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小松とふたりだけで夜を過ごす。 意識し始めると、ゆきは緊張してしょうがなくなる。 息が出来ないぐらいの緊張に、ゆきはジタバタせずには、いられない。 「ゆき、緊張し過ぎだよ。本当に君はまだまだ、可愛いね」 まるで小さな女の子に言うようで、ゆきはほんのりと拗ねる。 子供じゃないのに。 もう、小松と肩を並べて歩くことが出来るのに。 なのにいつまでも、小松はゆきを子供扱いをするところがある。 「……子供じゃありません」 「本当に?君の振る舞いは、小さな女の子のように、私は思えるけれど?初々しい反応だからね」 クスリと笑われて、子供扱いをされる。 誰よりも子供扱いをされたくないのが、小松だというのに。 ゆきは複雑な気分になる。 「ね、子供じゃないというのならば、大人の女性らしい行動が、もう少し必要かな?」 小松が艶やかな声で、わざとゆきを挑発するようにしているのは、分かっている。 分かっているのに、ゆきはつい反発したくなる。 受けて立ちたくなるのだ。 「……大人の女性の行動は、帯刀さんが考えるものは、どのようなものなんですか?」 「……そうだね……」 小松の官能的な流し目が向けられたかと思うと、いきなり抱きよせられた。 「……あ、あのっ!?」 小松にギュッとしっかりと抱きしめられると、ゆきはドキドキが止まらなくなって、華やいだ感情の恥ずかしさに、つい狼狽えてしまった。 「……大人の女性はね、いくら恥ずかしくて、ドキドキしても、こうしてあからさまな感情を出さないものだよ。ドキドキしていても、好きな男に対しては、受け入れる。君は恥ずかしがるだけでしょ?」 確かに、恥ずかしすぎて、それ以上の感情を上手く表す余裕がないのだ。 「……だって恥ずかしいから……」 「簡単なことだよ。私を受け入れる。ただ、それだけだよ……」 小松は、ゆきの髪をゆっくりと撫でてくる。 小松を受け入れる。 それがどういうことであるかは、ゆきにも何となくではあるが、理解しているつもりだ。 ゆきは、小松の美しく引き締まった身体に何とか腕を回して、そっと抱きしめる。 こうしていると、ドキドキするのと同時に、抱きしめられているだけの時よりも、もっと幸せな気持ちになった。 「そうだよ。そうして、私たちはお互いに、支え、支えられることで、更に近付ける……」 小松は艶やかな声で囁くと、ゆきの柔らかな唇に、触れるだけのキスをした。 「そうだよ、ゆき。私たちは互いにこうしていることが一番だよ。だから、ひとりの女性として、私を受け入れることは、ドキドキするかもしれないけれど、それ以上の幸せを約束するよ。私にも、君にも……ね?」 小松はゆきの身体を意味ありげになぞる。 それだけで緊張すると共に、幸せで華やいだ気持ちになった。 「……さあ、温泉に入って、ゆっくりと部屋で食事を取ろうか。今日は疲れたでしょ?君の疲れは、早いうちに取って貰わないといけないからね。大きな浴場があるらしいから、そこに行こうか。勿論、男湯、女湯で分かれているから、安心しなさい」 ゆきがぐるぐると何を考えているのか、小松は総てお見通しのようで、先回りをするように言った。 「京都の温泉……。何だか素敵です」 ようやく素直な笑顔になれて、小松もまた、笑顔になった。 「ようやく笑ったね。今日は本当によく歩いたからね、かなり疲れているだろうから、ゆっくりと温泉に浸かると良いよ」 「……ありがとうございます」 もう一度柔らかくキスをされて、ゆきは耳まで真っ赤にしながら、小松を見上げた。 まだ、恥ずかしい以外の感情を表す余裕が、ゆきにはなかった。 大浴場でのんびりと温泉に浸かる。 今日は本当によく歩いた。 浴場には、ゆきしかいないから、のんびりと出来る、筈なのだが。 やはり小松が気になって、気になってしょうがない。 裸になると、肌が敏感になりすぎてしまい、小松を意識して、ピリピリしてしまう。 柔らかな温泉のお湯が肌に絡んで、ゆきは更なる甘い感情の高まりを知った。 いつもの緊張とは違うものであることは、ゆきにも解っていた。 小松のことを想い浮かべては、ゆきは恥ずかしくて堪らなくなる。 どうしてこんなにもドキドキするのだろう。 髪や身体を、清めながら、ゆきは呼吸が甘くて浅くなるのを感じた。 大好きなひとに総てを委ねる。 それには抵抗はないし、いつかこうなってくれたら良いと、ずっと思っていた。 ずっと期待していたこと。 ただ、自分は良くても、小松はどうなのかと、そればかりをきにし過ぎているから、こうして緊張が解けないのだ。 ゆきは大浴場から上がると、浴衣に袖を通して、部屋に戻る。 肌がほかほかとする。 滑らかで柔らかな雰囲気だ。 すっぴんを小松に見せるのは慣れているから、それは恥ずかしくはないのだが。 部屋に戻ると、小松が既に戻っていた。 じっと外を見つめている。 なんてその姿が似合うのだろうかと、ゆきは見惚れずにはいられない。 つい、うっとりと見つめてしまう。 美しいと同時に、小松は精悍で凛とした男らしさと色気を滲ませていた。 本当にこの人が、自分の恋人なのだろうか。 ゆきは勿体無いと思っていた。 まるで映画の中のワンシーンを見るかのように、ゆきは小松を見つめてしまう。 ゆきの視線に気付いたのか、小松はゆっくりと振り返った。 「戻ったの?夕食はもうすぐ運ばれてくるよ」 「ありがとうございます……」 ゆきはまだ、小松の美麗さにぼんやりと見惚れてしまう。 「どうしたの、ぼんやりとして。湯あたりでもした?」 「だ、大丈夫です……」 見とれていた自分が恥ずかしくて、ゆきが視線を伏せると、小松にいきなり背後から抱きよせられた。 「君は本当に悪い子だね……。そんな目で見ないで。私は自分が止められなくなる……」 小松の低い声が、ゆきをときめかせる。 そのまま首筋に強く口付けられて、ゆきは背筋がゾクリと震えるぐらいに感じた。 「失礼致します。お食事のご準備が出来ました」 「邪魔が入ったね。しょうがない……。はい、どうぞ」 小松は素早くゆきから離れると、何食わぬ顔で、仲居たちを招き入れた。 顔が熱い。 熱くてたまらない。 恥ずかしいのに、ときめいてしまっている。 ゆきは、小松の背中に拗ねるような視線を送った。
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