*愛人契約*

18


 痛みが全身を貫き、ゆきは思わず息を止めた。

 頭の先から突き抜けるような痛みに、ゆきは小松の背中にしがみついた。

 痛みを我慢しなければならないのは解ってはいる。だが、この痛みは、本当に辛くて、ゆきは涙を溢した。

 だが、ここで止めて欲しいとは思わなかったし、思えなかった。

「……ゆき、大丈夫だから。私がそばにいるでしょ?」

「……はい……。だから、頑張れます……」

 ゆきはか細い声ではあるがなんとか呟き、微笑んだ。

 小松の圧迫は信じられないぐらいにきつくて、苦しい。

 その上、傷む。

 それでも、愛しているから止めて欲しいとは思わなかった。

 ずっと小松と一緒にいたい。

 だからこそ、この痛みになんとか耐えられるのだろうと、思った。

「君は本当に良い子だ……。そして、可愛くてしょうがないね」

 小松は切なく情熱的に呟くと、更に激しく腰を動かしてきた。

「……んっ……!」

 小松に動かれる度に、涙が激しく滲んでしまう。

 痛くて堪らない。

 「……ゆき、可愛い、ゆき……。力を抜きなさい……」

 小松は優しく柔らかく囁いてくれる。

「……どうして良いか……」

「呼吸を意識して……、力を抜きなさい……。力を抜かないと、痛みは続くよ……」

「……痛くても……、大丈夫……っ!」

 ゆきは小松に心配をかけたくはなくて、なんとかにっこりと微笑んだ。

「……どうして?」

「だって……、小松……さん、だから……」

「私だから……」

 小松は魂の奥から情熱を迸るかのように呟くと、そのままゆきを強く抱きすくめた。

「……君はなんて、可愛いことを言うの?もう、私は止められない……」

 小松は掠れた声で情熱的に呟くと、更に奥に入ってきた。

「……ん、やっ……!」

 今までで一番の痛みに、ゆきは思わず声をあげた。

 はかの瞬間、涙が激しく零れ落ちてしまうほどに、痛みを感じた。

 心臓が止まるのではないかと、ゆきは思ってしまう。

 だが、それでも、小松とひとつになることと比べたら、痛みなんて大したことはないと、ゆきは思った。

 本当に痛い。

「……ゆき、君は本当に可愛い……。そして、愛しい……」

 小松は、ゆきを慈しむように、何度も何度もキスを繰り返した。

 胸が高まる。

 幸せで、痛みなんて忘れてしまいそうになる。

 小松はゆきの涙で濡れた瞳をじっと見つめた後、ゆっくりと頬を撫でてくれた。

 小松は、胎内ではちきれてしまうのではないかと思うほどに、力がみなぎっている。

 ゆきはみなぎる力に畏敬の念を感じながら、それを受け止めたいと、思った。

「ゆき、君を完全に私のものにするよ。良いね……」

「はい……」

 ゆきはか細く呟くと、小松をギュッと抱き締めた。

 ゆっくりと、ゆきを気遣うように、慈しむように、小松はゆっくりと動いてくる。

 動く度にふたりが擦れあう淫らな水音が響き渡った。

 痛みが少しずつ鈍くなってきた。

 同時に繋がっている場所から、じわじわと痺れるような快楽が滲んでくる。

 息が出来ないぐらいに快楽に似た痺れたものが、ゆきの全身に巡り始めた。

「……ゆき、君はとても素晴らしい……」

 小松は艶やかな吐息を滲ませながら呟くと、ゆきを更に突き上げてきた。

 こんなにも激しく突き上げられるなんて、思ってもまたがなかった。

 痛みと鈍い快楽。

 これらが交互にやってくる。

 息が出来ないぐらいに甘くて切ない感覚に、ゆきはこのまま溺れてしまいそうにかる。

「……んっ、あっ……!」

 自分の声だとは思えないぐらいの艶やかな声に、ゆきは驚いてしまう。

 痛みが少しずつ慣れてくる。

 小松は、自分ではコントロール出来ないとばかりに、激しく腰を突き上げてきた。身体がバラバラになってしまうのではないかと思うほどに、激しい突き上げがくる。頭がおかしくなる。

 狂うおしいほどに、小松を全身で受け止めた。

 無意識に小松を離したくはなくて、ゆきは小松自身を無意識に激しく締め付ける。すると小松は、更なる突き上げを繰り返す。

 こんなにも激しく突き上げられると、ゆきはもう何も考えられなくなる。

 小松を全身で感じたくて、ゆきは逞しい背中を強く抱き締めた。

 息苦しい。

 そう感じてしまうほどに、ゆきは小松で満たされた。

 まだ、ズキズキとした痛みがあるが、それでも満たされた想いが、ゆきに快楽を感じさせてくれる。

 小松も既に自身をコントロール出来ないぐらいに、ゆきのことを気遣うことが出来ないぐらいに、愛と情熱の嵐に巻き込まれている。

 ゆきもまた、その嵐の一部になる。

 身体が弛緩して、バラバラになりそうだった。

 無意識に激しく小松を締め付け、ゆきは腰を小松のリズムに合わせて、無意識に動かしてしまう。

「……ゆきっ……」

 小松が名前を呼んだ瞬間に、身体がふわりと高みに押し上げられるぐらいに、突き上げられる。

 最奥を突き上げられる。

 息が出来ない。

 全身がバラバラになってしまいそうになるぐらいに、ゆきは快楽を高まらせる。

 小松の逞しい身体も揺れた。

 熱い飛沫が身体に注がれる。

 そのままゆっくりと墜落していったのは、言うまでもなかった。

 

 いつのまにか、小松が圧迫を解いていてくれたらしい。

 ゆきはピリピリと下肢が傷むのを感じながら、ゆっくりと目を開けた。

 微笑む小松と目が合い、恥ずかしくなる。

 顔をつい隠したくなる。

 すると小松は、ゆきを柔らかく抱き寄せてきた。

「ダメだよ……。顔を隠さないの」

「……恥ずかしいです……」

「だめ」

 小松に甘い声で言われると、ゆきは抵抗が出来なくなってしまう。

 顔をそっと出すと、小松はゆきの鼻にキスをしてきた。

「……小松さん……」

「もう、君を離さないからそのつもりで」

 小松は艶やかな声でゆきに囁くと、もう一度、強く抱き締めてくれた。

 ドキドキし過ぎて、ゆきは震えてしまう。

 小松が離さないでいてくれる。

 それは、ゆきにとって、何よりも幸せなことだ。

 つい笑顔になった。

「小松さん……、私を離さないで下さい……。私も離れませんから」

 ゆきが笑顔で言うと、小松はフッと微笑む。

「……そんな可愛いことばっかりを言うと、私は君を欲しくてたまらなくなるでしょ?責任を取って貰うよ?」

 小松はクスリと笑うと、ゆきを再び組み敷いて愛し始めた。

 結局、ゆきが甘く激しく愛されたのは、言うまでもないことだった。

 幸せな疲労に漂っていたのは、言うまでもない。



マエ モドル ツギ