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部屋にも温泉はあるが、先ずは大浴場に入って、温泉の醍醐味を体験したかった。 温泉に入っているだけで、本当に幸せな気持ちになる。 同時に、小松を意識せずにはいられなくなった。 肌がいつもより滑らかになっているだけではなく、小松を強く求めているのが、ゆきにも解った。 触れられたいと、細胞のレベルで囁いているのが、ゆきには解る。 そう考えているだけで、緊張でどうにかなりそうだった。 温泉のお湯が肌に浸透する。 小松のことを意識する余りに、ゆきはドキドキし過ぎて、おかしくなりそうだった。 いつもよりも念入りに身体を清めて、全身のボディケアを努める。 意識し過ぎているのかもしれない。 だが、それ以上に、ゆきは小松に触れてもらいたいといはう、衝動を感じていた。 ゆきの女の部分がそうさせると、初めて意識をする。 自分が、もう恋に夢見る少女のままではいられないことを、ゆきは強く感じていた。 温泉から出た後、ゆきは、身体と顔をいつもよりもたっぷりとケアをした後、部屋に戻った。 部屋に戻るのがドキドキしてしょうがない。 小松はもう部屋に戻っていることだろう。緊張しながら、ゆきは部屋に入った。 部屋に入ると、小松は窓の外をじっと見つめていた。なんて絵になるのだろうかと、ゆきは思う。小松を見つめるだけでドキドキせずにはいられない。 「戻ったの?」 「はい」 「こちらにおいで」 小松に手招きをされて、ゆきらドキドキしながらそばにいった。 小松とふたりで、柔らかな闇を見つめるなんて、幸せ。 「綺麗ですね」 「そうだね」 小松は優しく微笑むと、ふんわりと背後から抱きしめてくる。 柔らかく抱きしめられるだけで、鼓動がみょうちきりんなリズムを刻む。 それがゆきには恥ずかしい。 きっと小松に聴こえている。それぐらいに音が大きい。 「ね、ゆき、緊張してるの?」 小松はゆきを楽しそうにからかってきた。 「小松さんは私をからかってばかりです……」 ゆきが拗ねるように言うと、小松は更に強く抱きしめてきた。 「知らなかったの?私は君をからかうのが趣味なんだよ。君は可愛い反応するからね、楽しい」 「……小松さんのバカ……」 「バカで結構だよ」 小松に抱きしめられると、世界で一番幸せな女の子になったような気分になる。 「こうして、空を見るのが、一番良いと思うけれどね。君はとても良い香りがするしね……」 首筋に一瞬、甘いキスが降る。 背中がゾクリとする甘い旋律に、ゆきはとろけてしまいそうになった。 「……夕食だから、ここで今はおしまい」 小松はあっさりと言うと、ゆきから身を引いてしまった。 「続きは後で……。良いね?」 小松はフッと微笑みながら、宣言をする。 ゆきは心臓が溶けてなくなってしまうぐらいに、甘い緊張を覚えた。 「さあ、食事をしようか?ゆき」 「はい、小松さん……」 食事の後に何が待っているのか、考えるだけで、ゆきは胸が甘く弾んだ。 夕食はとても美味しかった。 やはり海の近くなので魚介類が素晴らしい。 ゆきはおいしい食事にすっかりと気を取られてしまい、先程の甘い感覚は、もう何処かへといってしまっていた。 「美味しかったです。やっぱり海の醍醐味は、食事ですよね!」 「まあ、そうだね。君に喜んで貰って、私も嬉しいところだけれどね」 小松は静かに微笑みながら、ゆきを見守るような眼差しを向けてくれた。 最後のフルーツをふんだんに使った和風のゼリーを食べ終わった後、ゆきは満足と同時に、少し寂しさすら感じた。 「美味しかったです。これでおしまいだと思うと、少し寂しくなりますね」 「寂しい?デザートはこれからでしょ?」 小松は意味ありげに艶やかな声で囁くと、ゆきを抱き寄せてきた。 「……私のデザートは君なんだから、これからでしょ?」 「……あ、あの、こ、小松さんっ……!」 甘い感覚に、ゆきは可笑しくなる。 ゆきは緊張し過ぎてしまい、ドキドキで何処か可笑しくなってしまう。 耳まで真っ赤にさせて、身体中の血液を顔に集中させてしまう。 熱くて堪らない。 小松は体温よりも少しひんやりとした唇で、耳たぶを軽く吸い上げてきた。 「……!!!」 ゾクリとした甘くい痺れが背中を走り抜ける。息が出来なくなるぐらいに、甘く苦しい震えだ。 「ゆき、君は本当に可愛いね」 小松は、ゆきの首筋に唇を寄せてきた。 自分のものであるということを、ゆきに知らしめるかのように、小松は何度も口付けてくる。 こうしてキスをされると、肌が柔らかに震えた。 「……どうしたい?私は君をデザートにしたいけれど、君は?君は私をデザートにしたくない?」 小松は、大胆にも、ゆきを誘ってくる。 解っている。 小松の誘いに乗ってしまったら、ゆきはもう後戻りができなくなる。 小松が好きで好きでたまらなくなるだろう。 だが、それでも構わないと、ゆきは思った。 それほどまでに、小松を好きになってしまっていた。 「……ゆき。一線を越えてしまったら、もう君は後戻りすることは出来ないよ。それでも構わない……?」 「構わないです……」 「そう……。だったら……」 小松は、ゆきの華奢な身体をしっかりと抱きしめてきたかと思うと、深い角度でキスをしてくる。 先程の陽向でのキスとはちがい、官能的な激しすぎるキスだった。 ゆきはキスに溺れてしまい、何も考えられない。お互いの唇が激しく燃え上がる。 ゆきは唇が艶やかにぷっくりとなるまで、小松のキスを受け止めた。 息をするのが上手く出来ないぐらいのキスだった。 キスだけで全身が甘くざわめいて、ゆきは甘い苦しみに思わず目を閉じる。 それほどまでに小松を求めていた。 キスの後、小松はゆきを軽々と抱き上げる。 もう何も抵抗することが出来ないぐらいに小松を求めてしまう。 そのまま、ベッドへと運ばれた。 ふわふわとしたベッドに、ゆきは優しく寝かされる。 小松と愛人契約をしているが、愛人として、抱かれるのではない。 一人の小松を愛する女性として抱かれるのだ。 利害関係があるから。 上下関係があるからではない。 純粋に小松が好きだから抱かれるのだ。 頬を真っ赤に染めながら、ゆきは小松を見上げる。小松は甘く笑って、ゆきを強く抱きしめてくれた。 「……良い香りがするね。君は……」 小松はゆきの首筋に鼻をしっかりと擦り付けて、まるで猫のようにゆきの香りを楽しむように、嗅いでくる。 こうして、甘い行為を繰り返して来るのを、本当に幸せな気持ちで受け止めた。 |