*背伸びをしても*


 吉羅にベッドに寝かされて、ワンピースをはぎ取られる。

 丁寧に剥ぎ取られて、香穂子は恥ずかしさの余りに、思わず顔を背ける。

 吉羅とこうなることを期待したり、想定したりしてはいなかったが、ランジェリーはなるべく素敵なものを選ぶようにと天羽に言われたせいか、香穂子は気品がある可愛らしさのなかに、艶もあるランジェリーを選んで、身につけてしまっていたのだ。

 それはひょっとして、女性としての本能だったかもしれない。

 香穂子は吉羅の視線を肌で受け取りながら、ドキドキが爆発しそうな気持ちになっていた。

「……香穂子、目を開きなさい」

 吉羅の艶やかな声に命令されてしまうと、香穂子は従わずにはいられなくなってしまう。

 吉羅の声はそれだけ威力があるのだ。

 香穂子のはにかみやプライドなんて吹き飛ばしてしまうぐらいに。

 香穂子がおずおずと目を開けると、吉羅はスッと目を細めた。

 その瞳に宿る光には、大人の男の艶やかさがある。

 香穂子はときめきでこの身を焼かれて、消えてしまうのではないかと思った。

 こんなにもロマンティックで熱い感情が自分の中にあったなんて、香穂子には驚きだった。

「……私が君を今からどのように愛するのか見るんだ」

 吉羅は香穂子のランジェリーを丁寧にはずして、脱がしてゆく。

 愛するひとの前で、生まれた姿になる。

 ずっとその日をくすぐったくも、想像していた。

 そして、それが今、まさに、リアルで起こっているのだ。

 香穂子は、ただ人形のように、吉羅に成されるがままになっていた。

 胸が露になると、吉羅はまるで芸術品でも鑑賞するかのように、じっと見つめてくる。

 そんなに熱く見つめられると、何も出来ない。

 生まれたままの姿にされて、香穂子は流石に吉羅の艶やかな目差しに晒すのが嫌で、上掛けを探そうとした。

 だが、すぐに吉羅に手を掴まれて阻止をされる。

「上掛けは必要ないよ」

 吉羅はキッパリと呟くと、自身のスーツを、スマートに脱ぎ捨てていく。

 ジャケットを脱ぐしぐさも、ネクタイを緩める仕草も、そしてカッターシャツを脱ぎ捨てる仕草も。

 総てが洗練されていて、かつ艶やかだ。隙なんてどこにもない。無敵にしか見えなかった。

 香穂子は夢中になって見つめずにはいられない。

 目を逸らすことが出来なかった。

 吉羅の鍛えられた美しい彫刻のような身体が、香穂子の柔らかな身体にそっと重なる。

 固くて引き締まった吉羅の胸に強く抱き締められて、香穂子は息が出来なくなる。

 こんなにもしっかりとした胸に、抱かれていたなんて、抱かれるなんて、ずっと思っても見ないことだったから。

 吉羅に抱き締められるだけで、幸せで胸がいっぱいになり、香穂子は泣きそうになる。

 吉羅を抱き締めたい。

 香穂子は、おずおずと吉羅の背中に腕を回した。

 すると激しいキスが、唇に降り注がれた。

 吉羅を愛している。

 吉羅は今だけは、自分のものだから。

 だからこの瞬間は深くて情熱的な愛を感じたいと、思わずにはいられない。

 香穂子は吉羅と、何度も何度も啄むようにキスを重ねた。

 こうして生まれたままの姿で、肌をダイレクトに感じながらキスをする。

 なんて幸せなのだろうかと、香穂子は思わずにはいられない。

 吉羅の唇は、首筋からデコルテへとゆっくりと移動する。

 首筋を強く吸い上げられて、香穂子は肌が震えてしまう。

 こうして唇で吉羅に愛されるだけで、こんなにも幸せなのだと、改めて感じずにはいられない。

 肌が吉羅に愛されていることに喜びを感じている。その証拠に艶やかで甘く滑らかな肌になってゆく。

 吉羅のためだけに、肌が輝いていた。

 愛するひとに愛されるのは、こんなにも満たされて、綺麗にしてくれるのかと、改めて思わずにはいられなかった。

 まるで香穂子が世界で一番素敵な女性のように扱ってくれる。

 香穂子は嬉しくて、泣きそうになる。

 きっとこの瞬間だけは、世界で一番吉羅に愛されている女性になれる。

 嬉しくて、香穂子は吉羅を抱き締めた。

 今だけは吉羅を独占したいと思った。

「……君は、こんなにも綺麗なんだね……。君を誰にも渡さないから、そのつもりで……」

 吉羅が称賛するようにくぐもった声を出す。

 吉羅は離さないでくれるだろう。

 だが、誰かと吉羅を共有するのは、嫌なのだ。

 吉羅は自分だけのものでいて欲しいなんて、わがままなことを考えてしまう。

 不意に、吉羅は香穂子を見つめる。

「……香穂子、不安にならなくても良い……。私は君を悪い風にはしないから……。今は、私だけを感じるんだ……」

「……吉羅さん……」

 吉羅は敏感だ。香穂子の気持ちに気づいている。

 不安になりたくはない。

 出来ることならば。

 だが、誰かと吉羅を共有する限りは、不安な気持ちがぬぐい去られることはないのだ。

 愛しているから、こんなに不安になるのだということを、吉羅は理解出来ないだろう。

 吉羅は香穂子が逃げないようにするかのように、しっかりと抱き締めてきた。

 まるで香穂子にすがっているようにしか思えないぐらいに。

 香穂子は吉羅の切ない想いを一瞬、感じ取る。

 あの吉羅が不安になるなんてあるのだろうか。

 香穂子はついそう考えてしまう。

 吉羅は香穂子の柔らかな形の良い胸に、掌を宛がう。

 掌を宛がわれただけなのに、香穂子は感じてしまい、ついうっとりとしてしまう。

 感じるという感覚は、このようなものなのかと、思わずにはいられなかった。

 吉羅は大きな手を使って、柔らかく香穂子の胸を揉み込み始めた。

 ゆっくりと優しい動きなのに、身体の奥が敏感に感じてしまう。

 大好きなひとに、こうして愛撫をされると、なんて気持ちが良いのだろうかと思わずにはいられない。

「……あっ!」

 全身がざわめいてしまうぐらいに感じているからか、香穂子は身体を仰け反らせてしまう。

 吉羅が、胸の上の蕾を強く吸い上げてきた。

 身体の奥が蕩けてしまい、情熱的に熱い蜜が熔け出してくる。

 香穂子の中心が潤って、鈍い快楽が全身を貫く。

 蕾を舌先で転がされて、香穂子は、身体が吉羅色に淫らに染め上げられていることを自覚する。

 吉羅よりも愛せるひとなどは現れないと、自覚せずにはいられない。

 吉羅色に染められたら、もう二度と忘れられないだろうと、香穂子は切なく感じていた。

 



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