8
香穂子は直ぐに意識を取り戻した。 吉羅が準備をし終えた後に、香穂子はゆっくりと意識を戻す。 「…暁彦さん…」 「…君を私のものにする。構わないね?」 あくまで紳士的でありながらも、吉羅は瞳を欲望でたぎらせている。 吉羅が欲しい。 それは香穂子も同じだ。 「…私も…あなたが欲しいです…」 香穂子が素直に、そしてほんの少しだけぎこちなく言うと、吉羅は甘い微笑みをくれた。 「…有り難う…。君を奪うよ…」 吉羅に奪われるなら、こんなに幸せなことはない。 香穂子が頷くと、吉羅は脚を大きく開けた。 恥ずかしかったが、吉羅がそう望むのであればー恥ずかしくても従うことが出来た。 「…愛している…」 「…はい…」 吉羅の言葉は、なんて素敵なのだろうかと思う。 愛の言葉を囁かれて、香穂子は全身が満たされる。 吉羅の欲望が、入口にあてがわれた。 その力強さに、香穂子は思わず怯んでしまう。 こんなに力強い吉羅を感じるのは初めてだったから。 吉羅は、香穂子が躰を硬くしたのを感じ取った。 「…大丈夫だ…。怖くはない…」 「…はい…」 吉羅に囁かれて、香穂子は少しだけ力を抜くことが出来た。 吉羅がゆっくりと体内に入ってくる。 入口を押し広げられた感覚に、香穂子は痛みを覚えた。 「…あっ…! 暁彦さんっ…!」 香穂子は掠れた声で呟くと、痛みの余りに顔をしかめた。 ひとつになることが、こんなにも痛いなんて思ってもみなかった。 だが、この痛みは堪えることが出来ると香穂子は思った。 大好きなひとと一つになるというのは、それだけ価値のあるものだからだ。 「…香穂子…、しがみつけば良いから」 「…はいっ…!」 吉羅に言われた通りに、香穂子はしがみついて、その痛みに耐え抜く。 大丈夫だ。大好きなひとがいるのだから。 香穂子が耐え抜いているのを知っているせいか、吉羅は痛みを和らげるように何度も優しいキスをしてくれた。 甘くて幸せなキスに、香穂子は堪えられると思った。 吉羅は、ゆっくりと胎内に進んでいく。 力強く、そして確実に。 香穂子は、徐々に受け入れていけるようになった。 こんなにも気持ちが良い感覚は久し振りだと思う。 痛いのに気持ちが満たされているせいで、気持ちが良かった。 吉羅が香穂子の胎内で止まる。 圧迫が苦しいぐらいに満ち溢れていて、香穂子も思わず呼吸を止めた。 「…暁彦さん…っ!」 吉羅は静かに動き始めた。 吉羅の動きはとても滑らかで素晴らしくて、香穂子は思わず、大きな吐息を零した。 先ほどまではあんなにも痛くてたまらなかったというのに、今は天に昇っていくかのように気持ちが良い。 こんなに素晴らしい快楽は初めてだ。 吉羅が動けば動くほどに、快楽は高まっていく。 鼓動が激しくなり、快楽もまた高ぶる。 視界が揺れるほどに気持ちが良くて、香穂子はもう目を開けてはいられなかった。 「…暁彦さんっ…!」 吉羅の突き上げがかなり激しくなり、香穂子は華奢な躰を思い切りのけ反らせた。 もう堪えられないぐらいに気持ちが良い。 何もかもが揺れて、香穂子は吉羅にしがみついた。 「香穂子…っ!」 「暁彦さん…っ!」 香穂子が快楽に躰を震わせながら意識を手放すと、吉羅もまた逞しい躰を弛緩させる。 そのまま意識が墜落していくのが解った。 目覚めると、吉羅が自体香穂子を見つめてくれている。 「香穂子…」 「暁彦さん…」 「有り難う…、君は本当に素晴らしい…」 吉羅は魂の底から囁くと、香穂子を抱き寄せてくれた。 なんて幸せなのだろうか。 なんて満たされているのだろうかと思った。 「…暁彦さん…、心から愛しています…」 「私もだ…」 吉羅は香穂子に囁くと、唇に羽根のようなキスをくれた。 「君は素晴らしいよ…」 「暁彦さんこそ、素晴らしいです…」 ふたりでしっかりと抱き合っているだけで、なんて幸せなのだろうか。 「君を離さないから」 「はい」 ふたりはどちらからともなくキスをすると、再び愛の世界へと向かう。 幸せで幸せでしょうがなかった。 香穂子と愛し合った後、ふたりで寄り添って眠る。 なんて幸せでなのだろうか。 吉羅は香穂子の寝顔を見ながら、満たされるのを感じた。 愛している。 もう離すことなんて出来やしない。 香穂子がそばにいなければ、もう生きていけないのではないかと思った。 翌朝、香穂子はとても満たされた気分で目覚めることが出来た。 時計を見るとまだ起きるには早い。 今日は何曜日なのか、一瞬、忘れてしまっていた。 今日は土曜日だ。 ゆっくりと眠っていられる日だ。 もう少しのんびりしていたい。 香穂子がまるくなって吉羅に抱き付くと、逆に抱き寄せられた。 「…起きたのか…?」 「…はい。起きました。けれど…まだ起きるのは早いので、もう少し眠れるかなあって思ったんですよ」 「…今日は土曜日だからね…」 「はい」 吉羅はまだ半分眠っているようで、香穂子の肩に顔をくっつけてくる。 そのくすぐったい感覚に、香穂子は思わず笑みを漏らした。 「…もう少し眠りましょう。暁彦さんとこうしていられるのが、本当に幸せですから」 「…香穂子…」 吉羅は更に香穂子を抱き寄せてくる。 ずっとこうしていられたら良いのにと、思わずにはいられなかった。 香穂子が目を閉じると、吉羅に再び躰をまさぐられてしまう。 「え…!?」 「…君が朝から欲しくてどうしようもないからね…」 吉羅は甘い声で呟くと、香穂子を愛の世界へと誘った。 ふたりで顔を合わせて朝食を取るのが、気恥ずかしい。 吉羅と、本当にお互いの想いが通じ合ったのかと思うと、嬉しくてしょうがなかった。 「今日は何かしたいことはあるかな? 今日と明日は甘やかしデーにしようかと思ってね」 「嬉しい。あ、私、暁彦さんと散歩がしたいですっ!」 ずっと夢見ていた。 恋人同士になったら、恋人として吉羅と手を繋いで散歩をしたかった。 「…散歩ね。解ったよ。ミッドタウンの裏の公園に行こうか」 吉羅は、香穂子に対して苦笑いをしながら、頷いてくれた。 「…私、手を繋いで暁彦さんと歩きたいんです」 「ああ。ゆっくりとしようか」 「はい」 吉羅ととっておきの時間が送れる。それが嬉しくてしょうがなかった。 朝食の後、ふたりは手を繋いでミッドタウン裏手にある公園へと向かう。 吉羅は、白いシャツにヴィンテージ物のスマートなジーンズを身に着けている。 吉羅はモデルのようなスタイルの持ち主であるせいか、ジーンズも素晴らしく着こなしていた。 サングラスも、レイバンをさり気なくかけていて、うっとりと見つめてしまいたくなる。 本当に素敵だ。 いつまでも見つめていたいと、香穂子は思わずにはいられなかった。 お互いに離れないようにと、しっかりと手を繋ぐ。 秋の風を頬に感じながら、香穂子はほわほわとした幸せを感じていた。 「こうしてふたりで散歩が出来るというだけで嬉しいです」 「そうだね」 ふと、ふたりの前に、とても似合いの夫婦が、バギーカーを押しながら歩いてくるのが見えた。 いつか吉羅とこうなれたら良いのにと思わずにはいられなかった。 ミッドタウンに入り、テイクアウトに香穂子の大好きな甘いカップケーキを買いにいく。 「あら、暁彦さん」 麗しい声が背後から聞こえる。 その瞬間、香穂子は手を離そうとしたが、吉羅に握り締められた。 |