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「小松さん、八葉を探しに、外に出ようと思っています」 「外に出なくても、ここにいれば、八葉なんて舞い込んでくるよ」 小松はいとも簡単にあっさりと言う。 確かにそうかもしれない。 だが、待ってはいられないと、ゆきは思う。 それほど切迫していた。 それに待っていても、いつ舞い込んで来るかが分からないのも、不安だった。 「ゆきくん、急がば回れ、だよ。余り肩肘を張らないほうが良いよ」 「小松さん……」 確かに焦ればろくなことがないのは、ゆきにも分かっている。 「神子は八葉を引き付け、八葉は神子を引き付けると、聞いている。だから、気にしなくても良いよ。君は焦らなくても、八葉を引き付ける。だから、心配しないほうが良い」 小松は落ち着いて、ゆきに言い聞かせるように言う。 どうしてだろうか。小松と話しているだけで、気持ちを落ち着かせることが出来る。 同時に、このひとを信じていれば大丈夫なのだろうという気持ちになった。 「分かりました。だけど、ここでぼんやりとしているわけにはいかいと思っています。神子として、ぼんやりはしていられないと……」 ゆきは、唇を噛む。 神子として、少しでもやることがあるのであれば、ゆきはなるべくしたいと思う。 「君は本当に神子だね。君がやるべきことは、京の怨霊を浄化をして、土地の力を具現化させて、自分や八葉の力にするべきことだろうね……。そうすれば、確実に、君は力を得て、八葉を引き寄せられるだろうからね……。かなり昔から、神子はそのようにして力を得ていたと、記録に残っているからね」 「そうですね。怨霊を浄化することから、初めてみます」 「そうしなさい。今日は少しなら、君の手伝いをすることが出来る。瞬、都、龍馬も連れて行こうか。夜まで龍馬はどうせ暇だろうからね」 小松はキッパリと言い切ると、ゆきを見つめた。 クールな眼差しに、ゆきは頷く。 「ったく、勝手だなあ、帯刀は!まあ、お嬢のためなら、何とかするか」 龍馬は面倒くさそうに言いながらも、何処か楽しそうだった。 「……あなたを護る者として、当然、ついてゆきます」 瞬は感情をあからさまに出さないが、頼もしいとゆきは思った。 「当然、私もついて行くからね!こんなやつらにあんたを守らせるのは、本当に心許ないからね」 「有り難う、都」 今は頼もしい仲間がいるから大丈夫だ。 「さあ出掛けようか。私は用があるから、途中で帰らなければならかいけれどね」 「なんでお前に仕切られないといけないんだよ……」 都があからさまな不満を呟いている。ゆきは思わずくすりと笑った。 「さあ行こうか。ぐずぐずすることは出来ないからね」 「はい」 ゆきたちは準備を整えて、怨霊浄化に向かうことにした。 怨霊を浄化し終わると、ゆきの力を高めるために、力の具現化を行う。 小松が、古い書物を使って、力の具現化を調べておいてくれたのだ。 力の具現化は、土地の力を高めるためにも効果的で、より感覚が研ぎ澄まされるように、神子と八葉にしか見えない不思議札が現れ、その絵を合わせていかなければならはい、まさに力を試されるものだった。 勿論、少しずつレベルが上がってゆくにも、かなり厄介だった。 時間が許す限り、怨霊の浄化と、力の具現化をすすめた。 力がみなぎる。 怨霊や陽炎を浄化するには、かなりの力が必要で、それには命を削るようにして行ってきたのに、浄化封印と力の具現化をすると、不思議と命が削られる感覚はなくなっていた。 不思議と力がたっぷりと感じて、ゆきはより元気になっていくような感覚があった。 これを繰り返せば、力はかなり蓄えられる!。 「ゆきくん、君の力も私たちの力もかなり高まっているね……。君の顔色も随分と良くなっているよ」 小松の言葉にゆきは嬉しくなる。きっとそうだと思う。 それは自分でも分かる。 ゆきは思わずにっこりと笑った。 今までは、怨霊を浄化する度に命を削られ、体力が細っていた。 だが、今は違う。 怨霊を浄化しても、余り気にはならない。 それどころか、力が増している。 白龍の力も少しずつ高まっているのだろう。 京の町を浄化する。 五行が流れ込んでいる土地であるから、ここを高めることによって、白龍の力も高まっているのだろう。 明日も頑張らなければならない。 ゆきは強く思った。 「小松さん、有り難うございます。小松さんが調べて下さったから、私はここまで頑張れることが出来たのだと思います。有り難うございます」 ゆきは、小松に心から感謝を表すために、深々と頭を下げた。 「……今回のことは、小松を認める。ただし、今回のことだけだ」 都も渋々ながら認めてくれた。 「ゆきくん、私は藩邸に行かなければならないからこれで失礼するよ。龍馬、ちゃんと彼女を守って。頼んだよ」 「おう」 小松は相変わらず冷静さを崩すことなく、薩摩藩藩邸へと向かう。 ゆきはその背中を見つめながら、ほんのりと甘酸っぱい気持ちを抱いた。 小松の京邸に、夕方近くに到着した。 すると、丁寧に、邸の者が迎えに来てくれた。 「神子様、夕食の準備が出来ていますよ」 元々小松の邸の者たちは、ゆきに対してかなり優しく接してくれていたが、今日は特に優しく接してくれた。 しかも、「神子様」と呼んでくれている。 きっと小松が手回しをしたのだろう。 「様付けなんて、とんでもないです。いつも通りに呼んで下さい」 「分かりました」 ゆきが女中と話していると、奥から邸を預かる者が出てきた。 「神子様、旦那様が薩摩藩邸に皆様でお越しくださいとのことです」 「分かりました」 「帯刀、また面倒臭いこと言ってくるのかなー」 龍馬はわざと面倒そうに呟く。 「坂本様がそうではないかと……」 ポツリと男が言う。 「……確かに間違いない」 瞬が感情なく呟くと、都が苦笑いを浮かべながら頷いた。 「ったく、お前ら」 龍馬の一言に、瞬は瞬殺するように睨み付けてきた。 「おっと、おっかないな。藩邸なら俺が知っている。行こうぜ」 「はい」 龍馬に先導され、ゆきたちは薩摩藩邸へと向かった。 「何があるんでしょうか?龍馬さん」 「さあな。だけど、帯刀のことだ、悪いようにはしないだろう」 「そうですね」 小松がわざわざ呼び寄せてくれるのは、やはり八葉や神子に関することだろう。 ゆきの気持ちは引き締まった。 |