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夕食を小松と取りながらも、ゆきはどんどんドキドキが止まらないことを感じる。 いつもならば美味しく頂く御飯も、今日は何だか入らない。 理由は解っている。 今夜、とうとう小松の妻になる。 ずっと願っていたことだから、とても嬉しいことではあるのだが、それ以上に甘い緊張が高まる。 ゆきは、落ち着かずに、ちらちらと何度も小松を見た。 「随分と緊張しているみたいだけれど?」 「ご、ごめんなさい。ドキドキして、初めてのことで、その……」 「だろうね。緊張がこちらにも伝わってくるからね」 流石に小松はこのようなことは馴れているのだろう。 そこがほんのり憎らしいが、しょうがない。 小松は、ゆきより年上で、しかも大人で、かなりモテる、上流階級の男なのだから。 しかも、総てを冷静に判断出来る、聡明さを兼ね備えた、所謂、出来る男なのだから。 「ゆき、私も緊張しているんだよ」 小松は落ち着いた笑みを浮かべると、ゆきが安心出来る柔らかな瞳で見つめてくれる。 蕩けるような甘い眼差しだ。 「……え?」 小松が緊張するなんて、ゆきには信じられなかった。 小松なら、こんなことぐらい、何ともないとすら、ゆきは思っていた。 驚いて、ゆきが目を丸くしていると、小松はフッと笑った。 「信じられないとばかりに思っているよね。だけど、本当のことだからね。これは……。私だって、心から愛しいと思える、一番望んでいる相手と結ばれるのは、契りを交わすのは、初めてなんだから」 小松はほんのりと照れた表情になる。 その表情がとても魅力的で、ゆきは胸を高まらせた。 「私がどれだけ君と結ばれることを喜んでいるか、後でたっぷりと教えてあげるから……」 「はい……」 小松に艶やかに囁かれると、ゆきは余計に呼吸が出来ないぐらいにときめいてしまう。 食欲なんてなくなってしまうのではないかと、思ってしまうぐらいに。 こんなにもドキドキするなんて思ってもみないぐらいに。 「ゆき、しっかりと食べておきなさい。今夜は特に。ね」 どうして今夜は食べなければならないのか、ゆきはその意味がよく分からなかった。 食事をほわほわと終えた後、ゆきはゆっくりとお湯を頂くことにした。 お風呂に入ると少しは落ち着くのではないかと、ゆきは思った。 だが、余計に落ち着かなくなる。 やはり、“裸”であるから、余計なことを考えてしまうのだろう。 肌が細胞レベルで意識をしているからか、何だか敏感になっているような気が、ゆきにはした。 ドキドキし過ぎて、本当にどうして良いのかが分からなかった。 ゆきは、喉がからからになるのを感じながら、お風呂で無駄に肌を擦ってしまう。 小松に触れられることを待ちわびているように、肌は艶やかに輝いている。 自分の肌なのかと、ゆきはつい考えてしまう。 ドキドキして、どうして良いかが分からない。 小松は、このとりとめのない身体を見たら、がっかりするかもしれない。 肌は艶やかに輝いているが、それ以外は、まだまだ子供な平凡な身体をしているのだから。 ゆきは小松ががっかりしたらどうしようとばかりを、考えてしまう。 逆上せそうになって、ゆきは慌ててお風呂から出た。 下働きの女性が手伝ってくれると聞いてはいたが、やはり恥ずかしくて断っていた。 ゆきは白い寝間着をに身を通して、緊張しながら、自室に戻った。 すると、既に小松が、白い寝間着に着替えて、待っていた。 ゆきの気配に気づいた小松が、ゆっくりと振り返る。 髪を下ろした小松は、完璧なまでに、艶やかで、ゆきはドキリとした。 「小松さん……」 「ゆき、名前で呼ぶんでしょ?」 「……帯刀さん……」 ゆきは真っ赤になりながら、俯いて小松の名前を呼んだ。 名前を呼ぶだけで、ゆきの緊張は、かなり激しくなる。 「ゆき。こちらへおいで」 小松は、今まで見たことがないぐらいに艶やかな表情と声でゆきに手招きをすると、いきなり抱き締めてきた。 「……あっ……!」 思わず甘い声で呟くと、小松は更に強く抱き締めてきた。 息が出来ないぐらいに、しっかりと抱き締められる。ドキドキして、全身の細胞が震えるのと同時に、ゆきをしっかりと抱き締めてくれた。 小松の良い香りを胸に吸い込むと、本当に幸せだと、心から感じた。 ゆきは、甘いときめきを感じながら、小松を愛しく感じずにはいられない。 こうして抱き締められていると、ドキドキするのと同時に、この上ない充実した幸せを感じずにはいられない。 小松はゆきを、至近距離でしっかりと見つめる。 「……ゆき、愛しているよ。君以外に私は妻をめとらない。この世界では、まだまだ、沢山の妻をめとるのが常識のようになっているからね……。だけど、私は、君以外はいらないから」 「……こ、た、帯刀さん……」 小松はゆきに顔を近づけると、唇を深い角度で重ねてくる。 しっとりと唇が重なったかと思うと、小松は官能的な動きでゆきの唇を吸い上げてきた。 「……ゆき……」 名前を呼びながら、小松は、何度も何度もキスをしてくる。 唇を吸い上げられて、ゆきはうっとりとした気持ちになってくる。 ゆきのキスはまだまだぎこちなかったが、小松が上手くリードをしてくれる。 舌をお互いに絡ませあいながら、気持ちや熱を小松と共有してゆく。 なんて幸せなことなのだろうか。 ゆきは無意識に、小松の背中に腕を回し、抱き締める。 こうして、お互いにしっかりと抱き合いながらキスをしていると、とても近い存在に感じられる。 蕩けてしまってふたりはこれで、ひとつになるのではないか。 そんな錯角すら感じてしまう。 互いの唾液で唇の周りか艶やかに輝いて濡れている。 ゆきはドキドキし過ぎて、どうして良いかが分からなかった。 唾液が入り雑じっても気にならない程に、ゆきは小松を愛しく思う。 お互いに呼吸が出来ないぐらいになるまで、激しく唇を重ねた後、ふたりはようやく唇をお互いに離した。 呼吸が上がってどうしようもない。 頭がぼんやりとしてしまうのを感じながら、ゆきは目をぼんやりと開いた。 「ゆき、とても艶っぽいね。今夜は特に……」 小松はフッと笑うと、更にゆきを抱き寄せる。 寝間着の袷に、小松の手が入る。 肌が震える。 小松に触れられるだけで、肌が滑らかになっていく。 「あっ……」 首筋に唇を当てられて、ゆきは甘い声を上げる。 「君はどこまで私を夢中にさせたら、気が済むの?」 からかうように艶のある声で囁きながら、小松は肩からゆっくりと寝間着を脱がしていった。
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