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気がつくと、いつも使っている小松邸の部屋に寝かされていた。 今回は、浄化する陽炎の数が多すぎて、ゆきがくらくらきてしまった。 かなりの力を使ってしまったのだろう。それは否定できない。 やはり、浄化にはかなりの力がいる。 今回は、八葉が少しの間全員揃ったこともあり、いつもよりは力が出せた。 だが、それでもあれだけの陽炎を浄化すると、身体に影響が出てしまった。 ゆきは気持ちが重くなる。 あれぐらいで意識を失ってしまったら、これからはどうすれば良いのだろう。 かなり厳しくなるのは間違いない。 ゆきにはそれが苦しくてしょうがない。 もっと、もっと、神子として頑張らなければならないことは分かっているのに、上手く出来なかった。 ゆきは溜め息を吐きながら、天井を見上げる。 ぐっすりと眠った筈なのに、疲れなんて全く取れてはいなかった。 これからもっとひどくなるかもしれない。 ゆきにはそれが辛い。 もっと前向きに頑張れる体力と命があれば良いのに。 そうすれば、この世界も生まれた世界も、救うことが出来るのに。 ゆきは溜め息を吐いた。 「ゆき、起きたんだ!良かった!」 都が本当に嬉しそうに言う。 「有り難う、都。私、頑張りすぎて倒れてしまったんだね……」 「だけど、陽炎は総て浄化出来たからさ。これは大きいことだよ」 「うん、良かった……」 ゆきは陽炎を浄化出来たことにホッとする。 「沖田さんに八葉になって貰うのは失敗しちゃったけれど……」 ゆきは苦笑いを浮かべる。 完全に力を貸してくれている八葉は、まだまだ少ない。 沖田も、新撰組と同じ目的がある場合は手を貸してくれるだろうが、それ以外は難しいと、ゆきは感じていた。 かつてもそうだったのだ。 「ゆき、今日はゆっくりしな。今日は怨霊だとか、陽炎だとか、そんなことを気にするなよ。休め」 「有り難う、都」 ゆきは深呼吸をしながら、気分を落ちつける。 今日はしっかりと休もう。しっかり休んでおけば、また、頑張ることが出来るだろうから。 「都、都が化粧や着物を着替えさせてくれたの?」 「そうだよ。私とお茶屋の女将とでね。あ、お茶屋にいた、芸妓さんたちも手伝ってくれたよ」 「そうだったんだ……。有り難う」 「で、小松が手配した駕籠でここまで帰ってきたというわけ」 「……小松さん……」 陽炎を次々に浄化している間、小松がずっと支えてくれた。 ふらふらしている時には、小松が身体を支えて助けてくれた。 最後は小松の腕の中で気を失ったことは覚えている。 その時支えてくれた小松の腕は、とても逞しくて、心地が良かった。 こんなにも気持ちが良いブラックアウトは、他にないのではないかと、ゆきは思った。 小松に礼を言わなければならない。 それだけではなく、八葉にもしっかりとお礼を言わなければならない。 「ゆき、瞬の見立てだと、やはり過労だって。だからゆっくりと休まないとな」 「うん、有り難う。ねえ、都、私、八葉のみんなに、しっかりとお礼がいいたいんだけれど……」 「ああ。瞬以外は出払っている。皆、やることあるからな。あ、小松とチナミは、薩摩藩藩邸に行った。小松は、チナミを薩摩で引き取って、色々と勉強させる気みたいだけれどな」 小松の名前が出て、ゆきはドキリとしてしまう。 八葉の中で、小松のことばかりが気になってしまう。 こんなに気になるのは、小松だけだ。小松以外にはいない。 助けてくれたひとだから、今もお世話をしてくれるひとだから、誰よりも感謝をしているだけではない。 本当に心から、小松のことを信頼し、感謝している。 「ちゃんとお礼を言わなくっちゃ」 ゆきはひとりごちると、天井を見上げた。 どうしたら小松に恩を返せるのだろうか。それだけを強く考える。 「ゆきちゃん、おやつが届いたけれど、寝ている?」 ゆきのことを気にかけてくれている、小松邸の下働きの女性が声をかけてきてくれた。 「いいえ。起きていますよ」 「そう。ご家老が手配して下さった、くずきりが届いたからね」 女性は優しく言うと、くずきりを持って、部屋の中に入ってきた。 ちゃんと都の分も用意されている。 「有り難うございます」 くずきりなら食べられそうだ。 サッパリしているし、喉ごしも良さそうだ。 「何だか、あいつらしい気遣いで気に入らない」 都はブツブツ言いながらも、くずきりを見つめている。 小松とは余り相性は良くないようだか、それすらもつい笑顔になった。 「瞬さんにもお出ししたのですが、余り甘いものはお好きではないようですね」 「だったら瞬の分は私たちで食べるよ」 都がわざと言うと、優しい笑顔が広がった。 「瞬さんが、くずきりぐらいなら大丈夫と仰って、ご家老が手配されたんですよ」 「そうですか……」 小松のきめ細かい気遣いに本当に感謝をしてしまう。 どのような些細なことであっても、小松がしてくれることは総て嬉しいと、ゆきは思った。 こんなにも有り難くて、感謝する。 それは小松だからトクベツだということに、ゆきは薄々気づいていた。 「そうそう、桜智さんから、滋養に良いというお薬を頂戴しましたよ」 「滋養に?」 「ええ。漢方薬ですよ。蜥蜴の黒焼きとかが入った」 「……!!!」 ゆきは思わず目を見開いた。 まさか、蜥蜴の黒焼きなんて恐ろしいものが出るとは、思ってもみなかった。 「ったく!あいつは見境がないヤローだな!」 都は苦々しく笑いながら呟いた。 「だけど、嬉しいし、有り難いと思うよ。だって、こうして桜智さんも、私のことを気遣ってくれているからね」 ゆきは本当に有り難いと思い、笑顔になる。 「本当に、私は、色々なひとに支えられているな。有り難いよ」 ゆきは嬉しくて泣きそうになる。こんなにも様々な人々に支えられている。 特に最初に顔が浮かぶのは、やはり小松だ。 冷たくて冷静なのに、誰よりも優しい。 相手のために厳しいことが言えるひと。 ゆきは感謝せずにはいられなかった。 小松に逢いたい。 いち早くお礼を言いたい。 いつも、いつも助けられてばかりだから、ゆきは胸が苦しくなる。 小松への想いは、明らかに他の八葉とは違っているのは分かっている。 その想いが日に日に強くなっているのを、ゆきは自覚していた。 |