*過去への扉*

13


 ずっと待っていた。
 それはどういうことだというのだろうか。
 吉羅は、香穂子が時空を越えてやってくるということを、知っていたのだろうか。
「…私が…、この時間軸にやってくるということを…、吉羅さんは知っていらっしゃったんですか?」
「いいや、そうじゃないよ…。そんなことは流石には解らないよ。ただ君が…、私の高校生の頃に一度だけ…、その姿で現れたことは覚えているよ。ほんの一瞬の邂逅だったけれどね」
「…あ…」
 香穂子にとってはついこの間のことなのだが、吉羅にとってはもうかなり昔の物語なのだ。
 それが不思議でならない。
「…君の姿とヴァイオリンの音色を聞いて、ファータどもが私の前に、いたずらで妖精を出したのかと思っていたよ。やつらは本当にある意味“何でもあり”だからね」
「そ、そうですけれどね…」
 香穂子が苦笑いをしていると、吉羅もまた笑う。
「ファータが日頃の私に労うために、君を遣わせたと思っていたよ。あれだけ短い時間の出会いであったのに、私は君を忘れることが出来なかった。運命を感じたと言っても良かったからね…。だから学院で、少し幼い 雰囲気を宿した君を見た時には、とても驚いたよ。それからはずっと目が離せなかった」
「…吉羅さん…」
 吉羅は、そよそよと流れる風に髪を靡かせながら、香穂子をそっと引き寄せる。
「…満月までしか一緒にいられないのは切ないが…、また君には逢えるからね。それは楽しみだよ…」
「吉羅さん…」
「今夜はふたりでゆっくりと過ごしたい…。構わないね…?」
「…はい…」
 香穂子はそっと頷く。
 それがどのような意味を持っているか、充実過ぎるほどに解っていた。

 夕食は軽くミッドタウンのレストランで取り、ふたりで吉羅の自宅に戻った。
 吉羅は、香穂子を抱き寄せると、そのまま甘いキスを浴びせてくる。
 お互いにしっかりと抱き合いながら、甘くて激しいキスを交わす。
 こんなにも甘いキスは他にはないのではないかと思う。
 お互いに息が出来ないぐらいにキスを交わした後、息を乱しながら見つめ合う。
 甘い蜂蜜のようなキスを交わしている。
 吉羅は香穂子を抱き上げると、そのままベッドルームへと連れていく。
 ずっとこうなることを夢見ていたというのに、いざこうなると緊張してしまう。
 吉羅は、香穂子のワンピースを優しく脱がして、そのまま抱き寄せた。
 こうして裸にされただけでもかなり恥ずかしいのに、今から肌をピッタリと重ね合わせる。
 その温もりが幸せを運んでくれるのだから。
 それだけでも幸せ。
 幸せな震えが僅かにくる。
 吉羅は香穂子を宥めるかのように頬にキスをくれた。
「まだ言っていなかったね…。香穂子…、君を愛しているよ」
 吉羅からの愛の囁きに、一気に涙がこぼれ落ちてくる。
 こんなにも泣きそうな気分を味わうなんて、思ってもみなかった。
 幸せ過ぎてどうしようもない。
 これは夢?
 それとも泡沫の恋なのだろうか。
 未来は…、香穂子のいる現代は、歴史が少しは変わってしまっているだろうか?
 それも今の香穂子には解らない。だが、確実に何か新しい未来が用意されているのは間違ない。
 香穂子はそう思うと、吉羅を真っ直ぐ見つめた。
「吉羅さん…、大好きです…」
 香穂子の囁きが合図のように、吉羅は手早く衣服を脱ぎ捨てる。
 なんて素敵なんだろうかと、香穂子は思った。
 鍛えられた肉体は、逞しいのに綺麗で、思わず見惚れてしまう。
 香穂子がうっとりと見つめていると、吉羅はフッと笑みを浮かべた。
「どうしたのかね?」
「吉羅さんはとても綺麗だなって思って…」
「有り難う」
 吉羅は甘い声で囁くと、香穂子を強く抱き締めてくれた。
 深い角度でキスをした後、吉羅は息を乱した。
「…君は本当に綺麗だね…。時間が経つごとに美しくなっていく…」
 吉羅はいつもよりもずっとずっと沢山の甘い言葉を囁いてくれている。それが嬉しかった。
 吉羅は、香穂子の首筋に唇を落としながら、肌をまさぐってくる。
 唇で愛される度に、手のひらで愛される度に、蕩けるような感覚が躰中に満ちあふれている。
 香穂子は、吉羅に愛撫をされる度に、女になっていく。
 心地好くてこのまま沈んでしまいたくなった。
 吉羅の唇が白い肌に沢山の所有の痕をつけていく。
 白い肌に咲く紅い花に、香穂子は恥ずかしさと誇りのどちらも感じていた。
 吉羅の唇と手のひらが、香穂子の乳房を捕らえる。
 緩やかに唇と手で愛されて、こんなにも甘くて刺激的な行為は他にないのではないかと、香穂子は思った。
 吉羅に愛される度に胸が張り詰めてくる。
 同時に躰の奥深い部分も、同じように張り詰めて来るのを感じていた。
「香穂子…」
「あっ…」
 吉羅の手が下肢にゆっくりと伸びてくる。
 その優しい感覚に、香穂子は溺れそうになる。
 恥ずかしいから、何とか堪えたいのに、なかなかそうはいかない。
 吉羅に優しく熱い場所を撫でられる度に、躰が小刻みに震えた。
 躰の深い部分から、熱くて甘い液体が先ほどから流れてくる。
 その感覚は初めてで、香穂子はどう反応して良いのか解らないぐらいに感じてしまい、脚をもがくように閉じようとした。
「…香穂子…」
 吉羅は宥めるように香穂子の名前を呼んだ後でフッと笑うと、熱い場所を指先で開いてきた。
「…やっ…、あっ…!」
 吉羅の巧みな指の動きは、香穂子から僅かな抵抗や羞恥を失わせる。
「…吉羅さん…っ!」
 吉羅の指先は香穂子の熱い部分をくすぐる。その指の動きに、香穂子は腰が揺れてしまう。
 指先の動きに完全に翻弄されてしまっていた。
 それは、このようなことに慣れてはいないからだろうか。
 ぼんやりとそのようなことを香穂子は思っていた。
 吉羅が指先を動かす度に、香穂子の熱い蜜はかなりの勢いで流れて行く。
 それでは困ってしまうと思ったのだろうか。
 吉羅は香穂子の脚をいきなり開けると、蜜の溢れる部分に唇を押し付けてきた。
 それだけでも恥ずかしいのに、吉羅は蜜を舐めてきたのだ。
「…やっ…!」
 まさかこのようなことをされるとは思っていなかったのだ。
 蜜を舐められると、腰が痺れてしまうほどに、感じてしまう。
 腰がゆらゆらと揺れて、頭が痺れてしまった。
 こんなにも気持ちが良い愛撫を受けていると、もうどうして良いのかが解らない。
 吉羅の愛撫が激しくなり、快楽を感じる余りに、香穂子は益々どうして良いのかが解らなかった。
 全身が痺れるほどに感じる。
 次の瞬間、躰が小刻みに震えてしまう。
 もうどうして良いかが解らないと思った瞬間に、躰が一気に持ち上げられて、快楽の溜め息がこぼれ落ちた。

 ぼんやりとしていると吉羅に思い切り抱き締められた。
「…君を私のものにする…」
「…はい…」
 吉羅のものなる。
 それだけでも嬉しい。
 香穂子が合図をすると、吉羅は熱い場所に自身の欲望を炙り出してきた。
 吉羅は、香穂子の欲望がくすぐる場所に自分自身をゆっくりと沈めてくる。
 最初は痛くてしょうがなかったのに、吉羅が宥めてくれている間に、痛みはやかで快楽へと変化する。
 吉羅とひとつになり、熱を煽られる。
 躰が一気に高みまであげられて、激しい情熱に飲み込まれていく。
 香穂子は、吉羅に何度も突き上げられながら、素晴らしき世界へと向かう。
 もう何もいらないぐらいに幸せだ。
 香穂子はそのまま快楽に呑み込まれていった。



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