*黄金休日*


 夕食の後、今夜はゆきの家に送って貰うのではなく、小松の家に向かうのだ。

 いつものように寂しくはない。

 今日は華やいだ興奮すらある。

 いつもは切ない寂しさをごまかすように無言になるが、今夜は違う。

 この連休中は、ずっと小松と一緒にいられるのだ。

 ゆきにとっては、それが何よりもの嬉しいことだ。

 こうして、小松とふたりでいられる。

 それだけで、他には何も要らなかった。

「今日は随分とニコニコしているよね。それはどうしてかな?」

 理由なんて、小松が一番よく分かっているのではないかと、ゆきは思う。

「帯刀さんが一番よく分かっているんじゃないですか?」

「そうかな。じゃあ、君は、私がすこぶる機嫌が良い理由は分かる?」

「……それは、私と一緒にいるから……ですか?」

 いざ、小松が絡むと、ゆきは答えが曖昧になる。

 それは常に不安に思っていることに他ならなかった。

「どうしてそんなに半信半疑になるの。君は、私に愛されていることに、自覚を持ちなさい」

 小松は苦笑いを浮かべながら、ピシャリと呟いた。

「有り難うございます。帯刀さん。私もたっぷり愛していますから」

 ゆきがはにかみながら笑顔で言うと、小松は困ったような笑みを浮かべる。

「全く……。君はそんなことを簡単に言うなんて。君らしいけれどね」

 小松は何処か照れているような表情を浮かべるのが、印象的だった。

 車は小松の住むマンションの駐車場に入って行く。

 小松なら一戸建ての立派な家が似合いそうだが、合理的なマンションが、今は良いらしい。

 小松らしいとゆきは思う。

「さ、行くよ。今日からは君を独占する。それだけだよ」

「私も帯刀さんを独占します」

 ゆきが笑顔で堂々と宣言すると、小松にいきなり抱きしめられる。

 まさかこんなことが起こるとは思わなくて、ゆきは目を見開いて驚いた。

 すると小松は、くすりと笑う。

「私を独占するということは、君は私の心を支配するということだよ。覚悟出来ている?」

 小松は意地悪に笑うと、ゆきに素早いキスをした。

「勿論、私も君の心を独占するということなのだけどね?」

 意味深に微笑まれると、ゆきは思わず目を伏せてしまった。

 恥ずかしくてしょうがない。

 ドキドキしながら、ゆきは睫毛をちらちらと動かした。

「さあ、行こうか。たっぷりと、君には楽しませて貰うから」

 小松はゆきの手をしっかりと繋いで、自宅へと向かった。

 

 小松の家でお泊まりすることは初めてではない。

 だが、毎回、緊張してしまうのだ。

 ただ、ホテルのように、チェックアウトを気にしなくても良いのが良いとは思っている。

 これから、この連休が終わるまでは、小松と一緒に暮らせるのだ。

 それがゆきには嬉しかった。

 甘いときめきに、ゆきは落ち着かない。

「ゆき、そんなに緊張していたら、連休中もたないよ?」

 小松は苦笑いを浮かべながら、ゆきにグラスを差し出した。

「ミネラルウォーター。飲むと落ち着くよ」

「有り難うございます」

 ゆきは小松からグラスを受け取り、ミネラルウォーターを飲み干す。

「何だかスッキリする」

「でしょ?そんなに緊張していたら、これからどうするの。君は全く可愛いね」

「……帯刀さんのバカ……」

「バカで良いよ。君のためなら、いくらでもバカになれるからね」

「帯刀さん」

 本当に恥ずかしくて、ゆきは目を伏せることしか出来なかった。

「さてと、今夜はもう遅いからね。荷物の整理が済んだら、お風呂に入って眠りなさい。お風呂は沸かしておくから」

「はい、有り難うございます」

 ゆきは荷物の整理をする。

 小松の家には、ゆきの衣服を片付けられるようにと、クローゼットにスペースが空けられている。

 長い期間滞在しても大丈夫なのだ。

 ゆきが荷物を整理している間、小松は的確に寝る準備をしてくれている。

 何だか、申し訳ないような気持ちになった。

 ゆきは素早く片付けると、小松の手伝いに行く。

「帯刀さん、手伝います」

「大丈夫だから。それに、明日から君にしてもらうつもりだからね。やらなくても大丈夫だよ。今夜は私がやらせて貰うよ」

「そ、そんな、申し訳ないですよ。帯刀さんはお仕事で疲れていたんですから……」

「大丈夫だよ。今日は先に風呂に入ってしまいなさい。良いね」

 小松はさらりと言うと、何かを思い付いたとばかりに、フッと微笑んだ。

「だったらお風呂上がりに、肩を揉んでくれる?」

「分かりました」

 ゆきは小松にしてあげられることが見つかって、嬉しかった。

「さ、お風呂が沸いたよ。入っておいで」

「はい。有り難うございます」

 ゆきは、遠慮なく、バスタイムを楽しむことにした。

 お風呂に入ると、ドキドキと癒しが同時にやってくる。

 ゆきは疲れが癒されるのと同時に、肌が艶めいて、滑らかにときめくのに気付いた。

 本当にドキドキする。

 だが、それは嫌なドキドキでは決してなかった。

 お風呂に入った後、ゆきはパジャマに着替えて寝室に向かう。

 すると、小松が入れ替わりに、浴室へと入ってゆく。

 ゆきは、肩を直ぐに揉んであげられるように、髪を乾かしたり、準備をした。

 いよいよ小松がお風呂から出てきた。

「ゆき、髪を乾かすから待って」

「私にやらせて貰えますか?」

「良いよ」

 小松のストレートの美しい絹のような髪にときめきながら、ゆきは乾かしてゆく。

 本当に羨ましいぐらいに綺麗な髪だ。

 ゆきは髪を乾かすのをときめかずには、いられない。

「帯刀さんの髪って、本当に羨ましいぐらいに綺麗ですね」

「そう?有り難う」

 ゆきは小松に髪を乾かして貰うのが、本当に楽しかった。

 そのせいか、乾かし終わると残念でたまらない。

「終わっちゃいました」

「じゃあ、次は肩を揉んで貰おうかな?」

「はい」

 小松はいつもハードワークだから、かなり疲れているだろう。

 ゆきは、なるべく、小松が癒せるように、マッサージをする。

 やはりかなり疲れているのか、小松の肩は鉄板が入っているのかと思うぐらいに、固かった。

「気持ちが良いですか?」

「有り難う。かなり解れてきたよ。今度は、君の肌を喜ばせてあげないとね?」

「え……?」

 ゆきがきょろんとしていると、いきなり布団に押し倒される。

「え?」

「明日からお休みだからね。君には癒して貰うよ」

「え、あ、あの、帯刀さんっ!?」

 小松は、ゆきが戸惑うのも構わずに、甘く愛し始めた。




マエ モドル ツギ