*Love Afair*


 吉羅と一緒に暮らし始めて十日が経つ。
 想像以上に吉羅が家に帰ってきて夕食を一緒に取ってくれる。
 香穂子にとってはそれが嬉しい。
 毎晩、一緒に食事をしてくれる。
 それが嬉しくてしょうがなかった。
 まだ、本当の意味で結ばれてはいないが、それでも吉羅がそばにいて、一緒に夜を過ごしてくれることは大きかった。
 今夜も香穂子はお風呂に入ったタイミングで、ダイニングで吉羅に逢う。
 相変わらずミネラルウォーターを片手に仕事をしている。
 ひょっとして、香穂子と一緒に夕食を取るために、吉羅は家で仕事をしてくれているのではないだろうか。
 香穂子はそうであれば嬉しいと思いながらも、そうでなかったことを考えると、吉羅に訊く事は出来なかった。
「香穂子、仕事もひと段落ついたんだが、一緒に紅茶でも飲まないかね?」
「有り難うございます。嬉しいです」
 香穂子は笑顔で答えると、キッチンに立った。
 キッチンに立って、吉羅が出して来てくれたとっておきのもの茶葉を使った紅茶を準備する。
 香穂子は香りが嗅ぎながら、安らいだ気持ちになった。
 二人分の紅茶を飲む。
「こうした時間は大好きです。気分が華やぎますから」
「…確かにね。華やいだ気分になるし、落ち着くね」
「はい。幸せな気分です」
 ふたりで肩を並べてお茶を飲むだけで、幸せがほのかに上がってきた。
「こうして一緒に過ごして頂くと、とても嬉しいです」
 ほっこりとした気分で、香穂子は素直な気持ちで呟く。
 吉羅は、一瞬、驚いたような表情で呟いた後、香穂子に優しい笑みを浮かべた。
「…これからはこうした時間を毎日取りたいものだね」
「有り難うございます。そうして頂けると幸せです」
 香穂子は優しく笑うと、紅茶の味が、とても甘くなったような気がした。
 幸せな甘さに、更に笑みになる。
 吉羅は香穂子の頬に触れて来る。
 触れられただけで、酔っ払ってしまいたくなるほどの幸せを感じた。
「…香穂子…」
吉羅の何処か少年らしさを残した深みのある声で名前を囁かれて、香穂子はうっとりとする余りに目を閉じた。
 すると吉羅の吐息が唇にダイレクトにかかる。
 余りに近くてドキドキする余裕がないぐらいだ。
 吉羅の顔がかなり近い。
 だが、恥ずかしさとときめきで、瞳をハッキリと開けることが出来ない。
 開けたいのに開けられない。
 そんな気分だった。
 やがて、吉羅の潔癖な雰囲気の唇が、香穂子のそれに重なってくる。
 浅かったそれが、段々深くなっていくのが、香穂子にも解った。
 久し振りの吉羅とのキス。
 結婚式以来のキス。
 あの時はとても儀礼的で、本当に触れるだけのキスだった。
 だが今は、本格的なキスだ。
 こうしてキスをするのは初めてなのだ。
 キスは深まっていく。
 香穂子は抱き寄せられて、本当に幸せな気分を味わう。
 しっかりと抱き締められると、なんて幸せなのだろうかと思わずにはいられない。
 香穂子は、うっとしとした幸せを感じながら、吉羅にそっと抱き着いた。
 すると吉羅は、更にキスを深めて来る。
 吉羅の舌が、香穂子の口腔内を優しく侵略してくる。
 舌先で、緩やかに愛撫をされて、香穂子は背筋に震えるほどの快楽を感じた。
 なんて気持ちが良いのだろうかと思う。
 こんなに気持ちが良いものは他にはないのではないか。
 吉羅のキスに夢中になって、香穂子は溺れていった。
 紅茶なんて忘れた。
 今はお互いのキス以外に夢中になれるものなんてない。
 香穂子はしみじみとそう思いながら、吉羅の逞しい躰に、自分の柔らかで華奢な躰を押し付けた。
 吉羅にただただ自分を委ねる。
 どうして良いかは具体的には解らなかったが、自分自身でそうすべきだと判断することが出来た。
 それはとても嬉しい。
 しっかりと抱き寄せられたまま、香穂子は幸せな甘いデザートを食べたような気分になっていた。
 こんな気分にさせてくれるのは、十中八九、吉羅しかいない。
 呼吸が続けられなくなるぐらいまでキスを続けた後、吉羅は一旦唇を外した。
 吉羅の艶やかなまなざしで見つめられてしまうと、恥ずかしさに頬を染めてしまう。
 だが、視線を外したくはなかった。
 こんなにも恥ずかしいのに、こんなにも嬉しいことなんて他にはない。
 香穂子はただうっとりと吉羅を見つめていた。
 すると、吉羅は、今度は啄むような可愛いキスをしてくる。
 香穂子もぎこちなくはあるが、吉羅の見よう見まねをしながらキスを続けた。
 愛している。
 恋している。
 そんな気持ちを伝えるのに、これほど良い方法はないのではないかと思った。
 何度もキスをしていると笑顔になる。
 大好きな男性としているキスは、魔法のような気分にさせられた。
 ようやくキスを終えても、まだ足りないような気がする。
 それだけ吉羅を愛しているのだからしょうがない。
 香穂子は僅かに視線を下に向けると、吉羅に触れるだけのキスをして、その綺麗で逞しい躰を抱き締めた。
 すると吉羅の躰が僅かに動いたような気がした。
 自分でもコントロール出来ないのか、僅かに息を乱している。
 香穂子はその様子を、じっと見つめてしまう。
 吉羅と視線が絡み合った瞬間、今までよりも更に激しく抱き寄せられた。
「…あっ…」
 まるで自分の声ではないかのような艶のある声変わり唇から漏れてくる。
 それが気持ちが良くて、香穂子はうっとりとした気分になった。
「…暁彦さん…」
 名前を呼ぶと、吉羅は欲望を滲ませた、とても綺麗なまなざしを向けて来る。
 見つめているだけで圧倒される。
 吉羅は、香穂子のパジャマの隙間から手を入れてくると、直に乳房をまさぐってきた。
「…あっ…!」
 吉羅は夢中になっているかのように、愛撫を繰り返して来る。
 優しく何度も揉み上げられて、香穂子もまた息を乱す。
 触れるだけで、こんなにもうっとりとしてしまうなんて。
 吉羅に触れられるだけで、躰の奥深くが熱くなり、やるせないほどに吉羅を求めている。
 香穂子が甘い呻き声を上げたところで、吉羅に抱き上げられた。
 吉羅とただただ見つめ合う。
「君を本当の意味でも妻にする。構わないね?」
 吉羅に力強く宣言をされて、香穂子は頬を赤らめながら、頷いた。
 そのまま吉羅のベッドルームへと連れていかれる。
 ずっと夢見ていたことが叶うのだ。
 本当の意味でようやく夫婦になることが出来るのだ。
 それは香穂子にとっては、何よりも嬉しいと言っても良かった。
 吉羅がベッドに寝かせてくれる。
 直ぐに手早くシャツを脱ぎ捨てる。
 その仕草がとても官能的だ。
 吉羅の仕草を見つめているだけで、香穂子は喉がからからになってしまうぐらいに、ドキドキした。
「…暁彦さん…」
 名前を呼ぶと、吉羅は思い切り抱き締めてきてくれた。
 吉羅は、香穂子のパジャマを器用にも素早くはぎ取る。
 恥ずかしかったが、吉羅と同じように生まれたままの姿になりたかった。
 吉羅に生まれたままの姿にされ、じっと見つめられる。
 称賛するようなまなざしで見つめられれば、恥ずかしいのに、見つめて欲しいと思ってしまった。
 吉羅は香穂子をじっくりと見つめた後、再び唇を重ねて来た。
 愛しているからこそ、こうして肌を重ね合わせたいと思う。
 香穂子は幸せのキスに、何度も溺れると同時に、楽しむ事も忘れなかった。
 何度もキスを交わした後で、吉羅は香穂子の首筋から鎖骨にかけてのデコルテにキスの雨を降らせてきた。



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