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とにかくこれを解決しなけれは、先に進むことが出来ないのだ。 ゆきは、とにかく、この先のことだけを考えて、行動することにした。 今は、この世界が新しく平和に満ちた世の中になることを望みながら、先に進むしかない。 それが、自分の生まれた世界を救うためには必要なことだということを、ゆきは気づきはじめていた。 自分の恋心を、今は置いておく。 今は、とにかく、前に進むことを考えるだけなのだ。 ゆきは、八葉たちと手分けをしながら、怪異の情報をなるべく集めることにした。 小松とふたりで、町で聞き込むことになった。 小松とチナミと三人で聞き込みをするというだけで、ゆきの緊張は相当なものだ。 やはり、恋心が競り上がってきて、上手く集中が出来ない。 意識をし過ぎてしまう。 こんなことではいけないというのに。 ゆきは、自分の集中力の弱さに、溜め息を吐きたくなった。 聞き込みを進めると、様々な怨霊の話を聞くことが出来た。 以前からも怨霊はいたが、ここのところ、かなりのスピードで増えていることが感じられた。 「こんなにも情報が多いと、どれが下関の怪異に繋がっているかが、分からないね……」 流石に小松も溜め息を吐いている。 「そうですね。そのなかでも、騒ぎが大きなものを、調べに行く必要があるのかもしれないですね」 「確かにその必要はあるようだね」 小松は、集めた情報を資料にしたものを見る。 地図に印をしたりし、見易い資料を作ってくれたのは、チナミだ。 「チナミくん、とても見易い資料だよね」 「そうだね。私にはこのような細かい作業は向いていないよ」 小松は苦笑いを浮かべている。これは意外だった。 「小松さんなら、緻密な作業が得意だと思っていました」 「緻密に考えて段取りをするのは、まあ、普通にやるけれど、こうした細かな作業は苦手だよ。指示をして、部下に行ってもらうことが多いよ」 ゆきが驚いているからか、小松は困ったように笑った。 「本当に信じられないです」 「そう?龍馬なんて、私のことを、“意外にいい加減で、大雑把なところがある”と言っているぐらいだからね。まあ、一理あるから、怒らないよ」 小松はさらりと呟いた。 「何だか、小松さんの別の一面を見たような気持ちになります」 「まあ、これも私だよ。何でも緻密に考えていたら、神経をすり減らしてしまうよ。どこか、力を抜くことも必要だよ」 確かに小松の言う通りだ。 ずっとガチガチになっていても、良い結果は得られない。 適度に力を抜かなければならない。 「そうですね。適度に力を抜かなければいけないですね」 「そうだね。余り力を抜きすぎて、操り人形のようになっても困るけれど、今の君は力みすぎだ。力を抜いて」 「はい」 ゆきは素直に返事をしながら、軽く呼吸をした。 「さて、怪異の情報を元に、丁寧に調べてゆく必要があるね。今は地道にやるしかない。地道にやることが、結局は一番の近道だからね」 「はい」 急がば回れ。 確かにそうだ。 焦っても何もならないのだから。 ゆきはそれを肝に命じて、行動することにした。 地道に聞き込みを続ける。 小さな怪異の情報は得られたが、なかなか大きな情報にはたどり着かなかった。 こう歩き回ると、やはり体力が取られてしまう。 ゆきは、竹筒に入った水を飲みながら、分からないように溜め息を吐いた。 「少し休憩をしようか」 小松が声をかけてくれ、ゆきはホッとする。 「茶屋にでも行こうか。糖分は疲れが取れると聞くからね」 「有り難うございます」 きっと小松が気遣ってくれたのだろう。優しい気遣いに、ゆきは感謝せずにはいられない。 小さな茶屋に入り、ようやく足を休める機会に恵まれた。 ゆきは、美味しそうな串団子を注文して、ホッとした甘味に癒される。チナミは、磯辺焼きを食べ、小松も同じものを食べる。 「チナミ、地図を見せてくれる?」 「どうぞ」 小松は、地図をくまなく読みながら、考え込む。 「他の仲間たちの情報を総合したから、何らかしらの情報が得られるかもしれないね……」 「そうですね。宿屋で戦略を練らなければなりませんね」 「まあ、そういうことだね」 小松は冷静な声で呟くと、ゆきを見つめた。 「後半も頑張らなければならないね。しっかり休んで情報を得よう」 「はい」 今は、とにかく地道に頑張るしかないのだ。 ゆきは、甘い団子を食べながら、何とか体力をかき集めることにした。 この休憩も、小松が気遣ってくれている。 冷たいが、きちんとひとを見て、優しい気遣いが出来る人なのだ。 ゆきは、さりげない小松の気配りに、どんどん甘い想いが強くなるのを感じる。 こんなにもドキドキする幸せで甘い想いは、他にはないのだろうと、ゆきは強く感じた。 「さてと、行こうか。まだまだ情報は足りないからね。しっかりと頑張っていこう」 「はい」 甘い気持ちから、直ぐに厳しい現実に引き戻される。前向きに頑張らなければならない。 ゆきは気持ちを引き締めていた。 午後からも聞き込みを続ける。 「白い虎を洞窟で見た、と?」 白虎。 四神の一角を担っており、小松はまさに天の白虎だ。 まさか、この長州に白虎がいるとは、思ってもみなかった。 白虎の目撃情報があちこちで聞かれ、ゆきたちは確信する。 白虎がいる。 白虎の力を得られたら、下関の怪異も解決出来るのかもしれない。 ゆきたちは更に確信する。 その上、紅蓮の炎を纏った美しき気高き鳥を見たと、目撃情報が出る。 朱雀。 あくまでまだ、情報のレベルでしかないが、四神の目撃情報がこれほど出るとなれば、確実かもしれない。 二つまでいるということは、残りの二つもいるということになる。 四神の力を得られたら、下関の怪異も解決が出来るかもしれない。 そもそも下関の怪異の原因が、四神にあるとするならば、解決していかなければならない。 ゆきは気持ちが引き締まる。 「とにかく、四神の目撃情報が多数得られたね。他のものたちとも情報交換するためにも、一度、宿に戻ろう」 小松の言葉に誰もが強く頷いた。 他のものの情報を総合すれば、何かが得られるのかもしれない。 確実に真実に近づいている。 ゆきはそう強く感じずにはいられなかった。 |