い。 太陽のように沸騰しているように思えた。 香穂子はその熱さにくらくらしながら、吉羅にしがみつく。 下半身が痺れて熱くて、甘い蜜で満たされていく。 香穂子はその感覚に翻弄されながら、更なる刺激的な快楽をねだった。 吉羅の手は優しく香穂子の熱い場所に触れる。 それだけでも痛いぐらいのもどかしい快楽が突き上げてきた。 これほどまでの快楽を感じるのは初めてだ。 吉羅の指先が、禁断の花を押し分けて入ってくる。 花芯に触れられるだけで、口では言い表すことが出来ないぐらいの快楽を感じたのは、言うまでもなかった。 吉羅は我が物顔で香穂子のすんなりとした脚を開くと、中央に顔をうめてキスをしてくる。 自分が自分でなくなると感じてしまうほどに、香穂子は快楽に溺れていた。 |