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荒れ果てた世界を目の当たりにして、小松は絶句する。 自分達が住む世界も、いずれはこうなってしまうのかもしれない。 そうなれば、誰もが希望を失うだろう。 そんな世界にはしたくはなかった。 だからこそベストを尽くさなければならない。 小松は強く想う。 そのためには、自分が抱いている欲を解放しなければならないと、小松は強く思った。 ちらりとゆきを見る。 するともう立っているのがやっとのように見えた。 「皆さん、どうぞ中に入って下さい」 ゆきは、目の前にある洋館に八葉たちを導く。 ゆきの実家なのだろう。 だが、今はとても寂しいように思えた。 ゆきにとっては生まれ育った家なのだろう。 見つめる眼差しが、とても寂しそうだった。 ゆきは、八葉を居間に案内した後、ほっとしたのが身体から力が抜けるようにフラフラとする。 このままでは崩れ落ちてしまう。 小松は咄嗟にゆきを抱き留める。 そのまま小松はゆきの顔色を除きこんだ。 目が深く閉じられて、ゆきが気を失っているのは明らかだった。 ゆきの身体がずっしりとくる。 完全に意識を失ってしまったのだろう。それは明らかだった。 「都くん、彼女が眠れる部屋はあるの?」 「ゆきの部屋なら上だよ。案内する」 「有り難う」 小松はゆきを抱き上げて、そのまま上に向かう。 ずっと使っていない部屋なのに、全く埃を感じられなかった。 きちんと掃除がされているよいに思える。 空気が綺麗だ。 小松はゆきの部屋に入る。 女の子らしい、きちんと片付けられた、心地の良い部屋だ。 小松の世界で、このような部屋を持っている女性はほとんどいないだろう。 誰もがこのような部屋で住めるような、そんな世の中になればと思わずにはいられなかった。 「少し眠ったほうが良いね。神子殿は相当、疲れているようだからね……」 「私がついているから、問題ないよ」 都はキッパリと言うと、小松を拒絶するように背中を向けた。 このように思われてもしょうがない。 小松は、自分がゆきのそばにいられたら良いのにと思わずにはいられなかった。 どれだけ眠っていたかは、ゆきには定かではない。 ただ、目を開けると、とても心地が良かった。 ホッとする。 視界に入るのは、見馴れた風景だ。 やはり自分の部屋は落ち着く。そのせいか、久々にぐっすりと眠れた。 意識が朦朧としていた時、ゆきは優しくも頼りになる温かな温もりを感じ取った。 それがとても気持ちが良くて、いつまでも温もりを感じ取っていたかった。 「ゆき、気がついたか?」 声をかけられて目線を上げると、都が心配そうに見つめてくれていた。 ゆきは従姉妹の存在にホッとする。 「戻ってこられたんだね、都」 「ああ。八葉も一緒にな。私たちが私たちが予期しない状態になった、この世界に……」 都は唇を噛み締める。 生まれた世界は、小松たちの世界に比べると、一足早く崩れ落ちていた。 元に戻さなければならない。 そして、小松たちが生まれた世界の崩壊を食い止めなければならない。 ゆきは強く望むものの、自分の無力さに唇を噛んだ。 寝ていることなんて出来ない。 前向きに頑張らなければならない。 いつまでもこうしてはいられないのだ。 眠ってなんかいられない。 ゆきは、素早く起き上がった。 「ゆき、無理するな。せめて、今日はしっかりと休んでおけ」 都は、慌ててゆきをベッドに押し付ける。 「都、起きなきゃ」 「焦ったとしても、今は何にもならない。今のお前は、休むことを考えなければならない」 都はピシャリと言い、ゆきがベッドから出ることを、許してはくれない。 何だかもどかしい。 ゆきは恨めしい気持ちで、都を見上げた。 「どんな顔をしてもダメだからな。今は、疲れを取って、不調を取り除くことだ。もう遅いから、今は、しっかり眠ることを考えろ。皆に話したり、対策を取りたいんだったら、明日にしろ」 都にはしっかりと釘を刺されてしまい、ゆきは溜め息を吐いた。 確かに、神子としての力を使いすぎてしまったために、戻さなければならなかった。 今は休息が必要なことも。 だが、一秒でも早く、ゆきはふたつの世界を元に戻すための手だてをしたいと思っていた。 そうしなければ、崩れてしまう。 そんな焦りを感じずにはいられなかった。 「ゆき、とにかく、今は休め。今夜は八葉たちももう眠ると言っている」 「……分かっているよ。だけど、早くしなければって焦りもあるから」 「誰だって焦りはある。だけど、今のお前は、先ず、身体を治すところから始めなければならない。体調が良くないと、世界の崩壊なんて食い止められないだろう?」 都は厳しい声で言う。 確かにそうだ。 本当に体調が良くないと、何も出来ない。 特に神子は、体力がものをいう。 沢山の力を使わなければならないからだ。 それが誰よりも分かっているからこそ、ゆきは辛かった。 どうしてこんなに弱いんだろう。 もっと強靭になれないのだろうか。 白龍に力を与えてもびくともしないぐらいに。 強くなれば、もっと早くに世界を救うことが出来るかもしれない。 「そんな考えこまないでさ、早く寝ろ。今のお前はしっかり休むことが重要だからな」 「分かった。ごめんね、都、心配ばかりかけて」 「今は本当にゆっくりしろ。お前には休むことが必要だから」 「うん」 ゆきは目を深く閉じる。 そのまま眠りの世界に向かう。 ゆっくりと眠りたい。 そうしなければ、体力は戻って来ないだろう。 だから今はじっくりと目を閉じようと、ゆきは思った。 目を閉じるとほんのりとお香の香りがする。 ゆきは目を閉じる。 深呼吸をすると、随分と落ち着いてくる。 今はただ闇に引きずり込まれるように、ゆきは深い深い眠りに堕ちていった。 夢の光など届かない闇へと。 小松は借りたベッドに身体を横たえながら溜め息を吐いた。 ゆきの状態はあまり良くない。 まるで自分の命を削って、頑張っているような気がする。 それが小松には辛い。 ゆきを救うにはどうすれば良いのか。 思いつかないまま、ため息がこぼれ落ちる。 どうしてもゆきを助けたい。 そう思わずにはいられなかった。 |