*キスの後の距離*

中編


 小松のキスにいつも以上の甘さを感じる。

 優しいのに情熱的なキス。それゆえの甘さなのかもしれない。

 小松は唇を離すと、妖艶に微笑んだ。

 ゆきは、もっとキスが欲しくて、ついうっとりと小松を見つめてしまう。

「……随分、情熱的な眼差しになっているね」

「え、あ、そんなつもりは……」

 本当にそんなつもりはないのだが、つい狼狽えてしまう。

 小松を見つめる眼差しは、いつもごく自然に見つめる。

 感情を滲ませるのが、ごく当たり前のようになっている。

「君は、殆ど準備は整っているように、私には見えるけれど」

 小松はもう一度、ゆきをしっかりと抱き寄せた。

 小松に抱き寄せられると、ゆきは甘い気持ちでどうにかなりそうだった。

 全く落ち着かない。

 ゆきが甘く震えると、小松はそれを敏感に察知し、ただ頷いた。

「……ちょっとまだかな。紅茶を飲みながら落ち着こうか」

 小松は渋々抱擁をとく。

「……はい」

 小松に抱き締められていた余韻で、鼓動はまだドキドキしている。

 落ち着かない。

 ゆきは、ティーカップを両手で包み込むように持ちながら、甘い緊張を鎮めようとした。

「ゆき、準備が出来るって意味、分かる?」

 ゆきは直ぐに首を横に振る。

「それが分かれば、こんなに苦労はしません……」

「確かにそうだね。分かれば誰も苦労はしない」

 小松は微苦笑しながら、紅茶を飲む。

「緊張はする。だけど、このひとと、一緒になりたいと思って、ごく自然に相手を受け入れられること、だろうね」

 だろうね。

 その言葉が、総てを表しているような気がした。

 小松であっても、だいたいのところしか、分からないのだ。

 これはきっと、戯れではない恋情を重ねたことがないか、あるいは少ないということなのだろう。

 だが、それは、至極、当たり前のようにも思えた。

「帯刀さんも緊張しますか?」

「緊張するよ。ごく当たり前にね」

 小松はゆきを真っ直ぐ見る。

「君ばかりが心配しなくても大丈夫だから。皆、考えることは変わらないから」

 小松も同じなのだと思うだけで、ゆきの緊張が少しずつ解れる。

 なに、一人で、悶々としていたのだろうかと、ゆきは思わずにはいられなかった。

「話して良かったです」

「私も話を訊いて良かったと思っているよ」

 小松とゆきはお互いに見つめあうと、そのままごく自然に微笑みあった。

 温かい。

 そして安心する。

 そうすると、改めて小松に抱き締められたくなる。

 キスをしてもらいたくなる。

 甘い時間が欲しくなる。

 小松と視線が絡む。

 すると、ごく自然に唇が重なった。

 最初は柔らかく優しく、お互いを慈しむように。そして徐々に深く情熱的になっていく。

 互いに何度も何度もキスを繰り返す。甘いキスの応酬に、ゆきは徐々に頭がくらくらしてきた。

 甘い口づけをもっと交わしたいと、ゆきはごく自然に思う。

 甘さが濃厚な熱さに代わり、ゆきを蕩けさせていった。

 甘い口づけ。

 そして、文字通り激しいキス。

 その口づけの濃密さをもって欲しいと、ゆきは思った。

 息が出来ないぐらいにキスをした後、小松とふたりで見つめあう。

 小松の艶やかな眼差しが、真っ直ぐゆきを捉える。

 その眼差しになら、全身を焼かれても良いと、ゆきは思った。

 小松に優しく床に押し倒される。

 とても自然で、ゆきは抵抗したいとすら思わなかった。

「……ゆき」

 小松に名前を呼ばれて、ゆきは全身を委ねても良いと思った。

 これがごく自然に起こることなのだろうか。

 怖くもない。

 ただ、小松に総てを任せたかった。

 このひとしかいないということは、誰よりも分かっていたからだ。

 小松はゆきを抱き締める。繊細なガラス細工を抱き締めるように優しく。

 小松に包容されるだけで、言葉に出来ないぐらいの幸せが全身に走り抜けた。

「愛している、ゆき」

 愛の言葉を囁かれると、ゆきはそれだけで溶けそうになった。

 小松の唇がゆきの首筋に這う。

 ごく自然なキス。

 ドキドキしたが、同時にロマンティックだと、ゆきは思った。

 小松が言うように、本当にごく自然な流れだった。

 悶々と悩みながらも時が来たのだ。

 小松と結ばれる時が。

 ゆきはそれが嬉しい。

 今まで悩んでいたのは、何だったのだろうかと思ってしまうほどだ。

 小松は、ゆきの衣服を取り除いてゆく。

 恥ずかしくて、身体を小さくしてしまいそうになる。

 ゆきは、耳まで真っ赤にさせながら、身体を小さくさせた。

「ゆき、どうしたの?」

「……恥ずかしくて……」

「君は、相変わらず可愛いね。恥ずかしがらなくても、大丈夫だよ」

 小松はくすりと微笑むと、ゆきを柔らかく抱き締めてくれた。

 こうして抱き締められると、恥ずかしさよりも、それを越えた、もっと素晴らしいものを欲してしまう。

 小松は、ゆきの衣服を綺麗に取り除いてしまうと、その身体を愛でるように見つめてきた。

 小松の眼差しに情熱的に見つめられると、ゆきは身体を潤ませる。

 こんなにも熱い感覚を他には知らない。

「……ゆき……」

 小松は掠れた甘い声で囁くと、ゆきのまろやかな肌に触れてきた。

「……んっ……」

 触れられるだけなのに、どうしてこんなにも敏感になるのだろうか。

「……君は期待以上だね。素晴らしい」

 小松は、ゆきの滑らかな肌を堪能するかのように、その背中を柔らかく撫でる。

「肌触りの良い、最高級の絹のようだね……」

 小松に言われると、ゆきは、自分が最高の肌の持ち主なのではないかと、少しだけ、期待をしてしまう。

 小松は、ゆきの身体のラインをゆっくりと愛でるように触れてくる。

 しっとりと触れられて、肌がもっときめ細やかになるのではないかと、ゆきは思った。

 小松の綺麗で整った手のひらが、ゆきの乳房を下から掬い上げた。

 そのまま揉みしだかれて、ゆきの身体の芯が蕩けてくる。

 今までよりもずっと蕩けるものだから、ゆきはくらくらする。

 身体の中心が潤んで、小松を求めている。

 ゆきの未知なる部分が、小松を求めて止まない。

 胸を強く揉みしだかれる。

 それだけで、ゆきは息を乱す。

 身体がとても熱かった。

 敏感に起ち上がったゆきの胸の頂を、小松は指先で摘まんできた。

 くにくにと指先で弄られるだけで、ゆきは身体の奥がおかしくなりそうだ。

 そこに快楽が集中しているのは、間違いなかった。




 マエ モクジ ツギ