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目を開けると吉羅と目が合う。 香穂子はうっとりと艶のある大好きな男性の顔を見つめた。 すると吉羅が頬をまろやかに撫で付けてくれる。 「…大丈夫かね…?」 「…大丈夫です…」 香穂子がにっこり笑うと、吉羅は気遣うように抱き締めてくれた。 「有り難うございます…」 香穂子がはにかんで言うと、吉羅は逞しくもしなやかな躰を、押し付けてきた。 「君を本当の意味で、私の婚約者にする…。構わないね?」 「はい」 大好きな男性と結ばれる。 夢を見ていたことが叶うのだ。 香穂子は吉羅に総てを委ねるために、しっかりと抱き締めた。 吉羅の熱くたぎったものが、香穂子の入口に押し当てられた。 その力強さに、香穂子は思わず言葉を失ってしまう。 怖い。 なのに早く吉羅とひとつになりたい。 香穂子はそれだけを強く思い、躰を開いていく。 吉羅はといえば、ゆっくりとそして確実に香穂子の胎内に入ってきた。 「…いっ…!」 入口を押し広げられて、香穂子はその痛みに涙を滲ませた。 こんなにも痛いなんて思ってもみないことだった。 だが、このまま止めて欲しくはなかった。 香穂子は躰に響く痛みを何とか耐える。 「大丈夫か?」 吉羅は香穂子の痛みを察してか、優しく声を掛けてくれる。 「…だ、大丈夫…」 本当は大丈夫ではない。 それは解っている。 だが、香穂子は何とかその痛みに耐えようと必死になっていた。 この痛みの鋭さに、香穂子は息苦しくなる。 だが、嫌な痛みではなかった。 吉羅は香穂子をなだめるように、甘いキスを何度も続ける。 キスの優しさに、香穂子の躰の強張りや緊張は、いつしか綺麗に消え去っていくのが解った。 「…香穂子…」 「…あっ…!」 吉羅が胎内を進んでいく度に、香穂子は痛みのなかにこの上ない幸せを感じた。 「…あっ…!」 吉羅が奥にたどり着く時、躰を貫くような痛みを感じ、香穂子は思わず躰をのけ反らせた。 吉羅がそれを上手く受け止めてくれる。 「香穂子…」 痛みと幸せに、香穂子の瞳から涙が零れ落ちた。 「…香穂子…」 吉羅が唇で涙を吸い上げてくれる。 「…嬉しいです…。私…」 掠れた声で言うと、吉羅は軋むほどに抱き締めてきた。 「……!」 「…君は本当に可愛い…ね…」 「…暁彦さん…」 香穂子が名前を呼ぶと、ゆっくりと胎内を動き始めた。 「…やっ…んっ…!」 吉羅の蕩けるようにゆっくりとした優しい動きに、香穂子は甘い感覚を奥深い部分で感じた。 甘過ぎる動きが、香穂子に快楽を呼び寄せる。 吉羅の動きは、甘いものから激しいものへと変わっていく。 「…あっ…! ああっ…!」 信じられないほどに感じながら、甘くて激しい吐息を宙に舞わせる。 自分ではどうしようもないぐらいに気持ちが良くて、香穂子は思わず吉羅にしがみついた。 「あっ、ああっ!」 胎内で、吉羅が更に熱く力強さを増して、香穂子を抉るように攻めてくる。 あまりにもの激しい快楽に、香穂子は、もうどうすることも出来ないぐらいに感じてしまっていた。 吉羅を愛している。 これ以上愛するひとはいないぐらいに愛を感じている。 既に視界は揺れて、どうすることも出来ずにただ吉羅にしがみつくだけだ。 吉羅の動きがかなり激しさを増している。 その動きに、香穂子はもうどうなっても良いと思うぐらいに蕩けていく。 頭の先から爪先まで、痺れるように感じながら、香穂子は肌を粟だたせる。 もう何もいらない。 香穂子は高みへと上り詰めていく。 吉羅が渾身の力で突き上げた。 「…あ、あ、ああっ…!」 意識がふわりと何処かへと飛び、香穂子はそのまま沈み込む。 こんなにも幸せな快楽はないと思いながら、目を閉じた。 まだ余韻で躰の奥深くが痺れている中、吉羅は香穂子の甘い肢体を抱き締めてくれた。 「…香穂子、有り難う…」 吉羅は甘い声で囁いた後で、香穂子の躰を慈しむかのように撫で付けてくれる。 「…私こそ嬉しいです…。有り難うございます…」 愛する男性と結ばれるなんて、この上ない幸せだと思う。 「君は今日から私のものだ…。本当の意味で婚約者だから」 「…はい…」 吉羅の言葉に香穂子は泣きそうになる。 「…有り難うございます…」 「礼を言うのは私のほうだ。香穂子…本当に有り難う…」 吉羅は、うっとりとするほどに甘いキスをしてくれると、香穂子を再び組み敷いてくる。 「…君が際限なく欲しいんだよ」 「吉羅さん…」 吉羅は額にキスをくれた後、再び香穂子を愛し始める。 情熱的に愛されて、香穂子はこのまま蕩けてしまっても構わないと思った。 何度愛し合ったのか解らないぐらいに、甘くて幸せが溢れた時間を過ごすことが出来た。 香穂子はこの上ない幸福に包まれながら目をゆっくりと開いた。 すると吉羅が既に、目覚めていてじっとこちらを見ているのが解る。 寝顔を見られていたなんて、恥ずかしくてたまらない。 「見ていたんですか…?」 「ああ…。寝顔は小さな頃の面影があると思ってね…」 「何だか恥ずかしいです」 何もかも完璧な吉羅暁彦に寝顔を見られていたことが、香穂子には恥ずかしくてたまらなかった。 つい視線を逸らせてしまう。 「…香穂子、おはよう」 吉羅がおはようの甘いキスをしてくれるのが、この上なく幸せに思える。 「…君を離す気はないから、そのつもりで…」 「…はい…」 ギュッと抱き締められて、香穂子も思わず笑顔で抱き締めた。 再び吉羅に組み敷かれて、愛の洗礼を受ける。 香穂子は、こんなにも幸せで良いのかと、思わずにはいられなかった。 ゆっくりと目覚めて、ふたりでブランチを食べに出掛ける。 このまま吉羅が家に送ってくれるのだという。 それが特別な存在のように思えて嬉しい。 吉羅は、香穂子がきちんと左手薬指に指環をはめているかを確認するように見つめた。 左手薬指を吉羅はそっと撫で付ける。 「香穂子、この指環は外さないように」 「はい」 香穂子は嬉しさの余りに、頬を赤らめて頷いた。 ブランチの後、手を繋いで、ふたりでぶらぶらと歩く。 こうして歩いていると本当に幸せだ。 吉羅のことをずっと好きでいて良かったと、香穂子は思わずにはいられなかった。 爽やかな風と幸せな気持ち。 そして都会のオアシスのようなグリーンに囲まれた場所。 今なら素直に言える。 吉羅のことを本当に心から愛している。 こんなにも愛したひとは他にいないのではないかと、香穂子は思う。 ずっと好きでいて良かった。 香穂子は吉羅の横顔を見つめながら、にっこりと微笑んだ。 「吉羅さん、大好きです。あなたのことを本当に愛しています」 香穂子は素直に自分の気持ちを伝える。 本当に心から思っていることを。 だが、吉羅は、一瞬、目をスッと神経質に細める。 まるで気に入らないかのように。 その瞳は、吉羅が機嫌が悪い時と同じものだ。 香穂子はこころがピリピリと痛むのを感じる。 かなり息苦しい。 吉羅には愛されてはいないのではないかと、思わずにはいられなかった。 手を一瞬放しそうになる。 すると逃さないとばかりに、吉羅は思い切り手を握り締めて来た。 香穂子はハッとして吉羅を見たが、何の反応もしない。 表情も全く変わらない。 香穂子は切なくなるのを感じながら、俯いてしまった。 先ほどまで心地よかった雰囲気が一気に色褪せたような気がした。 |